週刊アサヒ芸能は「めしばな刑事タチバナ」が貢献し大幅上昇…諸種雑誌部数動向(2012年4-6月)

2012/08/13 06:50

先に【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年4月-6月データ)】などで【社団法人日本雑誌協会】が2012年8月6日に発表した、2012年4月から6月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータを元に、いくつかのグラフを生成した。今データは定期的に更新され、いくつかの雑誌について丸一年以上のデータが取得できたため、季節属性にとらわれない「前年同期比」の値を出せるようになったことは、これまでの記事でお伝えした通り。今回は当サイトで定点観測しているデータ以外のいくつかの雑誌について、「前年同期比」における部数推移のグラフ化を試みることにした。雑誌不況はどの程度、どのジャンルに浸透しているのか、それなりにつかみとれるハズだ。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

まずは一般週刊誌。状況を端的に表現するのなら「一部は踏みとどまり、他は減退」。

一般週刊誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)

一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年4-6月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年4-6月)(万部)

今回計測分では前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスに転じている雑誌は5誌。前回の3誌よりは状況が改善されている。一方前年同期比ではプラス誌は2誌だが、5%超は1誌のみ。マイナス誌は11誌で、誤差の許容量を超えたのは5誌。元々紙媒体は一部を除き漸減傾向にあるとはいえ、少々その影響が強めに出ている感はある(なお前回記事の前年同期比で「FRIDAYダイナマイト」が無いのは、2011年3月15日発売予定号が震災起因で4月13日にずれ込み、1年前同期の比較データが無くなったため)。

マイナス10%超えを示している「SPA!」「AERA」などは、紙媒体による「写真週刊誌」という存在において、供給過多のイメージは否めない。掲載内容の需要の観点では「週刊プレイボーイ」もしかり。数字の減退ぶりがそれを裏付けている。あるいはデジタル系をメインとし、本誌はそのデジタル系のプラットフォームとして割り切り、出版形態・構成を変えるぐらいの変革も切り口の一つとしてはアリかもしれない。電子書籍リーダーの爆発的な浸透普及が進めば、その実現可能性は増える。

また、前回記事同様今回も週刊アサヒ芸能の堅調さが目に留まる。いくつかの要因が考えられるが、その一つとして挙げられるのが『めしばな刑事タチバナ』。いわゆるB級、さらにはC級グルメが熱く語られる漫画だが、飲食物がすべて実名で登場することもあわせ、読者の「あるある感」が非常に強く、多くの人の共感を集めている。2010年末から連載を開始し、口コミなどで昨年中旬あたりから注目を集め始めているが、週刊アサヒ芸能の印刷部数の堅調動向とほぼ一致する。すべてというわけではないが、間違いなく貢献はしているはず。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期も状況は変わらずあまり良くない。その中で大きくプラスを見せたのは「初めてのたまごクラブ」。今誌は季刊誌で該当期間に発売されたのは1誌のみ。「妊娠がわかったら最初に読む本」をコンセプトに掲げ、毎回役立つ小物や小冊子などの付録が魅力的。また【「初めてのたまごクラブ」公式サイト】を見ると、同社類似他誌との巧みな連動性(「子育て」をテーマにするという雑誌の性質上、連動するのは当然の話)や関連商品の情報提供など、さまざまな切り口で相乗効果を測っている工夫が見て取れる。なお「初めてのたまごクラブ」は前年同期比だけでなく前期比でも、多少のぶれはあるが全般的に部数を漸増しており、現時点では数少ない成功事例として評することができる。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食への注力が高まる一方の昨今、ニーズは強まるはずなのだが、全般的に軟調なのは前期と変わらず。インターネット、とりわけモバイル系端末経由の情報提供サイトに読者を奪われている可能性は高い。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)

レタスクラブ印刷実績
↑ レタスクラブ印刷実績

特に「きょうの料理」は前期から比べれば随分と大人しくなったものの、今期も大きなマイナス値を示しており、根本的なテコ入れが求められている。印刷部数としてはまだ40万部強ほどあるのが幸いなところ。一方で「栗原はるみ haru mi」は前回同様今回も堅調な動き。「栗原はるみ」というカリスマ的存在が、雑誌の最大の魅力として生き続け、読書を引きつけているに違いない。

なお一時データが非開示だったものの再び開示されるようになった「レタスクラブ」だが、今回はまだ前年同期比を比較できるだけのデータが蓄積されていない。とはいえ別グラフに示したように、比較的良い流れを示している。この勢いを継続できれば、次回記事では大きな飛躍が期待できよう。

エリア情報誌。こちらも一部を除き苦境は続く。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)

前回同様今回も大きく跳ねた「北海道ウォーカー」だが、【北海道ウォーカー、季刊誌へ】で記したように、今回該当期の3月売り号から季刊誌に販売スタイルが変更されている。今件上昇もこれに伴う部数増加で、しかも前期以上に部数は大きく飛躍。前回「人気による上昇ぶりか否かは次回以降の結果待ち」としたが、少なくとも今データを見る限り、人気による上昇と見ても問題はなさそう(ちなみに直近期部数は6.3万部)。

【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、しばしば対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数(万部)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)

今回も前回同様、前年同期比では「いぬのきもち」の勝利(とはいえ両誌ともマイナス)。ちなみに直近期の発行部数は「いぬのきもち」13.5万部・「ねこのきもち」10.2万部で、こちらも「いぬ」の勝ち。「いぬ」は直近前期から上昇を見せ、「ねこ」との差を拡大しつつある。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。以前【「小学五年生」「小学六年生」が休刊・来年春に学習まんが誌「GAKUMANPLUS」を創刊へ】で報じたように、「小学五年生」「小学六年生」は休刊しておりすでに無く、さらに【「小学三年生」「小学四年生」来年2月売り号で休刊】の通り「小学三年生」「小学四年生」の休刊も決まったため、早々とデータ開示を止めてしまっている。

そして【GAKUMANplus (ガクマンプラス) 、休刊してましたァァッ】でも伝えているが、「GAKUMANPLUS」も休刊をしていたため、更新データとして提示できるのは「小学一年生」と「小学二年生」のみとなってしまっていた。そこで前回から幼稚園関連の雑誌を3誌ほど追加し、グラフは再構築されている。

「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年4-6月、前年同期比)

今回は「小学一年生」「小学二年生」共に大きくマイナスを示している。前回「持ち直しの気配を感じさせる」としたが、その雰囲気は見事に吹き飛んでしまった。今件は「前年同期比」によるもので、季節属性に伴う影響は無く、純粋に「勢いの減退」を感じざるを得ない。

一方前回から言及を始めた、幼稚園系3誌のうち「たのしい幼稚園」は今回もそれなりに堅調。同誌は手元にデータがある2008年4-6月期以降細かい上下を見せながらも、中期的には横ばいの値を維持している。昨今の出版不況や震災の影響を考えれば、なかなかできない偉業ではある。



以上ざっとではあるが、いつものように各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移のグラフ化を行った。ごく一部の例外をのぞき、ほとんどが前年同期で小さからぬ下げ幅でのマイナス基調が確認できる。

また、今回取り上げた業界専門誌の領域(料理や育児など比較的ハードルが低い、一般向けの業界)は、デジタル系ツールとの組合せで、逆に紙媒体としての魅力を活かしつつ、多くの人から注目を集められる可能性を十分に秘めている。例えばAR(Augmented Reality(拡張現実・強化現実))の常用活用を模索するなど、今だからこそ出来る挑戦もある。

市場を取り巻く環境が複数要因で大きく変化している以上、これまで通りの切り口は通用しない。そのこ事実をあらためて認識しておくべきだろう。

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