直近では1ドル141.40円、最円高時は76.30円…円ドル為替相場の移り変わり(最新)

2024/01/21 02:55

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2024-0120当サイトで平日の東京市場開催日の夜半に掲載している「株式市場雑感」でも繰り返し触れているように、世界情勢(特に経済方面)に連動する形で為替市場は大きく変動し、それによって東京株式市場も小さからぬ影響を受けている。今回は一日単位の短期間の視点でも、数週間、数か月といった中期間、さらには年ベースでの長期間の視点でも、日本の経済に影響を与える為替相場の動向について、経済的には日本と一番関係が深く、またその相場変動が多様な方面で関連性のある米ドル(アメリカ合衆国の基軸通貨)との絡みを中心に、状況の確認をしていくことにする。

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円ドル相場の変動確認において、データの取得元となるのは【日本銀行の主要時系列統計データ(月次)】。月次ベースの値をそのまま取得し、これを基にグラフを作成する。記事執筆時点で取得可能な値は1980年1月-2023年12月の分であることから、それをすべて反映させたのが次のグラフ。

↑ 円ドル為替相場(東京インターバンク相場、月末17時時点、1ドルにつき円)(1980年1月-2023年12月)
↑ 円ドル為替相場(東京インターバンク相場、月末17時時点、1ドルにつき円)(1980年1月-2023年12月)

第一印象として目にとまるのが、1985-1988年にかけて猛烈な勢いで進行した円高・ドル安。概算でも1ドルあたり100円ほど円高・ドル安に進んだことが分かる(この時期に対米ドル換算の、日本のGDP前年比が約30%プラス/年とのイレギュラーな値を示したのはこれも一因)。そして、この「為替レートの急激な変動」の原因が、いわゆる1985年9月22日に発表された「プラザ合意」とその体制。簡単に箇条書きにすると、

・1980年代前半…アメリカは高金利、貿易・財政の「双子の赤字」状態。特に対日貿易赤字が大きい。

・「またドル危機(ニクソンショック)が起きる!?」…各国が協調して「円高ドル安」に誘導しようとの流れ→「プラザ合意」(為替の協調介入)

・急速な円高ドル安(ドルの対円価値が下がる)が進行。「円高不況」を恐れ、日本では低金利政策が進む。

のような流れとなる。いわば主要国主導による意図的に行われた為替の大規模な変動。

最近の動きを精査するため、今世紀に入ってからの動向を示したグラフを2つほど新たに書き起こす。一つは純粋に今世紀のみの取り扱い、もう一つは直近の金融危機が起きた2007年以降に限定したもの。

↑ 円ドル為替相場(東京インターバンク相場、月末17時時点、1ドルにつき円)(2001年1月-2023年12月)
↑ 円ドル為替相場(東京インターバンク相場、月末17時時点、1ドルにつき円)(2001年1月-2023年12月)

↑ 円ドル為替相場(東京インターバンク相場、月末17時時点、1ドルにつき円)(2007年1月-2023年12月)
↑ 円ドル為替相場(東京インターバンク相場、月末17時時点、1ドルにつき円)(2007年1月-2023年12月)

最初のグラフと照らし合わせると、上記プラザ合意以降経済動向の変移や世界情勢に連動する形で上下はしていたものの、100円から150円/ドルのレンジ内で収束していた円ドル為替相場の均衡が、2007年夏以降の円高以降大きく崩れていくようすが分かる。言い換えれば「1ドル100円の防衛ラインが突破された」とでも表現できようか。

原因はいくつか考えられるが、タイミングから察するに一連の「金融危機」「資源価格高騰」、そして【アメリカ合衆国の債務引き受け手内訳と上限推移を眺めてみる】でも触れているが、米国債の増刷に伴う米ドルの希薄化が要因と考えられる。もっとも対ユーロの動向を見ても(もちろんユーロ成立以前のデータは無い)、2008年の「資源価格高騰」以降大幅な円高・ユーロ安の動きを見せていることから、世界的規模で為替市場に大きな変動が「資源価格高騰」(自身かそれを引き起こした元の原因である金融危機)によって発生したと見るべきだろう。

また、2007年1月以降に限定したグラフで記述してある、月末時の最高値(円高の観点で)の76円30銭(2012年1月)は、2001年以降まで限定幅を広げても、さらに最初のグラフの区分である1980年以降までさかのぼっても、もっとも円高が進んだ月である。この最高値を付けた月をはさんだ数年間が過度の円高状態にあり、それを受けて景況感が大きく後退したことは記憶に新しい。

これは多分に「当時の」政府の方針に伴う施策の結果。「円高により海外資源や商品を安価に購入して国内景気を喚起させよう」との意図によるものだが、それにより国内の景気が落ち込んでしまい、景気の喚起どころか寒気が到来する結果となってしまう。国外情勢の影響もあるとはいえ、いかに異様な状況だったかが、円ドルの為替レート変動からも把握できよう。またこの時期のGDPを米ドルベースで計算し、日本が大きく経済成長を果たしたとする説があるが、【日本のGDP推移をドル換算して「今の政策は失敗、数年前のは大成功」と語るお話】で解説の通り、論理の基本部分における認識のミスによるもので、正しい理解によるものではない。

