直近で2万7963件、漸減継続中…ガソリンスタンド数や急速充電スタンド数の推移(最新)

2023/09/18 02:41

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2023-0916当サイトでは定期的に最新値を反映させる形で【レギュラーガソリン価格と灯油価格動向(最新)】において、ガソリンや灯油の価格の推移を確認している。その灯油はお米屋や巡回の灯油販売車でも購入できるが、ガソリンはガソリンスタンドでなければ購入できない。そのガソリンスタンドだが、東日本大震災では大いに注目を集めたものの、昨今では経営不振でその数を減らしているとの話もよく見聞きする。今回はガソリン・灯油価格の精査に連動する形で、ガソリンスタンド数の動向、さらには関連する施設として電気自動車やプラグインハイブリッド自動車用の急速充電スタンド数の確認をしていく。

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1990年代後半から漸減するガソリンスタンド数


年ベースのガソリンスタンド数の推移などは毎年経済産業省・資源エネルギー庁から発表されており、最新のものは【令和4年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました】が該当する。

このデータを基に、販売業者数と給油所(ガソリンスタンド)数の推移をグラフ化したのが次の図。2枚目の図は前年比を算出して作成している。最新のデータは2022年度末(2023年3月31日現在)のものとなる

↑ 揮発油販売業者数および給油所数
↑ 揮発油販売業者数および給油所数

↑ 揮発油販売業者数および給油所数(前年比)
↑ 揮発油販売業者数および給油所数(前年比)

ガソリンスタンド数は1994年度(6万421件)をピークに減少を続けているが、1995年度には大きな下げ幅による減少が確認できる。これは、特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)が1996年4月に廃止され、ガソリンの輸入が解禁されたことに伴うもの。また最近では2008年4月に一時的に解除された暫定税率関連の混乱に影響を受け、減少率が増加したのが確認できる。さらに前年比の値が全般的には右肩下がり、つまり減少率が増加していたことから、ガソリンスタンド数全体は加速度的に減少していたのが分かる。

2012年度以降は再び下げ幅が拡大した。これは【特別企画 : ガソリンスタンド経営業者の倒産、休廃業・解散動向調査(帝国データバンク)】の分析にもある通り「2011年6月に改正された『危険物の規制に関する規則』の影響で、猶予期間が切れる2013年1月末までに必要とされる地下タンクの改修が果たせず、消防法に基づいた許可の取り消し処分を受けた、あるいは営業の継続を断念した」「経営者の高齢化が進んでおり、休廃業・解散が進んでいる」「仕入れ価格の上昇や地球温暖化対策税導入で収益が悪化し、廃業を選択した」などが原因として挙げられる。

特に2013年度以降は経産省の資料の特記事項として「職権消除件数」(給油所などを廃業し年数が経っているにもかかわらず、品確法に基づく廃止手続きをしないまま連絡がつかない事業者に代わり、経産局などが廃止手続きを行った件数)が併記されており、直近の2022年度においては揮発油販売業者は5件、給油所数は6件に達している。

他方、2014年度以降はおおよそ減少率が小さくなる動きが見られるが、それでも年間で数%のスタンド数の減少が生じていることには違いない。直近の2022年度では前年度比で揮発油販売業者は254件、給油所数は512件減少している。

セルフスタンドとフルサービスと


ガソリンスタンドにはフルサービスを行う通常のスタイルのものに加え、いわゆる「セルフサービス」のガソリンスタンドも存在する。これは1998年4月に消防法が改正され「顧客に自ら給油などをさせる給油取扱所」の運用が可能となり、それ以降に登場したタイプのスタンドである。資源エネルギー庁発表のデータは登録ベースであり、セルフスタンドも登録は必要なので、全ガソリンスタンド数にカウントされる(資源エネルギー庁・全国石油協会双方に確認済み)。

セルフスタンドのみの数については日本エネルギー経済研究所石油情報センターの【石油情報センター調査報告書】内の「セルフSS出店状況」で直近値を知ることができる。ここから各年度の最終四半期の値を抽出し、概算の「セルフスタンド年度・数」を導き、ガソリンスタンド全体数と比較して「セルフスタンド」「フルサービスのスタンド」双方の数を算出。積み上げ型の棒グラフにしたのが次のグラフ。

↑ 給油所数(フルサービス・セルフサービス別)
↑ 給油所数(フルサービス・セルフサービス別)

↑ 給油所数(全給油所数に対する比率、フルサービス・セルフサービス別)
↑ 給油所数(全給油所数に対する比率、フルサービス・セルフサービス別)

セルフスタンド数は漸増しているため、ガソリンスタンド全体に占める比率が増加している。しかしセルフスタンド数の増加数以上に、フルサービスのスタンド数が減少しているため、ガソリンスタンドの総数は減っているのが把握できる。概算ではあるが直近データでは、ガソリンスタンドの4割近く(38.3%)がセルフスタンドとの計算になる。

電気自動車用の急速充電スタンドの動向


電気自動車(Electric Vehicle、EV)やプラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Vehicle、PHV)は動力源として電動機(モーター)を使うため、その稼働には電気が必要となる。その電気を蓄える蓄電器に充電をするのが充電スタンド(充電器)。

