公衆電話総数は約12.2万台…公衆電話の設置数推移(最新)

2023/10/18 02:46

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023-1004総務省は2023年7月4日、2023年版の【情報通信白書】を公開した(【発表リリース:令和5年「情報通信に関する現状報告」(令和5年版情報通信白書)の公表】)。構成要素の一部は「通信利用動向調査」の結果を基にしているが、他にも色々な資料を使ったり独自の調査を実施しその結果を用いており、有意義な内容となっている。今回はその掲載データの中から、携帯電話に押される形で数を減らしつつある公衆電話の台数の変移について、最新の値をも合わせてグラフ化し、現状の確認を行うこととする。

スポンサードリンク


「公衆電話」は言葉通り「公衆」の「電話」であり、結構な数が電話ボックスに収められる形で随所に配置され、誰もが有料で利用できるインフラとして提供されている。また最近では公共の場にまとまった形で設置され、身近な情報交換手段として用意されている(役場や医療機関などの公的機関ではよく見かけるはずだ)。他には緊急時に救急車や警察を呼ぶための拠点としての意味合いもある。

電気通信事業法施行規則によれば、公衆電話は社会生活上の安全および戸外での最低限の通信手段を確保する観点により、市街地(国勢調査結果による人口集中地区)では1キロ四方に1台、それ以外の地域(世帯や事業所が存在する地域)では2キロ四方に1台は設置することが求められている(【電気通信事業法施行規則:第十四条のニ】)。

しかし「いつでもどこでも電話が使える」公衆電話の役割は、携帯電話の普及とともにその立場を奪われる形となり、需要・利用率も漸減。利用率の低下は売上の低下につながり、採算が取れなくなる対象も増加。結果として設置台数も減らされつつある。また、1999年に変造テレホンカード対策として登場したICカード型の公衆電話も、公衆電話そのものの利用率の低下でICカードの普及も進まず、結局2006年3月末で廃止されてしまう。

直近分となる2023年3月末時点における日本国内の公衆電話総数は12万1882台。前回年の13万7649台からさらに1万5767台・11.5%の減少である。

↑ NTT東・西日本における公衆電話設置数(構成内容別)
↑ NTT東・西日本における公衆電話設置数(構成内容別)

上記の解説に加え白書側でも「携帯電話の普及により、公衆電話の利用が減少していることが背景にある」と解説している通り、この減少は携帯電話の普及に伴うもの。今後携帯電話の普及率がさらに上昇し、幅広い年齢階層に浸透するとともに、公衆電話の必要性はますます薄れ、採算性の問題もあり、台数が減っていくことは容易に想像ができる。

この状況について【総務省の「国内における公衆電話の利用動向に関する調査結果」(PDF)】などによれば「高齢者の利用度が高い」「緊急時において必要となる」「ユニバーサルサービス制度によって(赤字でも)維持が義務付けられている」などの理由もあり、「減少傾向は避けられないが、最低限必要数は維持される」ことが確約されていると説明されている(上の「電気通信事業法施行規則」もその裏付け)。

このうち「緊急時において必要となる」に関しては、2011年の東日本大地震・震災の際に、他の通信インフラが途絶した状態の中、公的機関などに設置・開放された公衆電話を使い身内や知り合いと連絡を取り、肌身をもって実感した人も多いはず。これはNTTが設置する公衆電話は、発信規制や接続規制が行なわれた際にも優先して通信が行なえる「優先電話」と同様の扱いを受けているためである(【災害時優先通信(総務省)】)。

↑ 優先電話の仕組み(総務省解説ページから抜粋)
↑ 優先電話の仕組み(総務省解説ページから抜粋)

他方、公衆電話全体数が減る一方、アナログ式の台数は微増する動きが確認できる(ここ数年は再び減少しているが)。また今件設置数にはカウントされないものの、回線のみを用意しておき電話端末自身は設置者が別途保管し(この時点では電話機能は使えない)、災害時などには設置者が回線に電話端末を接続して公開し、無料で通信手段を提供する特殊公衆電話(事前設置電話)の設置数が急増している。この特殊公衆電話は維持費用が安く、電気通信事業法施行規則の縛りを受けることもないことから、公民館や小中学校のような災害時の避難場所として用いられる公共施設を中心に急速に普及をしており、2023年3月末時点でNTT東日本管轄では5万1464台、NTT西日本管轄では3万7180台が設置されている(2012年3月末ではそれぞれ1万1343台・6201台だった)。

↑ 特殊公衆電話のイメージ(NTT西日本紹介ページから抜粋)
↑ 特殊公衆電話のイメージ(NTT西日本紹介ページから抜粋)

アナログ式の台数の増加や特殊公衆電話の急増は、先の東日本大震災の教訓を受けてのものだろう。

今後は「インフラとして必要な公衆電話数の適切数」の検討、さらには「緊急時の保険的通信手段としての役割」が再確認された上で、公衆電話の管理維持が求められよう。同時にこれまで以上に、代替手段としてますます重要視される携帯電話のインフラとしての脆弱性について、さらなる努力による状況改善が要求されるのは言うまでもない。


■関連記事:
【キャッチホンIIなどのサービス、2016年に終了へ】
【市内公衆電話が10円57.5秒に短縮・NTT東西が消費税率引き上げ分転嫁を申請】
【非通知・公衆電話からも着信可に…NTT東日本、被災地からの電話着信について注意喚起】
【コレクトコール「106番」来年夏に終了、ドコモも接続を終了へ】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS