穀物、砂糖が大きく上昇、干ばつが影響か(2012年7月分世界食糧指数動向)

2012/08/12 07:30

以前の記事において、国連食糧農業機関(FAO)発表による【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高水準を維持し続けていることに対する懸念を述べた。今値は1990年以降にFAOが世界の食料価格の月ごとの変化を食料価格指数として発表しているものだが、この値が高いということは、世界の食料価格が高値で維持されているのを意味するからである。そしてそれは、各種商品市場の動向や政治情勢にも少なからぬ影響を与えている。そこで今サイトでは定期的にデータの更新・グラフの再構築、状況の精査を行うことにしている。今回はその2012年7月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元および用語の解説は、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認の程、お願いしたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年7月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。最近ではややもみあいの雰囲気が続く中、今回7月分では大きな上振れを確認できる。

その他に目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、その後はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年7月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作の報をきっかけにした反動の結果。しかし価格上昇の原因である「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況ではない。

今回計測月となる2012年7月においては食肉をのぞけば、項目によって幅に違いがあるものの、一様に上げの傾向を見せている。この事由についてはひとえにアメリカやロシアで顕著化した干ばつの影響を起因としている。昨年「一部で悪天候による不作への懸念が底値を支えている」という言及をしたが、それが顕著化した次第。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年7月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年7月)

今回月は昨年同月と比べればまだ低い水準ではあるものの、昨月と比べて全般的には上昇、一部(穀物、砂糖)で大きな上げ幅を見せていることが分かる。

リリースでは今月の動きについて「総合指数は大きな上昇を見せたが、2011年2月のピーク時の238ポイントよりはまだ下。主に穀物と砂糖の大幅上昇が総合指数を押し上げた」「穀物はアメリカの干ばつに伴うトウモロコシの不作予想、さらにはロシアの小麦生産の予想が下方修正されたのが大きな原因」「油脂の増加は主に大豆の厳しい需給予想を反映したもの。ただしヤシやひまわり、菜種油の流通量、将来の収穫見通しが堅調で、これが油脂全体の大幅上昇を防いでいる」「砂糖はブラジルの大雨が不作懸念となり、それが反映された形に。インドの台風やオーストラリアの大雨も底上げ要因」などと説明している。特にアメリカをはじめとする複数国で確認されている干ばつは、数十年来の規模であるとの報道もあり、今後もさらに関連項目の値が上乗せされるリスクは大きい。

食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。その観点からすれば食料品の価格上昇は好ましい話ではない。その観点では、昨今の動向は頭の痛い話ではある。



食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で加速度的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な要素が揃っている。このため、価格が安くなる要素を見つけにくい。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと同じである。

今月の各値、特に穀物の急上昇は、【米農務省発・米国内干ばつ状況マップ】などでも伝えているように、アメリカの干ばつを起因とする面が大きい。今後収穫の時期を迎えるにつれ、被害の実態が明確化され、場合によってはさらに各穀物の価格、そして穀物指数を押し上げることになるだろう。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動のすう勢も、食料価格の動きと小さからぬ関係がある。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な、今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。

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