【更新】直近四半期の総売上1699.61億ドル、営業利益率7.8%、AWSの総売上比14.24%…アマゾンドットコムの売上推移など(最新)

2024/02/27 04:57

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2024-0227アマゾン文房具や書籍、各種玩具、さらには飲料食料品や大型動物の実物大模型に至るまで、多彩な商品を取り扱い、条件が合えば注文翌日どころか当日に商品を入手できる通販サービス「アマゾン」。その浸透ぶりに「konozama」をはじめ多種多様な造語もごく普通に使われるようになったが、今や多くの人にとって欠かせないインフラの立ち位置にある事実は、誰一人として否定はできない。今回はそのアマゾンに関して、日本国内だけではなく世界全体の同社における財務状態の推移を眺めることにした。

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累乗的に伸びる売上、営業利益は2002年からようやく黒字に


アメリカ合衆国では電子開示システムEDGAR(Electric Data Gathering、Analysis and Retrieval)で、1995年以降の各種財務データを誰でも自由に入手することができる。改定文書削減法(The Document Reduction Act of 1995)で、アメリカ合衆国の公文書の電子化が義務付けられたからだ(無論インターネット上での公開なので、アメリカ合衆国の国外からでも取得可能)。

【公開場所はSEC Filings & Forms】。この場所から【Search for Company Filings】、さらに【Boolean and advanced searching, including addresses】を選択していく。そして検索キーワードには「amazon com inc 10-K」を入力。ちなみに「10-K」とは「年次報告書」を意味する。アメリカ合衆国以外の企業なら「20-F」、四半期報告書は「10-Q」、臨時報告書は「8-K」。また、アマゾンドットコムは12月末決算なので、今記事執筆時点では2023年分まで年次決算報告書が用意されている。他方、四半期報告書は2023年第3四半期分までの収録が確認できる。

他方アマゾンドットコムの公式サイト内では2024年2月1日付(現地時間)で各種コメント、解説とともに【Quarterly Results】内において、直近分となる2023年第4四半期分の決算関連の報告書(Earnings Release)の掲載が行われたのが確認できる。その他SEC向けの各公開ファイルは、【SEC Filings】でも取得可能となっている。

アマゾンドットコムのデータは1999年3月5日提出のものが最古となる。このデータには1994年以降のものも掲載されているが、初年度は立ち上げ時期なこともあり、売上がゼロなので、これは省略。1995年以降のものを抽出し、グラフを作成する。最新のデータは年次分では2023年分、四半期単位分は2023年第4四半期まで。それらの決算データを逐次引き出し、必要な計算を行い、値を算出する。

日本の企業と比較する際には、それぞれの年の為替レートを考慮する必要がある。しかし今回はアマゾンドットコムそのものの推移を見るので、ドルベースのままで問題はない。一方、グラフの構成上、営業利益率の動向がやや見づらい形となるので、同項目がプラスに転じた2002年以降に限定したものも併せて作成する。なおQとは四半期を意味する。

↑ アマゾンドットコムの総売上と営業利益率
↑ アマゾンドットコムの総売上と営業利益率

↑ アマゾンドットコムの総売上と営業利益率(2002年以降)
↑ アマゾンドットコムの総売上と営業利益率(2002年以降)

↑ アマゾンドットコムの総売上と営業利益率(四半期単位)(直近3年間)
↑ アマゾンドットコムの総売上と営業利益率(四半期単位)(直近3年間)

営業利益率」とは「売上高営業利益率」のこと。つまり総売上と営業利益(その企業の本業における利益)の関係を示している。計算方法はシンプルで「総売上を営業損益で割る」。この値で「本業の稼ぎにおける効率のよさ・悪さ」が分かる。高い方が効率よい本業をこなしていることを意味し、マイナスならば本業が赤字を出している(採算割れをしている)。

四半期単位では年末セールを含む第4四半期(Q4)の売上が突出している。アメリカ合衆国の「ブラックフライデー」をはじめとした年末商戦が、いかに大きな稼ぎ時であるか分かる。一方で直近四半期の売上における単純な前年同期比は13.9%増。前年同様に新型コロナウイルス流行による巣ごもり現象が貢献したようだ。セグメント別の動向を見ると、アメリカ合衆国以外の地域での売上が大きく伸びた(16.8%増)のが確認できる。

年ベースではグラフの動向からも分かるように、売上高は累乗的に増加する一方、営業利益率は1999年に一度落ち込み(営業費用の大幅な増加が原因)、2001年まではマイナスのまま推移。2002年にはようやくプラスに転じている。しかしそれ以降、大きな上昇を見せることなく、営業利益率は横ばいを続けていた。

2007年以降は4%台、2014年にいたっては0.2%しかなく(第3四半期のマイナス2.6%の主要因となったFire Phoneの販売促進費用がかさんだことなどがあり、年ベースでも低迷)、日本の一般小売店とさほど変わりが無い、むしろ低い値を示している。アマゾンドットコムが大きな黒字額を示したニュースを見聞きした記憶がある人は多いだろうが、これは「利益率の高いビジネスをしているから」ではなく、「スケールメリットを活かした」結果、言い換えれば「規模の大きなビジネスをしている・薄利多売だから」得られたものであることが理解できる。

