各国エネルギー政策が見えてくる・世界主要国のエネルギー源をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/08/11 10:56

世界各国のエネルギー政策、エネルギー事情を知るためには、多種多様な視点からその動向を眺める必要がある。その視点の一つが、エネルギーの源としてどのような一次エネルギー(石油や石炭など)を利用しているかについてである。今回はイギリスに本拠地を構える国際石油資本BP社が毎年発行しているエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」を元に、状況を推し量ることにした。

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一次エネルギー利用量トップは中国


記事執筆時点最新の白書は【Statistical Review of World Energy 2016】。2016年6月8日付で発刊されている。ここから各自データを取得し、グラフを生成し、状況精査を行う。

なお「一次エネルギー」とは自然界に存在するそのままの形を用い、エネルギー源に使われているものを指す。化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力、火力、さらには太陽熱・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーが該当する。他方「二次エネルギー」も存在するが、これには電気やガソリンなど、一次エネルギーに手を加えて得られるエネルギーなどが対象となる。今回は「一次エネルギー」を対象にしているため、要は「国内外を問わず、どのような自然の恵みをどれだけ用い、エネルギーを取得しているか」を知ることができるグラフとなる。

まずは一次エネルギーの消費量の比較。最新のものは2015年分。前年2014年分なども併記し、変化も確認できるようにした。なお序列は直近年で消費量の多い順となっている。

↑ 主要国一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2011-2015年)
↑ 主要国一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2011-2015年)

2007年から始まる金融不況、2009年のリーマンショックを受け、2010年は先進諸国でエネルギー消費量が減退していたが、2011年以降はやや盛り返しを見せている。

2015年に至る動向だが、多くの国でエネルギー消費量は増加を示している。これは曲がりなりにも景況感の回復により、エネルギー消費量が増加したことを意味する。無論景気だけがエネルギー消費を左右するわけではないが、大きな要素であることには違いない。特に中国は前年比で1.5%、インドは5.1%の増加が確認されており、新興国の伸び具合が大いに注目される状況となっている。とりわけ中国は今資料の限りでは世界最大の一次エネルギー消費量を示し、さらに大きな増加の動きを止めていない(米中間の順位はすでに2009年時点で逆転している)。他方、同じ新興国ながらブラジルの上昇ぶりが止まり、直近年では前年比でむしろマイナスに転じているのがやや気になる。同国では現在オリンピックが開催中ではあるが、それに向けた動きの中で政情の不安定化と経済の低迷が伝えられていたが、それがエネルギー消費量にも表れたと見て良いのだろう。

数字の上では中国、アメリカ合衆国から大きく差をつけられる形ではあるが、インドとロシアが続き、そして日本がようやく入ってくる。もっとも日本は今回上位入りした10か国の中では、唯一5年連続しての減少傾向を示している(ロシアは2011年から2012年にかけてわずかに増加している)。これは元々日本が省エネ型のエネルギー消費スタイルであったのに加え、多分に震災の影響に伴う発電エネルギーバランスのひずみによるところが大きい。

世界全体では石油と石炭で約2/3を占める


続いて各国の一次エネルギー源分布。石油や天然ガスなどに区分し、どの一次エネルギーをどのくらいの割合で用いているかを示している。「再生可能」項目は太陽光や風力その他をすべてまとめたもの。「自然エネルギー」とも呼ばれる類の総計である。こちらも上記のグラフと同じく、直近年における総消費量上位10位の国のもの+αについてまとめてある。

↑ 主要国の一次エネルギー消費量(エネルギー供給元別)(2015年)
↑ 主要国の一次エネルギー消費量(エネルギー供給元別)(2015年)

特徴的なところを挙げると次の通りとなる。

・中国は2/3が石炭

・ロシアは5割強が天然ガス

・インドは中国に次いで石炭使用率が高い

・日本は2015年時点で原子力がゼロ%(整数以下切り捨てのため。厳密には0.23%)

・イランでは石油と天然ガスでほぼすべてがまかなわれている

なお今件グラフには含まれていない、つまり総消費量上位10位からもれてしまったイタリアだが、2015年の時点でも(前年同様)原子力によるエネルギー消費は無い。これは1987年に「脱原発政策」が国民投票で決定してから、原発ゼロを貫いていたため。度重なる電力不足と隣国フランスからの供給の不安定さが問題視され、2009年2月にはフランスの協力で2020年までの建設計画を発表され、方針転換を果たしていた。しかし最新の情勢としては昨今の動向を受け、調査などを含めた計画が凍結され、現在では原発ゼロは継続中。

ただし厳密に考えると、原子力発電によって他国に輸出できる余力を持つフランスからのエネルギー輸入は、間接的に原子力によるエネルギーの消費と考えることもできるため、状況は複雑である。

そしてそのフランスだが、今回年は消費量で上位10位に入らなかったが特別にグラフに収めている。同国ではエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、そして電力の他国への販売を一大ビジネスとしているため、他国に関与されにくい原発を促進している。【原発大国フランスの雑誌調査で「原発を廃止の方向に」意見77%に】にもあるように、一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化している。ちなみに2015年におけるフランスの総消費エネルギーのうち41%は原発起因であり、今回取り上げた諸国では最大の比率を計上している。

中国は一次エネルギー源の2/3が石炭。石炭は安価で経済性に優れているものの、【原油高騰がもたらしたもの・北海道産の石炭が再注目を集める】でも言及しているように「適切」で比較的「高い技術力」による処理をしないと、二酸化炭素の排出量など環境面での負担も大きい。中国の二酸化炭素排出量がアメリカを超えて世界一となっているのも、石炭によるエネルギー確保がメインの構造が大きな要因と考えて問題無い。

日本の場合は石油への依存度がかなり高い。しかもそのほぼすべてを輸入に頼っている。エネルギー戦略上決して好ましい状況では無いのは言うまでもない。さらに2011年の震災を経て、エネルギー政策上多種多様なハードルが積み重なった関係で、昨今の情勢は多分にひずみが生じている。

↑ 日本の一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2011-2015年)
↑ 日本の一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2011-2015年)

問題点の多い石油を用いることによる火力発電がセーブされていることもあり、2013年以降は減退傾向にあるが、天然ガス、そして石炭は高い水準にあり、いびつなバランス関係がさらに進行しつつある。再生可能エネルギーも漸増しているものの、状況の変化に追いつかない状態である。

各国共に国民の生活を支えるエネルギーは、それぞれの国共に、国が有する事情を考慮した上で、その国々にもっとも適切で、他国の動向に振り回されることの無い、中長期的かつ正しい戦略の構築が必要不可欠となる。その場しのぎで無い、安心して日々が過ごせる、バランスのとれたエネルギー戦略の実現を願いたいものだ。


※2016.08.02. 19:15 一部アップデートを行いました

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