十年余りの携帯電話普及率推移をグラフ化してみる(新興国編)(2016年)(最新)

2016/08/03 12:16

【国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)のデータ項目ページ】では定期的(年一ペース)で、主要国(ITU加盟国)の携帯電話、インターネットなどに関する統計資料を集約し、各国の普及浸透状況を推し量れるデータを公開している。諸国の通信機器の普及推移を概略的にではあるがその経年変化も含めて確認できるものとして、日本の公的機関が発行する各種白書でも引用されている、貴重なデータである。今回はその中から「新興国の携帯電話普及率の推移」に関する値を抽出し、グラフ化とその状況の精査を行うことにする。

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「新興国」との言葉には色々な定義、区分があり、さらに国数も多い。すべてを追いかけていては雑多に過ぎるので、今回はG20各国のうち目に留まった国、具体的にはアジア諸国からは「シンガポール・マレーシア・韓国・インドネシア・中国・インド」、それ以外の国から「サウジアラビア・ロシア・ブラジル・トルコ・メキシコ」を対象とする。その多くはこれまで別の記事で、インターネットや携帯電話関連でスポットライトをあてたことがある国で、各種記事との連動性も図れるのが選択理由の一つでもある。

まずは公開されている最新値、2015年における携帯電話普及率をグラフ化する。この「携帯電話」には従来型携帯電話(フィーチャーフォン)以外にスマートフォンなども含む。また、「契約者数÷人口」で普及率を算出しているため、普及率が100%を超えることもある。

↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その1)(2013-2015年)
↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その1)(2013-2015年)

↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その2)(2013-2015年)
↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その2)(2013-2015年)

複数国が100%を超えている。これは前述の通り「契約数÷人口」の計算式で算出していることと、以前【インターネットと携帯電話の普及率を世界の他国と比べてみる】でイタリアを事例に挙げて紹介した通り、「プリペイドの扱いやSIMカード(契約者情報を記録したICカード)の互換性への対応が各国で異なること」を起因としている。

要は複数枚のSIMカードを一人が「契約」し、電話をかける相手によってカードを切り替え、少しでも安い料金で利用しようとする「生活の知恵」的な使い方によるもの。特にこの使い方は、新興国で行われる事例が多数見受けられる。新興国でこの計算方法による携帯電話普及率が高いのは、これが一因でもある。

アジア諸国の携帯電話普及率に関する動向は、すでに以前【アジア太平洋のモバイル加入者数や増加傾向をグラフ化してみる】などでお伝えした通り。例えばインドネシアのように、国土構成の事情から固定回線の普及に難儀しており、それが携帯電話の普及をさらに後押しするなどの事情もある。

一方、サウジアラビアやロシアの普及率の高さにも目が留まる。総務省のデータベース「世界情報通信事情」の【サウジアラビア】【ロシア】で確認すると、状況はイタリアと同じ。「携帯電話本体を選ぶ」他に「携帯の契約会社=SIMカード」を選び、携帯電話の利用スタイルを臨機応変に変えているようである(参照:「ロシアで携帯電話(MTS)のSIMカードを契約してみました(ANAの旅のクチコミ情報サイト−旅達空間−)」(2014年7月時点ですでにサイトサービスが終了し、記事の保全もなされていませんでした))。

また直近3年間の動きを見ると、サウジアラビアで減少が起きているが、それ以外の国では大よそ上昇している。特に東南アジア地域においてインドネシア、中国の上昇ぶりが目に留まる。両国は人口が数億の単位の国にも関わらず大ききな上げ幅を示しており、両国で加速度的に携帯電話(多分にスマートフォンだろう)が浸透している状況がうかがえる。

一方サウジアラビアの減少については、上記総務省の資料でも詳しい説明は無い(数字上の動向は今件記事と同じくITUベースなので同じものとなって当然)100%をゆうに超しているが、気になる話には違いない(ITUの元資料にも注記は無し)。同じタイミングでLTEサービスが始まっており、これに合わせて契約の整理統合が行われ、名目上の契約者数が減少している可能性はある。

またシンガポールも2013年から2014年にかけて大きな減退が生じている。これは2014年4月からシンガポールにおけるプリペイドカード式SIMカードの購入上限を、これまで1人10枚だったものが3枚に減らされたことによるもの。見方を変えれば同国ではそれまで、少なからぬ人が1人につき4枚以上のカードを持っていたことになる。

続いて2000年以降における、各国の携帯電話普及率推移。

↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その1)(-2015年)
↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その1)(-2015年)

↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その2)(-2015年)
↑ 携帯電話普及率推移(契約数/人口)(新興国等その2)(-2015年)

元々携帯電話、あるいはデジタル方面のインフラ整備に積極的な韓国やシンガポールは2000年時点ですでに60%から70%と高い普及率を示している。もっとも上昇スピードはほぼ一定で緩やかなものである。なおシンガポールで2006年から2007年にかけて大きな上昇がみられるが、これは2006年6月に同国で発表された、10か年情報通信マスタープラン「インテリジェント・ネイション2015」、そしてその一環として構築された「次世代全国ブロードバンド網(NGNBN)」(オープンアクセスの光ファイバー網)が一因だと考えられる。また、2014年以降のシンガポールにおける失速ぶりは上記の通り、SIMカードの購入制限の強化によるもの。

他の国のほとんどは、2000年の時点では数%から良くて20%程度の値でしかなかった(特に「その1」のグラフ構成国はそのような国ばかりである)。それが2003年前後から上昇カーブの角度を上向きにし、急速な普及率向上を見せる。とりわけサウジアラビアとロシアの伸び率は著しいが、上記にある「SIMカードの複数契約」がその一端であると考えられる。なおロシアでは2010年から2011年に大きな失速が起きているが、これは先行記事の「先進国編」のドイツにおける事情と同様、SIMカードのカウント方式の基準変更によるもの(登録されているカードのみのカウントとなっている)。

それ以外の国でも普及率の伸び方は非常に大きく、各国のインフラ整備が急ピッチで行われ、それと共に携帯電話の普及も進んでいる。見方を変えれば「携帯電話の普及が新興国の発展のバロメーターの一つ」であると同時に「携帯電話の普及により民間・一般市民における情報や経済交流の活性化が促進され、国そのものの活力向上にも寄与した」と考えられる。

他方中国は上昇率もゆるやかなものだが、確実に増加していることには違いない。同国の人口ポテンシャル(と地域性)を考えれば、この伸び率でも驚異的であると認識すべき。また、トルコは2008年の92.8%をピークに普及率が頭打ちとなっているが、これは同国の携帯事情(本体を利用登録しておかないと利用できなくなる)によるようだ。もっと最近では再び上昇を再開している。さらにブラジルでは直近の2015年で大きな失速が生じているが、集計方法の変更や施策の変化は確認できない。前年のワールドカップの反動、景況感や治安の悪化が影響しているのかもしれない。間もなく開催されるオリンピックに向けて、値がどのように変化するかが気になるところだ。



先進諸国の一部で見られた「携帯電話普及における飽和状態」は、直上にあるトルコやサウジアラビアなど一部で見られるものの、多くの国では今なお普及率は上昇する雰囲気。コストの問題から携帯電話全般ほどの普及率はかなわないものの、パソコンに近い感覚でインターネットへのアクセスが可能で多種多様な機能を装備し、インターネットによる可能性を大きく切り開くスマートフォンの浸透が進めば、さらに利用者の情報に対する意識も変化していく。

携帯電話の普及と共に変化する、「不特定多数」の人たちの意識と情報環境。これが社会全体にどのような影響を及ぼすことになるのか。慎重な注視が必要ではある。


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