2010年以降営業利益率は減少傾向を続けていた。2011年以降は額面上の営業利益、そして純利益まで減少(2012年と2014年では純損失が発生している)。これは【Apple、Google、Amazon…デジタル技術分野での三大企業の売上動向などをグラフ化してみる(2012年版情報通信白書より)】でも解説しているが、アマゾンでは「電子書籍端末のKindleの開発・販売も手がけており、同端末は競合するiPadなどに比べて、機能を絞り込み価格を抑える一方、アメリカ国内では通信コストは同社が負担するなど普及に向けた取組みを進めて」いるのが原因。また2012年における損失の原因の一つである、2010年に出資したLivingSocial(クーポン共同購入サイト)の損失に代表されるように、社内外を問わずに投資案件を積み上げ、領域拡大を推し量っており、その影響から利益が圧縮されている。

現時点では「電子書籍事業やクラウドサービス、映像配信に代表される新事業と業務領域拡大への投資に注力する時期にある」と見た方が納得はしやすい。続々登場するキンドルの新しいバージョンと増加する電子書籍のラインアップ、AWS(Amazon Web Services)の拡充と浸透、飽くなき領域拡大を続ける映像配信の実情を見れば、それも理解できるはず。また昨今ではドローンの積極活用の姿勢を見せ、AIアシスタント「Alexa」への研究投資を惜しまなく続け成果を生み出しているなど、未来的な分野への積極参入・開発姿勢も意欲的。この挙動はグーグルやアップルと似た方向性にある。

あるいは発想が逆で、新事業を展開して領域を拡大することこそ、つまり成長と拡大がアマゾンの大義であり、利益はそのためのエネルギー源でしかないとの認識なのかもしれない。それは生物の本能、自種の生存領域の拡大とDNAの拡散に似ている感すらある。

年ベースで直近となる2023年の営業利益率は6.4%と、前年の2.4%と比べて拡大している。新型コロナウイルスの流行で生じた人手不足や配送網の不安定化への対応、物価上昇によるコストの増加などで前年2022年は営業利益率が大きく落ち込んだが、その対応・投資への効果が表れたようだ。

2015年の年次報告書以降、四半期決算報告書では逐次強調されているように、同社ではより大きな利益面での貢献が期待できる、有料制会員サービスのプライム会員(Amazon Prime)への投資にも積極的。商品購入時の迅速な配達と手数料の割引、音楽や写真、映画の提供、図書館的なものへのアクセス(Kindleオーナーライブラリー)など、多様なサービスを提供し、同社への傾注度を高める「囲い込み戦略」を展開している。あるいは上記で言及しているさまざまな新技術、未来的サービスの開発と利便性の向上を包括し、利益を底上げする方法論として、Amazon Primeなる手法を見つけ出したのかもしれない。テーマパークで例えれば、多様な新しい遊具を続々と導入し、全体としての入園魅力を高め続け、入園費で利益を得る発想である。

さらにAmazon Primeの魅力を高め利用者をとりこにし、日常生活には欠かせない存在に位置づけさせ、その上で売上を底上げするための会費の値上げも継続的に行っている。これもまた、アマゾンの経営基盤の強固さに貢献することになる。ちなみに会費収入(売上)は直近四半期の2023年第4四半期では104.88億ドルで、前年同期比は14.1%ものプラス。

今期の報告書ではハイライトとして2万5千文字以上にわたりアマゾンの現状と方向性、新たに始めたサービスの一覧が掲載されている。アマゾンが単なる通販会社としてではなく、新技術の総合商社的な存在であることを再認識させられる。

2015年第1四半期決算報告書以降、それ以前は「その他」区分で他の事業と合算していたAWS事業に関する区分売上が公開されるようになった。直近となる2023年第4四半期決算に関する報告書でも引き続き開示が行われており、その堅調さが確認できる。株主に対するアピールの意味合いも大きい。

↑ Amazon Web Services(AWS)の売上高(四半期単位、億ドル)
↑ Amazon Web Services(AWS)の売上高(四半期単位、億ドル)

前年同期となる2022年第4四半期の売上は213.78億ドル。それと比べて直近四半期は242.04億ドルでプラス13.2%もの成長を示している(事業区分別営業利益は前年同期比でプラス37.7%)。直近四半期に限ればAWS売上は、総売上のおおよそ14.2%に達している。売上の継続的な上昇は、アマゾンにとって頼もしく見える存在に違いない。

各種営業指標をグラフ化


よい機会でもあるので、アマゾンドットコムの1995年以降における「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」の推移もグラフ化し、状況を確認する。

↑ アマゾンドットコムの財務状況(億ドル)
↑ アマゾンドットコムの財務状況(億ドル)

