ラジオ軟調継続中、下げ幅は拡大の動きに(経産省広告売上推移:2012年8月発表分)

2012/08/11 07:00

経済産業省は2012年8月8日、特定サービス産業動態統計調査において、2012年6月分の速報データを発表した。それによると、2012年6月の主要メディアにおける広告費売上高は前年同月比でプラス7.9%と増加していることが明らかになった。主要項目別では「ラジオ」がマイナス6.4%と、もっとも低迷しているのが確認できる(【発表ページ】)。

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今記事のデータ取得元や選択項目の詳細に関しては記事の一覧【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】の中で解説している。そちらで確認してほしい。今記事はその2012年6月分データ(公開は2012年8月)の速報値を反映させたもの。なおそれより前のデータについては、速報値の後に発表される確定値で修正された値を用いている。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2012年5-2012年6月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2012年5月-2012年6月)

比較しやすいように先月発表データと並列して図にした。今回月では前回「ラジオ」がマイナスだったが、今回月ではそれに加えて「新聞」もマイナス値を示している。一方で前回月には及ばないものの「雑誌」の伸び方が目立つ。これは1年前の同月における「前年同月比」ではマイナス19.8%を示しており、その反動を受けてのものと考えられる。これらの1年前の大きな下落はもちろん東日本大地震・震災を起因としたものである。

そこで先月に続き、「前年同月」が震災起因で大きく下げた値の反動値となり、状況を正しくつかめないリスクを回避するため、「前々年同月比」も算出し、グラフを作成する。今回の場合は2010年6月の値との比較となる。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費前々年同月比(2010年6月→2012年6月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前々年同月比(2010年6月→2012年6月)

「インターネット広告」の伸びは順当として、「テレビ」もかろうじてプラスを維持しているのが目に留まる。4マスの中では唯一のプラスであり、昨今の状況とも符合する動きといえる。

今回も該当月における各区分の具体的売上高をグラフ化しておく。電通や博報堂の区分とは違うため、該当同月の両社データとの違和感を覚える部分もあるだろうが、参考値の一つとしてとらえてほしい。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2012年6月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2012年6月、億円)

金額面で見ると昨今では何度か「新聞」を抜き、主要5項目では「テレビ」に次ぐポジションを得る機会を持つようになった「インターネット広告」(【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(月次・-2011年12月版)】)。今月発表分は先月分から転じて、「インターネット広告」が「新聞」に競り勝つ形となった。「追いつ追われつを繰り返しながら」とは最近両者の金額動向を評する際に使っている言い回しだが、今回月は先月に続き、まさにその通りの動きとなった。

次に、公開されているデータの中期的推移をグラフ化する。インターネット広告のデータが掲載されたのは2007年1月からなので、それ以降の値について生成したのが次の図。

月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2012年6月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2012年6月分まで)

大勢としては「インターネットは激しい起伏の中で2009年後半以降は回復、プラス圏を維持」「テレビは2010年あたりから戻しの雰囲気」「ラジオはマイナス圏で低迷-やや下げ幅を縮小」「雑誌はかなり厳しいレベルの下げ幅を継続していたが、ここしばらくは復調の雰囲気も」という傾向を見せてい”た”。そして東日本大地震・震災による影響で2011年3月分から、グラフは大きなうねり・変移を起こしている。

今回月は前回月に見られた「反動に伴う大きな伸び」が「インターネット広告」を除き急速に縮退し、多くの折れ線グラフで急降下状態にあるのが分かる。中でも「”昨年同月時点における”前年同月比」がマイナスであったにも関わらず、つまり反動の期待があるにも関わらず、さらに今回月でマイナス値を示す項目が複数あることに、憂いを覚えずにはいられない。

元々紙媒体の電子媒体への一部移行と適正な住み分け(紙媒体のすべてが電子媒体に移行するわけではない。紙媒体にもメリットは多い)、電波媒体の広告プラットフォームとしての立ち位置の正当評価は、メディアの技術進歩や需給関係の変化と共に、漸次進行する。日本の場合は諸外国と事情が異なり、既得権益を悪と決めつけ、それを「打破すべし」と語る報道メディア自身が大きな既得権益を握り、守り通そうとする動きが各所で大規模に見られ、結果として各メディアの「立ち位置の正常化」「世界の流れに追随する歩み」は遅れているのが現状(もっとも前者はともかく後者「追随-」について、すべての面で単純に世界の流れへ追随することが正しいのか否かは別の話)。

一方で東日本大地震・震災とそれに伴う各種震災・人災、そしてその後の消費者の中に芽生えた心理変化は、広告出稿側のコスト意識の変化(多くは費用対効果の厳粛・厳密化)、地震報道などで一部ながらも露呈した各媒体の「真の価値」への、視聴者・広告主による意識の移り変わりのきっかけとなり、広告業界ですらも一部軌道修正の上で、全体における変化の「時計の針」を押し進めている。この「動き」は目立ったものではないが、少しずつ、確実に人々のライフスタイル、そして広告業界にも影響を及ぼしていく。

今後も電通・博報堂の月次レポートの分析と共に、特定サービス産業動態統計調査の結果の追跡に傾注し、メディアと広告の状況変化の移り変わりのチェックをお勧めしたい。単月ではつかみとれないことが、数か月、数年の流れを見て行くうちに、頭にイメージされるに違いない。

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