厳しさつのる「子供がいる世帯」の生活感…児童あり世帯の生活意識の変化(最新)

2023/09/21 02:39

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2023-0902先に【5割台が「厳しい」意識…生活意識の変化実情(最新)】で、厚生労働省が毎年実施、その結果を発表している【国民生活基礎調査】の公開値をベースとして、「生活意識の状況」の変化のグラフ化を行い状況を精査した。今項目では「全体値」の他に「高齢者世帯」「児童のいる世帯」などに限定した公開値もあり、こちらも経年動向を取得できる。そこで今回は「児童のいる世帯」に焦点を当てて、生活意識の動きを見ていくことにする。

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今調査の調査要件および注意事項は、「国民生活基礎調査」に関する先行記事の【世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説済み。詳細はそちらを参考にしてほしい。今回対象とする「生活意識の状況」は毎年調査が行われており、経年による変化を確認できる。

この項目は生活意識について「大変苦しい」「やや苦しい」「普通」「ややゆとりがある」「たいへんゆとりがある」の5つの選択肢から、もっとも自世帯に当てはまるものを1つ選んでもらっている。対象となる世帯は「児童のいる世帯(児童:18歳未満の、未婚の人)」。その回答を集計したのが次のグラフ。

なお「児童のいる世帯」のデータ収録は2000年以降。全体構成比の変化イメージの他に、個々項目の動きを把握しやすいよう、折れ線グラフも併記する。一方、2020年分は新型コロナウイルス流行の影響で調査そのものが行われておらず、当然値も存在しない。

↑ 生活意識別世帯数の構成割合(積み上げグラフ、児童のいる世帯)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合(積み上げグラフ、児童のいる世帯)

↑ 生活意識別世帯数の構成割合(折れ線グラフ、児童のいる世帯)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合(折れ線グラフ、児童のいる世帯)

2014年ぐらいまでは年の経過とともに「苦しい派」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)が増加するのは全体値の動向と同じだが、大元の値が厳しい状態にあり、2010年には「大変苦しい」が「普通」を超える現象が起きてしまっている。これは全体値や高齢者世帯には無かった動きであり、特にこのクロスを起こす直接の原因となった2010年以降の「大変苦しい」の増加が目にとまる。

さらに2011年には「大変苦しい」が「やや苦しい」ですら超えて、5選択肢の中で最大の値を示してしまっている。これは多分に景気の悪化に加えて、同年3月に発生した東日本大震災による心理的影響が大きいと考えられる。その分、2012年はややリバウンドが起きたからか、「大変苦しい」はいくぶん減少し「普通」が大幅増加、わずかだが「普通」の方が多い形となった。もっとも2013年以降は再び増加し、「大変苦しい」が「普通」を超える状態となった。

2014年は消費税率引き上げ直後の調査だったこともあり、全体値などと同様に「大変苦しい」が大きく増加、「やや苦しい」も増えた。しかし2015年には消費税率引き上げの心理的影響も鎮静化し、景況感の回復もあり、「大変苦しい」は減少し、「普通」を下回る形となった。中期的に見ても他の属性同様、2015年以降の動向は、これまでの流れとは明らかに向きを違えている、悪化一方だった意識が改善している状況がうかがえる。

この状況を分かりやすくするため、「全体値」「児童のいる世帯」「高齢者世帯」ともに「苦しい派」の動きを見たのが次のグラフ。

↑ 生活意識別世帯数の構成割合(「大変苦しい」+「やや苦しい」、全体値と高齢者世帯と児童のいる世帯)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合(「大変苦しい」+「やや苦しい」、全体値と高齢者世帯と児童のいる世帯)

「児童のいる世帯」分のデータ開示が始まった2000年当時は全体値と変わらない値を示していたものの、あとは一貫して全体よりも高い値(=生活が苦しいとの意見が多い)を示している。

震災のあった年で大きく開き、その翌年にやや縮小する動きを見ると、経済が悪化する度合いが大きくなるほど、「児童のいる世帯」に対する(心理的)負担が大きくなると見るべきかもしれない。

また消費税率引き上げが行われた直後に調査が行われた2014年ではどの属性も増加しているが、その後の景況感の回復に伴う下落(=生活に苦しさを覚える人の減少)は、他の属性と比べるとやや大人しい動きとなっている。子供がいる世帯においては、景気の回復度合いの浸透が、今一つ弱いのかもしれない。



今件データは「世帯が調査日時点における、暮らしの状況を総合的にみてどのように感じているかの意識」を選択肢から選んでもらったもの。回答者一人一人の主観によるところも大きい。例えばエンゲル係数や可処分所得の推移のような具体的な数字の変化を記したものではなく、心理的動向に左右される面が大きいことを留意しておく必要がある。また調査日「時点」であることから、特異な事象が生じた直後の場合は、その年平均の心理状況では無く、その事象に大きく左右される可能性も多分にある(例えば2014年分は、消費税率の引き上げが4月に行われ、それから3か月後の7月に実施されているため、景況感では足が引っ張られている)。

その上で、「児童のいる世帯」においては全体平均と比べ、生活の切迫感では緊張感が続いている、余裕が少ない生活を強いられているとの状況については、覚えておいて損はない。


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