「総売上」と「売上原価」の差、つまり「粗利」が小さく、さらに営業費用が加わることで利益が食いつぶされ、売上と比べれば利益が非常に小さいことが見て取れる。ただし割合としては小さくとも、規模そのものが大きいので、結果的にダイナミックな額の利益を確保できる次第である。

また、2007年から営業費用が急激に上昇しているのが確認できる。これは2011年提出分から計算様式が少々変わり、売上原価を営業費用に含めていたため。提出された書類から、確認可能なものまでさかのぼり、グラフには反映させている。アマゾンの財務体質に根本的な変化が生じたわけではない。

さらに上記の総売上・営業利益率動向のグラフでも記しているが、2015年以降は営業損益・純損益でも明らかに、売上などと比べればわずかではあるが、確実に上昇の動きを見せているのが確認できる。今後の動向に(とりわけ株主は)期待できる動きではあるものの、これまでのアマゾンの行動姿勢を思い返せば、さらなる研究投資活動に励むことになるのかもしれない。ただし2022年では営業損益と純損益の動きが前年比で増加から減少に転じ、純損益にいたってはマイナスとなってしまった。これは上記にある通り、コストの増加などによるもの。



アマゾンでは当初立ち上げ時から5年位の間は、利益が十分にあがらないだろうことを前提に戦略を組んでいたとの話もある。実際には利益を出すまでさらに数年の月日を要したわけだが、赤字の間にも(ご承知のとおりその期間にはいわゆる「ITバブル崩壊」の時期も含まれる)自らの戦略を信じ、売上と規模を拡大し続けた努力と強い意志があったからこそ、今の地位を築くことができた。

アマゾンドットコムイメージ何しろ昔のことなので番組名も含め詳しいことは失念してしまい、記録も見つけられなかったが、あるビジネス番組に登場していたアマゾンの関係者は「予定よりは遅れているが、必ずこのビジネス(アマゾン)は成功する」と確信を持って答えていた。そのシーンがグラフを見るたびに思い起こされる。

現在ではアマゾンは、インターネット上の通販ビジネスで世界ナンバーワンの地位を占めている。そして昨今では電子書籍・リーダーの世界にも乗り出し、関連事業も含め、確実に躍進を続けている。その上プライム会員への独自サービスを次々と打ち出し、インターネット通販利用者の囲い込みに惜しみ無くリソースを注入している。

アマゾンのCEOであるAndy Jassy氏は報告書の中で「今四半期は記録的な年末商戦期間となり、アマゾンにとって好調な2023年を締めくくるものとなった。売上高・営業利益・キャッシュフローともに有意義な進歩を遂げたが、それ以上に企業全体として、新しい仕組みの開発や顧客体験価値の改善を継続していることが素晴らしい。AWSのサービス機能の拡充提供の継続性やAI事業は顧客の共感を呼び、業績に反映されつつある」などとと述べている。常に新しく便利な、そして未来的なサービスを提供する確固たる意思とそれを体現化するための絶え間ない努力、そして関係者の協力が、今のアマゾンの状況を作り出していることは間違いない(iRobotの買収をEUの承認が難しいとして断念した話も記憶に新しい)。特にアマゾンがAIに関して大きな注力をしていることは注目に値することだろう。

電子書籍リーダー「Kindle」や昨今の「Alexa」への注力ぶりやさまざまな未来志向の商品の自主開発と提供、そして「営業利益率を下げてでも注力する価値のあるものへの邁進」「利益を前進と拡大へのためのエネルギー源としての認識」的な同社の方針も、同社の中長期的なかじ取りの一環と見れば、十分理解できる。

さらにいえばこれらの日々是前進の姿勢を財務的に後押し、裏付けできる仕組みとしてAmazon Primeが有効に作用しているように見える。Amazon Primeの存在は、アマゾンの成功方程式をより強固なものにした感はある。

年次分となる「10-K」では主要地域別の年間売上高推移が米ドル単位で記されている。為替レートの問題もあるので単純比較をするのはややリスクが高いが、本社のあるアメリカ合衆国では各販売エリアの売上をどのようにとらえているのかとの解釈で見ればよいだろう。なお公開値の都合上、グラフでは2012年までは北米(アメリカ合衆国とカナダ)、2013年以降はアメリカ合衆国の値を適用させている。

↑ アマゾンドットコムの主要地域別売上(億ドル)
↑ アマゾンドットコムの主要地域別売上(億ドル)

↑ アマゾンドットコムの地域別売上(総売上に対する比率)(2023年)
↑ アマゾンドットコムの地域別売上(総売上に対する比率)(2023年)

いかに北米、特にアメリカ合衆国がアマゾンにとって、そしてインターネット通販市場として巨大なのかがあらためて理解できる数字に違いない。特にここ数年の売上の伸びは驚異的ですらある。もっとも2020年以降は、世界的な新型コロナウイルスの流行の影響でどの地域でも大きな売上増を示しているようだ。


※10-Kが公開されたので年次動向を更新しました。

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