増える核家族と単身世帯…種類別世帯数の推移(最新)

2023/09/11 02:46

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2023-0830厚生労働省では2023年7月4日付で、令和4年(2022年)版となる「国民生活基礎調査の概況」を発表した。この調査は国民生活の基本事項を調査し、各行政の企画、運用に必要な資料を収集する目的で行われており、詳細なレベルで日本国内における世帯の現状を数量的に知ることができる。今回はその中から「核家族や単独家族など、内部構成別の世帯数推移」に関して各種計算の上グラフ化を行い、中長期的な家族構造の変化を推し量ることにした。よく見聞きする「核家族」「単身世帯」の状況推移を詳しく知ることができる次第である(【発表ページ:令和4年 国民生活基礎調査の概況】)。

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世帯数そのものは増加中、支えるのは核家族と単身世帯


今調査の調査要件および注意事項は、先行する記事【世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説済み。そちらを参考のこと。

なお「核家族」とは「夫婦のみ」「夫婦+未婚の子供」「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」の構成による世帯を意味する。要は三世代世帯ではない、核のみの世帯となる(単身世帯は含まれないことに注意)。

まずは主要項目別に区分した世帯数を積み上げ、世帯数全体の推移も把握できるグラフを作成する。やや雑多な感もあるので、21世紀分限定のものも併記する。

↑ 世帯種類別世帯数(積み上げグラフ、万世帯)
↑ 世帯種類別世帯数(積み上げグラフ、万世帯)

↑ 世帯種類別世帯数(積み上げグラフ、万世帯)(2001年以降)
↑ 世帯種類別世帯数(積み上げグラフ、万世帯)(2001年以降)

【「お年寄りがいる家」のうち28.3%・638万世帯は「一人きり」(最新)】などでも解説しているが、世帯総数は増加傾向にある。ただしよくその動き・中味を見ると、グラフ上では緑の部分、つまり三世代世帯(祖父母・夫婦・子供)は減少の動きを示している。また、核家族世帯を「核家族総数」と表記しているのは、上記の説明の通り「夫婦のみ」「夫婦と未婚の子供」「片方の親と未婚の子供」などのパターンがあるため、それをすべて合算したからに他ならない。

2011年においては東日本大地震・震災の影響を受け、被災三県(岩手県・宮城県・福島県)の値が除外されており、阪神・淡路大震災で兵庫県分がカウント外となった1995年同様に、イレギュラーな動きを示している。2012年も福島県のみ除外されており、2010年分と比べると伸びが鈍い。2013年以降はそれら特殊事情も無くなったため、多少のぶれは生じているものの、伸び方はこれまで通りのものとなっている。また2016年分では熊本地震の影響を受け、熊本県の調査が行われておらず、その分の減少が見て取れる。

今世紀に入ってからのみの動きを見ても、単身世帯は約684万世帯・核家族は413万世帯ほど増え、三世代世帯は276万世帯ほど減っている。世帯構造の変化の足音がはっきりと聞こえてくる。

比率構成比でさらに確認する、世帯構成の変化


これを全世帯に占める、各種世帯の比率推移で構成したのが次のグラフ。こちらも21世紀に入ってからのデータのみを抽出したグラフを併記する。

↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比
↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比

↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比(2001年以降)
↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比(2001年以降)

この50年ほどの間に三世代家族の比率は15%ポイントほど減少し、その分単身世帯や核家族世帯が増加している状況が把握できる。構成比で見ると核家族世帯よりも単身世帯の増加率が大きく、未婚の人が増加しているようすが容易に想像できる。

また、1990年前後までは比率において「単身世帯…横ばい、むしろ減少」「核家族世帯…増加」だったのが、それ以降は「単身世帯…漸増」「核家族世帯…横ばい」となり、1990年ぐらいを境に、世帯構成のトレンドが核家族から単身世帯にシフトしていくようすが把握できる。晩婚化、未婚化に加え、高齢者の単身世帯の増加といった、いわば「先進国病」的な社会構造上の変化が、このタイミングで顕著化してきたと考えれば、道理は通る。ちなみに日本の高度経済成長が終わったのも、ほぼこの時期である。

最後に、世帯数変移を単純に折れ線グラフにした図を作成しておく。

↑ 世帯種類別世帯数(折れ線グラフ、万世帯)
↑ 世帯種類別世帯数(折れ線グラフ、万世帯)

全体に占める比率では減少を続ける三世代世帯だが、実のところ絶対数は急激な減り方はしていない(漸減と表現できる程度)。核家族世帯と単身世帯の増加で総世帯数が増加の一途をたどっているため、相対的に比率上において減少著しいように見えるだけの話である。しかし一方で、確実にその数を減らしていることも間違いない。また、直近2022年における単身世帯の増加ぶりが、イレギュラー的なものであることも確認できる。



核家族の増加は地域コミュニティの変化、子育てに関する問題を顕著化する。祖父母に育児の一部を任せられない夫婦の時間は制約され、婚姻世帯における共働きの加速化や待機児童問題へも連動しうる。また単身世帯の増加は結婚・少子化問題、そして世帯ベースでの貧困問題や健康事案に係わる安全性にも影響を与える。

それだけに、これらの値の変移は多様な社会情勢の動向とあわせ、注意深く見守り続けねばならない。そしてその動きが発しているシグナルを正しく把握し、対処法を考察し、断固たる手を打つことが求められている。

グラフや数字の内なるメッセージをどのようにとらえて判断するか。一人ひとりが考えて欲しいものだ。


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