若年層の失業率、スペイン52.9%・ギリシャ53.8%、共に悪化中…EU失業率動向(2012年7月分)

2012/09/02 12:00

ヨーロッパ各国の失業率の高さの中でもひときわ群を抜くスペインにおける(当時の)直近2011年12月分の値を、【EU統計局(Eurostat)】で毎月公開している統計データの最新版で確認し記事にした。以降毎月、EU統計局の発表資料を元に最新情報の確認を行っているが、今回はその2012年8月31日発表・同年7月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした(該当リリース:【Euro area unemployment rate at 11.3%(PDF)】)。

スポンサードリンク


文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分を参考のこと。

ILO基準における2012年7月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時最新月分のデータを代用している。

↑ 2012年7月時点での失業率(季節調整済)
↑ 2012年7月時点での失業率(季節調整済)

スペインは相変わらず2割強の値を示し、ギリシャもそれに続いている。たかだか一か月ほどで状況の大きな変化が起きるはずも無い(概して悪化の方向を進んでいることに違いも無い)。そして、やはり債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置する状況を見ると、失業問題と経済・債務問題が密接な関係にあることが容易に推測できる。

今回も前回同様、前月(2012年6月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率については(次の若年層周りでも同様だが)、国によって細かい修正が過去にさかのぼって行われることが少なくない。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2012年6月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行う。またリリース上に掲載が無いデータに関しては、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算を行う。

↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年6月→2012年7月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年6月→2012年7月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の多い・少ないや各国の統計上の誤差の大小などもあり、正直なところプラスマイナス0.3ポイント内外は誤差と見て問題ない(概して小国の方が誤差が出やすい)。しかしながらギリシャは他国と比べてデータの集計に遅れが生じているため、実質的には2012年4月と5月の差異によるものだが、今回対象となった国の中では最大の悪化率をプラス0.5ポイント示しており(今グラフでは(失業率の)「プラス」は「悪化」を意味する)、留意に値する。同国の経済情勢の悪化をあらためて思い知らされる。

そして冒頭にあるように、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。25歳未満の失業率はEA17か国で22.6%・EU27か国でも22.5%を記録しており、5人に1人以上が失業状態。中でもギリシャの53.8%(2012年5月)、スペインの52.9%を筆頭にポルトガルやイタリアなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国での高さ、急激に経済が冷え込んだ国の失業率増加が確認できる。

↑ 2012年7月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(7月データが無い国は直近分)
↑ 2012年7月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(7月データが無い国は直近分)

↑ 2012年7月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(7月データが無い国は直近分)
↑ 2012年7月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(7月データが無い国は直近分)

今回月データではポルトガルの若年層失業率の改善、イタリアの悪化が目に留まる(ギリシャも相当悪化しているが、これは「いつものこと」)。ポルトガルでは政府による財政改革が市場に評価され、国債のリスク値も低下傾向にある。一方イタリアはGDPの低下や国債リスクの上昇などが示すように、経済状況は悪化の傾向をたどっている。これらの状況がそれぞれ若年層の失業率に反映されたと見れば、理解はできる。もっとも両国の「25-74歳」における失業率は、それぞれ14.0%・8.3%(2012年3月時点)で、25歳未満の失業率36.4%・35.3%と比較すれば、若年層が就業に恵まれていない状況に変わりはない。

各国とも総じて若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され、為替レート上で相対的賃金の安い新興国に割り振られるのが主な要因。

失業さらに債務問題で国レベルの財政の悪化に伴い、緊縮財政が取られていることも大きな要素。一般的に緊縮財政をとれば国内の産業が冷え込み、経済は低迷する。当然、労働市場も緊縮する。その上、ヨーロッパ諸国は他の先進国同様に高齢化により就労年齢が上昇しており、必然的に「高齢者が就業場所に居座り、席が空かない」状態になり、若年層が割を食う事態に陥っている。その上すぐには利益の上での成果が出ない「若年層の労働訓練・修練」は「即戦力にならない」「結果が出ない」とばかりに軽視されるため、若年層の立ち位置はますます悪化する。いわゆる負のスパイラル状態といえる。

また、意図してか、結果論なのかは判断が分かれるが、【欧州の若年失業問題の整理に役立ちそうな記事】の例にあるように、「高齢者優遇」「若者冷遇」の雇用対策の結果(「(既存)労働者」の権利を手厚く保護するため、業績が悪化しても容易に現行労働者の解雇はできず、必然的に若年層を雇う余裕はこれまで以上に無くなる)が、若年層の失業率増加の大きな原因の一つとなっている(これは日本にも当てはまる)。

労働市場、失業対策では「他国と比べれば良い方だから我慢しよう」では無く、「失業率の低い国、改善が出来た国から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的かつ先行きが明るく見える政策が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。明るい先・見通しが見えてこそ、就業者は経済面での生活の上でも精神的にも安定し、さまざまな面での個人、そして国全体としても飛躍が期待できる。

一時は非難の対象に挙げられていた、日本の「終身雇用制」。雇用される側の心理も合わせて考えると、社会構造・労働市場の方法論の一つとして、再評価を受けるべきではないだろうか。


■関連記事:
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2011年版)】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー