夏物の販売が低調…2012年7月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き低下

2012/08/12 07:20

内閣府は2012年8月8日、2012年7月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から転じて増加したが、水準値50は下回ったままだった。一方先行き判断DIは先月から継続する形で減少し、相変わらず50を切っている。結果として、現状上昇・先行き低下の傾向を示している。基調判断は「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」とし、先月と比べて現状判断は上向いたものの、先月同様に景気の停滞、あるいは後退の気配が感じられる結果となっている(【発表ページ】)。

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プラス要因の一服感、しかし円高・電力不足懸念は続く
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2012年7月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス0.4ポイントの44.2。
 →4か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」がいくぶん増えたが、「やや悪くなっている」も増えている。
 →家計では乗用車受注の一服感や百貨店などの夏物の販売が低調だったものの、気温の上昇と共に飲料などの売れ行きが堅調さを見せて上昇。企業は円高の影響は引き続き大きいが、一部で受注増があり上昇。雇用は一服感を受けて低下。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.8ポイントの44.9。
 →復興需要の期待がある一方、夏の電力不足問題、エコカー補助金の反動、消費税引き上げに絡むマインド低下から、全部門で低下。
今月は先月から転じて現状がプラスに転じたが、その値はわずかに0.4ポイント。標準値の50.0には程遠い結果となっている。特に構成比において「やや良くなっている」が増えているが、同時に「やや悪くなっている」も増加する動きを見せているのが気になる。

やや下値でのもみ合い開始か。先行き判断では一つの節目が
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分では上昇・下降の項目が入り乱れており、また「飲食関連」のプラス5.1をのぞけば変動幅も小さい。状況的にはもみあいの様相を呈していることが分かる。雇用関係はかろうじて基準値50超を維持しているが、それ以外は全項目で40台での値動きで、あまり好ましいものとはいえない。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2007年夏以降の「金融危機」ですでに下落傾向が見られたが、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやくその動きも落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が、単月ではリーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強い。

そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。一時は戻しを見せる雰囲気もあったが、今月は3か月前から続く下落基調を完全に払しょくすることはできず、この水準でのもみ合いを想像させる動きを見せている。雇用関連はかろうじて50超を維持しているが、あとがあまり残されていない。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
そして低迷、再下落から低迷へ。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」の方が適切な表現といえる(この状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

2011年夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、今年に入ってからは円安などを背景に再び伸びの気配があった。ところが5月になると欧州債務危機の懸念再来に伴う円高・景気の後退、そして夏に向けた電力不足の具象化というマイナス要因が積み重なり、半ば期待されていた「2003-2004年の動きに近い形」「50超の状態で安定」が吹き飛んでしまったのが分かる。そして今月の動きを見ると、低下ではなく低迷(低い状態での状態継続)の気配が感じられる。

景気の先行き判断DIは先月から継続して下落している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい「雇用関連」だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月の58.7が天井。今月はといえば、先月から続いて下落し、ついに基準値50を割り込んでしまった。他の項目でいくつかプラスが見られるが、それよりも重要な動きといえる。次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば分かるように、雇用関連の指数は他の指数に先行する場合が多く、特に合計値を下回った場合、過去二回において大規模な下落が起きているからだ(2001年前半と2008年前半)。幸いにもまだ両者の差異はある程度大きく、雇用関連指数は合計値を上回っているものの、警戒領域に達したと見て良い。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数の意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる(一時期は「各DI値が1ケタ台に突入するのでは」とすら思われたほど)。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほぼ変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてこの数か月は基準値50付近をうろうろとする動きが続いている。多分に為替レートに反応する傾向が強く、今月も円高の影響を受け、さらに電力や消費税などのマイナス要因が積み重なり、値を下げた感はある。

また今月は繰り返しになるが、雇用関連指数が50を切ってしまっている。合計値まではまだ4.5ポイントの差があるが、一つの(良くない)節目として、十分以上の留意が必要となる。

円高、電力不足、消費税…懸念材料は継続中
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・この7月も暑さが厳しく、冷たい飲物やアイスクリームなどを中心に、月の後半は非常に出荷が多かったことが、他の需要も引っ張ったようである(コンビニ)。
・今月になって、気温上昇と共に扇風機や寝具、肌着、飲料などの夏物の動きは例年以上に活発となっている。特に、売出し時の客の購入量は以前より増えたと感じる(スーパー)。
・猛暑と省エネブームでエアコンと冷蔵庫等、夏物商材の動きが非常に良い。また、太陽光発電等も順調に動いている(一般小売店[家電])。
・7月は夏のキャンペーンが本格化し、新商品発売及び予約開始時からスマートフォンを中心に携帯販売台数は増加し、関連商品のアクセサリー売上も上昇している(通信会社)。
・エコカー補助金の終了を間近に控え、希望する車種が補助金申請に間に合わないため、購買意欲は低下している(乗用車販売店)。
・夏物セールが分散化し盛り上がりが見えなくなっており、全体的な販売減につながっている(百貨店)。
・例年より長期間に及んだ梅雨や局地的な大雨により、商店街への来街者が著しく減少しており、売上の減少につながっている(商店街)。

■先行き
・消費税の増税が可決されることになれば、2014年3月までに引き渡しできる物件については、確実に駆け込み需要が発生する。分譲マンションの場合は、客が欲しい場所で販売物件をすぐに買えるとは限らないため、早めに購入することになり、増税が決まったら、すぐに駆け込み需要が発生するとみられる(住宅販売会社)。
・経済の下方修正もみられるなかで、夏の電力需要に対する警戒感、それにともなった各企業の縮小傾向等がみられるため、この先においても状況は変わらない(タクシー運転手)。
・エコカー補助金終了後の反動減が予想される。新型車効果で埋めきれないマイナスが懸念される(乗用車販売店)。
・消費税増税の法案が通るめどがついた報道以降、すぐの増税ではないにしろ、消費意欲を削ぐ傾向にあると思う。今回は電気料金の大幅値上げがあり、こちらは待ったなしのため、影響は早く出てきそうである(衣料品専門店)。
・今後実施される可能性のある計画停電による影響や消費税増税等の論議が、消費のマインドを大きく落とす。プラス材料を見つけるのが難しい状況となっている(スーパー)。
などとなっている。特に夏の厳しさを好機としたポジティブな意見もあるが、エコカー減税の終了、円高や電力回り、消費税など政策にまつわる話はその多くがマイナスとして話が進んでいる。円高と電力はダブルパンチの形で製造業にダメージを与えており、さらに消費税が消費者の消費心理を大きく悪化させているようすがうかがえる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
復興需要への期待は薄れ、
電力不足と円高、消費税への
懸念が重しに。
2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「2011年の”震災前”における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を(中心では無く)天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車の利用コストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流経費のアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、円高基調も続き、国内政策の無策さも合わせ、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていたからである。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、それを起因として生じる間接的な不安要素(流通不安や生産力の低下、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安など)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させ」てしまう。

これは端的な表現をすれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表せる。特に一般社会の経済行動において中心的な存在となる、中堅女性層に著しい。さらにそれを(悪用する形で)「機会」ととらえ、煽動などを繰り返して自らの懐を温める者も多数登場しており、これが社会全体の不安を一層募らせ、経済活動をさらに委縮させる要因の一つにもつながっている。

「震災による中期的な不景気が発生し”うる”可能性」という言葉はすでに過去のもので、もはや「実体化」している。震災前から不景気の状態にあったため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高もさらに進み、輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。

直近で半年ほど前から続いていた一時的な回復基調は、多分に「行き過ぎた円高がいくぶん戻した」ことによる、リバウンド効果でしかなった。実際には4月下旬から欧州債務危機の再燃とアメリカの景気後退(むしろ回復の兆しが兆しでしかなかった可能性)に伴う円高が大きく進行。さらに夏の電力不足の実体化による経済・行動・人々の意思の委縮(とそれに対応すべき国や自治体の迷走への不信感)が急速に強まり、昨今の低迷感を裏付けている感はある。

震災経験を元にした災害対策に関しては、多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた、煽動的・感情的な論議が行われている。今般の経験を有効に活かす手立てを講じ(可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので)、そして状況の鎮静化を祈りつつ、手を打つのが最善であるはずなのだが、多方面でそれとは異なる方向へ歩みを見せる雰囲気を覚える。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が上から下まで跳梁跋扈している昨今においてこそ、論理的にも数理的にも常識的にも「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していく。その流れに世の中が従えば、回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示す動きを見せるに違いない。

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