↑ 電気自動車用充電設備の種類(経産省EV・PHVプラットフォームより抜粋)
↑ 電気自動車用充電設備の種類(経産省EV・PHVプラットフォームより抜粋)

普通充電器の設備(単相交流100Vまたは200V)を備えることで自宅でも充電は可能だが、充電には長時間の時間を要する。深夜帯に充電しておき、朝に充電が終わって使うスタイルである。また最近コンビニや屋外駐車場で見かけるようになったポール型の充電器も多くはこれが該当する。

他方、ガソリンスタンドや高速道路、商業施設の一部で見られるのが急速充電器。こちらは電源は3相200Vを使い普通充電器と比べると数分の一の時間で充電が可能となるため、ガソリンスタンドにおける給油感覚での充電が可能となる(とはいえ数十分はただ待つのには長いと感じる人もいるだろう)。

ガソリン自動車同様、電気自動車も燃料に相当する電気が尽きれば動かなくなってしまう。これをガス欠ならぬ電欠状態と呼ぶが、一般財団法人電力中央研究所のシミュレーションによれば、論理的には約30キロごとに充電器が設置されていれば電欠は起きないとされている(【平成28年度エネルギー使用合理化促進基盤整備委託費(EV・PHVの充電インフラに関する調査)調査報告書(経産省)(PDF)】【平成28年度エネルギー使用合理化促進基盤整備委託費(EV・PHVの充電インフラに関する調査)(大和総研)】)。現状では数の上ではそれを満たしているものの、実際の配置にはばらつきがあり、さらに普通充電器での充電は長時間設備を専有することになるため、自動車の蓄電器を満たすまでの充電は自宅以外では難しいものとなる。あくまでも「つなぎ」「急場しのぎ」的な存在。なお普通充電器は個人世帯以外のものでは2023年9月17日時点で1万3172か所(100V/200Vの普通充電スタンド数、【GoGoEV】より)となっている。

実質的にガソリン自動車におけるガソリンスタンドと同等の立ち位置にあるのが急速充電器だが、その設置箇所数は現時点で日本国内において8116か所に達している。

↑ 急速充電器設置か所数(CHAdeMO協議会公開資料などより作成、日本国内、件)
↑ 急速充電器設置か所数(CHAdeMO協議会公開資料より作成、日本国内、件)

とはいえ、地域的にばらつきがあることは否めない(GoGoEVの公開値を基に一般充電以外に急速充電、テスラまで含めた充電スタンド数を計算すると、最大数は東京の3342か所、最小数は島根県の179か所となっている)。また一般的に電気自動車の走行可能距離はガソリン自動車と比べると短いことを考えれば、利用スタイルの上で長距離利用がされにくいとしても、数の少なさは利用者にとって不安材料には違いない。


ガソリンスタンド数の減少について資源エネルギー庁では2014年6月に【石油流通における現状と課題について(PDF)】の中で、「自動車保有台数の減少」「走行車両の燃費向上」「走行距離そのものの減少傾向」などからガソリンの需要が減少し、必然的に供給する場のガソリンスタンドの需要が低減していること、そして石油販売業者の収益性が低いままであること(特石法廃止以降は特に)などを分析結果として挙げている。また、この数年の急激な減少の理由は上記で記した通り、地下タンクの安全性確保のための法令改正や収益の悪化、経営者の高齢化など複数要因によるものである。

一方、自動車が移動運搬手段として必要不可欠なこと、電気自動車などガソリン自動車の代替手段の浸透にはまだ時間がかかること(さらに現状をかんがみるに、ガソリン式の自動車が電気自動車にすべて置き換わることは想定しがたい)を考えると、ガソリンスタンドはインフラを支える場として欠かせない、公共性の高い存在なことがあらためて理解できる。

ガソリンスタンドは耐震性・耐火性などの基準が極めて厳しく、先の震災でも致命的な被害は出ずに、震災後の復旧時におけるインフラをサポートする拠点として、大いに頼りになった。そしてそれとともに、スタンド数そのものが不足気味であることは、多くの人が記憶に留めているはず。

収益性が低いガソリンスタンドの現状を考えれば、かつて「ガソリン価格が高いのはガソリンスタンドが暴利をむさぼっているから」と不確かな認識のもとに闇雲に責め立て、ガソリン行政を混乱させ、揚げ句にスタンドの事業破綻を加速させた「暫定税率一時撤廃騒動」は何だったのだろうか。インフラの重要性とともに、改めて考えさせられるものがある。

他方電気自動車やプラグインハイブリッド自動車向けの急速充電器の数は、ガソリンスタンドと比較すればまだ少数に過ぎない。現在の電気自動車の航続距離などの仕様を考えれば、長距離の利用ではなく、拠点となる自宅や企業の周辺への移動手段が主な使い方となるのは必然。ガソリンスタンドと同じような設置の需要ではなく、住宅地域や商業地域を重点として広がっていくだろう。見方を変えれば、急速充電器が電欠の心配なく配されているような地域で、電気自動車などがより好まれるようになるかもしれない。


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