前年同期比では全紙がマイナス、一部は2割以上の減少…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2012年4月-6月)

2012/08/12 12:10

【社団法人日本雑誌協会】は2012年8月6日、2012年4月から6月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2012年の4-6月期とその前期、2012年1-3月期における印刷実績を確認する。

2012年1-3月期と2012年4-6月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2012年1-3月期と2012年4-6月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今回も幸いなことに脱落組は無し。代わりに追加組もない。お馴染みのメンバーの中においては、【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年4月-6月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「PRESIDENT(プレジデント)」が断トツで印刷部数が多い状況も変化はない。前期で大きく印刷部数を伸ばした「プレジデント」だが、今期は再び失速。どうやら2012年1-3月の伸びは一過性のものだったようだ。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化が生じたのかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られない。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年1-3月、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年1-3月、前期比)

前回圧倒的に黄色・赤系統(前期比マイナス)で支配された今グラフだが、今回はそれなりに緑・青系統(前期比プラス)の棒も見える。誤差範囲のプラスマイナス5%を除外して考えると、プラス誌1誌、マイナス誌2誌。マイナス誌が増えたのは気になるが、昨今の雑誌情勢を考慮すれば、小康状態というところか。

やや大きめな伸びを見せる「オール投資」だが、該当期で「大いに売れた」と確定できる号は見当たらない。かろうじ「これではないか」という推測が成り立つ号としては『2012年5月1日号(2012年4月16日発売)』が該当するだろうか。『同誌バックナンバーページ』によれば、「特集1…グングン伸びるサプライズ銘柄を発掘「新勝ち組」を狙え![絶好調!] スマホ&タブレット111銘柄」「特集2…円安&エコカー補助金で大復活!自動車関連16銘柄」とあり、確かに気になる単語が複数踊っている。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年4-6月、前年同期比)

前期ではプラスが2誌あったものの、今期では全誌がマイナス。下位2位の「\en SPA!」「THE21」の軟調ぶりは相変わらず。他の雑誌も(元々印刷部数が少なく、ぶれが生じやすいとはいえ)多かれ少なかれ頭をかかえる状況にある。また、昨年同期といえば他種雑誌同様に少なからず震災の影響を受けていたはずで、それとの比較で反発を期待してもおかしくない。その動きが無く下落が継続中なのは、相当な不振状態にあると見て間違いない。



2008年秋のいわゆる「リーマンショック」で多くの人が経済情報に注目した時期がこの数年間(多分に「今世紀に入ってから」と表現できるかも)における天井となる形で、それ以降は金融・経済系のウェブサイトへの(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加はゆるやかなものとなり、あるいは減少に転じている。しかしパソコン、そして携帯電話やスマートフォン、タブレット機など各種モバイル情報端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは加速の真っただ中にある。

特に時間・分単位で情勢が変化する経済系のジャンルでは、記事の作成と読者への公知の間に大きな時間差が生じる雑誌の不利さは、他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)とは比べ物にならないくらい大きい。スピード感で例えれば、インターネット系媒体は紙媒体における「号外」を逐次配信しているようなもの。昨今では、即時対応ができる今ジャンルのインターネット上での情報展開は、ますますその重要度を増しつつある。

頑なに古い体制ばかりのみを固持するのでは無く、現状を正しく認識・分析し、「紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みはどのようにすれば構築できるか」という雑誌作りの原則に立ち返り、同時に「躍動する新メディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いか」との模索をすること。その際に固定概念や既得権益にとらわれることなく、先を見据えて柔軟な発想を行うこと。さらに答えを見つけ出したら、躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が早急に求められている。そしてその進化は対象や環境こそ違えど、昔から常に、あらゆる場面で求められていたことに過ぎない。

環境の変化に対応・進化できない生物が、種としてどのような結末を迎えるか。それはこれまでの歴史が十分すぎるほどに語っている。そしてその動きにもっとも敏感な、今記事で対象となる雑誌達自身こそ、その事実は一番よく知っているはずである。

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