ここ数年の動きとしては、2012年の政情変化に伴う為替関連の施策方針の大幅変更を受け、大きく円安の方向に為替レートは変動(【本日、日本銀行が発表した『「量的・質的金融緩和」の導入について』】で紹介した、いわゆる「異次元緩和」も一因)、2013年夏以降はリーマンショック前の水準である1ドル100円あたりでの小刻みな動きが続いていた。その後、国際情勢の変化、特に中東情勢の悪化やアメリカ経済の堅調さを示す指標が相次いだこと、そして米FRBの量的金融緩和政策第三弾(QE3)の終結が宣言され(2014年10月29日)、その直後に日銀が追金融緩和政策を打ち出したこと((【日銀の追加金融緩和政策に関する覚え書き】)が影響し、相場は再び大きく円安の流れを示した。その後、金融危機ぼっ発以前の水準に回帰したが、アメリカ合衆国の金利引き上げの足踏み感、EUにおけるイギリスの脱退懸念とその表明を起因としてドル安・ユーロ安の動きが生じており、円高の流れが生じた。

直近の最高値は2016年9月末の1ドル100円90銭。それ以降はアメリカ合衆国の金利引き上げへの可能性の高まりや原油高の動き、そして2016年11月初頭のアメリカ合衆国における大統領選挙(の選挙人選出選)においてトランプ氏が勝利したことで、選挙までの懸念材料が出尽くしたこと、そして同氏が語っていた財政出動などの金融・経済政策の内容を受け、円安ドル高の動きに転じていた。しかしながら2017年に入ってからは同国の政情不安定や欧州で相次ぐテロ事案、中東や朝鮮半島での情勢不安定化などを受け、じわりと円高が進み、2016年12月の1ドル117円11銭を天井に、少しずつだが円高ドル安の流れに。昨今では国際情勢の緊迫化、ロシアによるウクライナへの侵略戦争、そしてアメリカ合衆国のインフレや金利上昇による日米の金利格差の拡大で、円安ドル高の動きが生じている。2022年10月末には2007年1月以降に限ればもっとも円安ドル高となる1ドル148円01銭をつけた。

その後、円高に戻るも、アメリカ合衆国の金利上昇による日米の金利格差の拡大が再び為替に大きな影響を与えるようになり、2023年10月末には2022年10月末の値を超える、もっとも円安ドル高となる1ドル150円29銭を示している。

よい機会なのでユーロもチェック


よい機会でもあるので、対米ドルだけでなく、対ユーロの円相場変動もグラフ作成を行い、状況の把握を実施する。こちらは日銀からではなく、証券会社のツールから取得したデータを用いている。またユーロは1999年以降の展開なので、それ以前のデータは無い。

↑ 円ユーロ為替相場(月次終値、1ユーロにつき円)(1999年1月31日-2023年12月31日)
↑ 円ユーロ為替相場(月次終値、1ユーロにつき円)(1999年1月31日-2023年12月31日)

あくまでも対円との限定ではあるが、2008年9月のリーマンショック時にあまり大きな変移を見せなかったドルに対し、ユーロは大きな動きを示したことが分かる。少なくともリーマンショックは、ユーロそのものに多大な影響を与えたことが理解できよう。

その後やや戻しを見せるものの、円は対ユーロでも大きく値を上げている。金融危機ぼっ発以降に月次ベースで円ユーロが最高値を付けたのは2012年7月末(1ユーロ96円02銭)と、円ドルの最高値とはややずれを生じているが、2012年前後における異様な円高の状況は対ユーロでも変わりが無かったのが確認できる。

また2015年春先に、上昇の動きにあったユーロが再び下げ基調に転じる場面があったが、これはECB(欧州中央銀行)の量的緩和策の実施とギリシャの財務上の不安定化に伴うところが大きい。2016年に入ってからのユーロ安は多分に移民問題とイギリスのEU離脱懸念とその表明によるもの。2019年8月を底にいくぶんユーロ高に転じてはいるが、2020年1月のイギリスのEU離脱に際してもユーロは対円ではさほど大きな動きを示さなかったのは興味深いところではある。むしろ昨今のEUでのインフレ・金利高につられる形で、対円のユーロ高が生じているのが目立つ形となっている。



為替相場は多分に自国だけでなく対象国の事情によっても大きく動いていく。さらに国際情勢の変化にも関係してくる。昨今では円高への動きが進んでおり、さらに円高・ドル安(ユーロ安)になる可能性はある。今後も折に触れて状況の把握、再確認のため、各種データを最新のものに更新し、その変化を短期的だけでなく中長期的な視点でも眺めることにしよう。


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