増える「子供無し世帯」「一人親と子供のみ世帯」…核家族の中身の推移(最新)

2023/09/12 02:43

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2023-0831厚生労働省では2023年7月4日に、令和4年版(2022年版)となる「国民生活基礎調査の概況」を公開した。これは国民生活の基本事項を調査し、各行政の企画、運用に必要となる資料を収集する目的で実施されているもので、誰もが自由にその内容を確認できる。今回はその公開値を基に、「核家族の具体的な構成状況」を各種計算の上でグラフ化し、状況の推移を推し量ることにする。日本の世帯構成でも主流を占める核家族は、具体的にはどのような構成なのだろうか(【発表ページ:令和4年 国民生活基礎調査の概況】)。

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増加を続ける核家族、その中身は?


今調査の調査要件および注意事項は、先行する記事【世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説済みなので、必要な場合はそちらを参考のこと。

今回取り上げる「核家族」とは「夫婦のみ」「夫婦+未婚の子供」「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」で構成される世帯であると定義されている。要は三世代世帯ではない、核のみの世帯。1人だけで構成される単身世帯は含まれないことに注意。

まず「核家族」そのものだが、漸増を続けていることは以前の記事でも解説した通り。

↑ 世帯種類別世帯数(折れ線グラフ、万世帯)(再録)
↑ 世帯種類別世帯数(折れ線グラフ、万世帯)(再録)

そこで核家族を「夫婦のみ」「夫婦+未婚の子供」「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」の構成区分で区別して、それぞれの要素の推移を見ることにする。「夫婦のみ」はいわゆる「DINKS(ダブルインカム・ノーキッズ)」のライフスタイルを取ると自主的に決めている、あるいは諸般の事情でそうせざるを得ない夫婦の場合もあれば、(結婚してからまだ日が浅く)子供が授けられていないだけの場合もある。「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」は配偶者と死別、離婚した、あるいはいわゆる「未婚の母(・父)」の場合が想定される。または一人身となった親と、その親を介護する子供で構成される世帯もありうる。さらには片方の親が3か月以上の長期出張をしているなどで別居している場合も考えられる(その場合は今調査の項目において該当者は調査から除外される)。

まずは各種類の世帯数を積み上げた棒グラフが次の図。核家族が全体として増加しているのは先のグラフにもある通りだが、その内部構成の動向は「子供がいない核家族世帯の大幅な増加」と「一人親+未婚の子世帯の漸増」であることが分かる。

↑ 核家族世帯数(世帯種類別、積み上げグラフ、万世帯)
↑ 核家族世帯数(世帯種類別、積み上げグラフ、万世帯)

↑ 核家族世帯数(世帯種類別、積み上げグラフ、万世帯)(2001年以降)
↑ 核家族世帯数(世帯種類別、積み上げグラフ、万世帯)(2001年以降)

夫婦と子供から構成される、世間一般的なイメージとしての核家族数は1980年代までは急増、その後は横ばい、そして1990年以降は漸減に転じた。そして今世紀に入ってからは1400万世帯から1500万世帯のボックス圏内での推移に移行し、安定した動きとなっている。一方で夫婦のみ・一人親と未婚の子供世帯は漸増を続けており、核家族内の構造も少しずつ変化を遂げている。

構成比を算出して構造変化を精査


続いて、全核家族世帯数に占める世帯種類別構成比推移。このグラフで「核家族」を指し示す構造世帯の中身が、年月の経過とともに少しずつ変わりつつあるようすがよくわかる。

↑ 全核家族世帯数に占める世帯種類別構成比
↑ 全核家族世帯数に占める世帯種類別構成比

↑ 全核家族世帯数に占める世帯種類別構成比(2001年以降)
↑ 全核家族世帯数に占める世帯種類別構成比(2001年以降)

中央部分の赤い「夫婦と未婚の子供のみ」世帯の比率が年月の経過とともに漸減し、両サイド(「夫婦のみ」と「一人親と未婚の子のみ」)から圧迫を受けているのが確認できる。特に「夫婦のみ」の比率増加は著しく、この50年あまりの間で核家族全体に占める割合は2倍以上となっている。

また今世紀に入ってからは、その「夫婦のみ」世帯比率の増加も落ち着きを見せ、「一人親と未婚の子のみ」が増加を継続していたのが目にとまる。上記でも触れているが、高齢化に伴い介護される側・する側で構成される世帯、高齢者夫婦の片方が亡くなることでひとり親と子供だけ(子供の人数は単数とは限らない)となった世帯、さらには離婚した子持ち夫婦の増加によるものと考えられる。

一方、ここ10年ほどに限れば、「夫婦+未婚の子のみ」が減り、「一人親+未婚の子のみ」はほぼ横ばい、そして「夫婦のみ」が増加の動きを示している。特に直近2年において「夫婦のみ」の伸び方が著しい。あるいは新型コロナウイルス流行の影響があるのかもしれない。

最後に純粋な世帯数を折れ線グラフにしたものを作成する。

↑ 核家族世帯数(世帯種類別、折れ線グラフ、万世帯)
↑ 核家族世帯数(世帯種類別、折れ線グラフ、万世帯)

「夫婦と未婚の子供のみ」世帯”数”は上記でも言及した通り、1980年代までは急増したものの、その後は横ばい、さらに1990年以降は漸減に転じ、今世紀に入ってからは横ばいに。一方で「子供がいない核家族世帯の大幅な増加」と「一人親+未婚の子世帯の漸増」が確認できる。さらに直近2年において上記で触れたように「夫婦のみ」の伸び方と「夫婦+未婚の子のみ」の減り方が顕著なものとなり、あと数年で両者の序列が入れかわる雰囲気すら生じている。



「一人親+未婚の子世帯の漸増」は高齢者がいる世帯の増加で説明ができる。一方で「子供がいない核家族世帯」、つまり「夫婦だけの世帯」の増加は、単に「子供が授かるのを待っている状態」「しばらく新婚生活を楽しみたい世帯」の増加だけでは説明がつきにくい。

色々と理由を探してみたが、これは以前内閣府の調査結果として出された【「結婚しても子供は必要ない」20代・30代は6割に】で語られている「結婚しても子供を持つ必要性を感じない夫婦の増加」が大きな要因と考えられる。要は「子供を持つ事に消極的な、親と同居もしない夫婦だけの世帯が増加している」ことになる。

世帯・家族に対する価値観の変化や、生活の上での金銭的な厳しさがこの傾向をもたらしているのだとすれば、早急に何らかの、そして長期的な視点で対策をする必要に迫られている。そのヒントの一端は、【結婚したいがアレが邪魔…未婚男女が頭を抱える、結婚のハードルとは?】【時代は専業主婦から家事と仕事の両立へ…未婚女性が望む結婚後のライフスタイル(最新)】などのような、独身者(未婚者)からの結婚に関するデータで推し量ることができよう。


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