仕事ありの母親は3/4強・2001年比で23.2%ポイント増…末子の年齢別「仕事ありの母親の割合」(最新)

2023/09/10 02:42

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2023-0830厚生労働省は同省公式サイトで2023年7月4日に、令和4年版(2022年版)となる「国民生活基礎調査の概況」を発表した。この調査は国民生活の基本事項を調査し、各行政の企画や運用に必要な資料を収集する目的で行われ、毎年1回更新・公開されている。今回はその中から「末子の年齢階層別に見た、仕事を持つ母親の割合」について、状況の把握・精査を行うことにする。子供を抱えた共働き世帯の現状はいかなるものとなっているのだろうか(【発表ページ:令和4年 国民生活基礎調査の概況】)。

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子供が成長するに連れ有職女性比率も増加する


今調査の調査要件および注意事項は、先行する記事【世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説済み。そちらを参考のこと。

夫婦世帯においては多分にして世帯主(調査の際に世帯側から、年齢や所得にかかわらず「世帯の中心となって物事をとりはかる人」として申告された人)は男性=夫、そして女性=妻は配偶者となる。昨今では逆のパターンもあるが、比率的には「あまり」深く考慮しなくてよい。

世帯主のみの収入では経済的に不安を覚える世帯では、子供がいる場合でも妻がパートなどで家計を補助する必要が生じてくる。いわゆる共働き状態になるわけだが、その実情を類推できるのが今回の「末子の年齢階層別に見た、仕事を持つ母親の割合」。

これは児童(18歳未満の未婚の人)である子供がいる世帯において、母親が仕事をしているか否かの比率を示したもの。例えば2022年の総数は75.7%なので、「末子が児童の世帯のうち、75.7%では母親が(も)働いている」ことになる。

↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別)
↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別)

グラフ上では反映されていないが今世紀初頭の2001年の値と比較すると、末子の年齢で多少の違いはあるものの、大体10-40%ポイントの増加が見られる。増加原因についてはさまざまな事柄が推測できるが、あえて主要なものを列挙するとすれば、まずは支出の増加と収入の減少、そして生活意識の向上によるものと考えられる。また核家族率が増加する(三世帯家族が減る)ことで、子供を持つ夫婦の生活が厳しさ(金銭面・育児面)を増しているのも一因。加えて、女性の社会進出に対する意識の変化が進み、女性が仕事をすることへの抵抗感が薄れたのも理由の一つだろう。さらには景況感の変化に伴い、共働きができる労働市場の上での供給増加も要因として挙げられる(共働きのパートをしたくとも、行動範囲内での求人が無ければ就業はできない)。

子供の年齢が上がるとともに母親の有職率も増加していく。末子が高校生にもなると(該当年齢の児童を持つ世帯のうち)8割強の母親が仕事を得て働いている計算になる。一方で0歳児でも6割近くの母親が働きに出ているが、これは以前【仕事を持ち乳幼児がいる母親、日中は誰に育児を任せる?(最新)】で記したように、父親、保育所や保育施設、そして祖父母が育児をサポート・手伝っていることになる(今件項目は国民生活基礎調査において3年おきに実施される、いわゆる「大調査」の調査項目)。

「今世紀初頭からの『仕事ありの母親の割合』」の増加傾向を見ると、おおよそ末子の年齢が小さいほど伸び率・増加ポイント数が大きい。例えばゼロ歳児では141%の増加(141%ポイントではない)、15-17歳児では20%の増加となっている。元々の値が小さかったのも一因だが、同時に「子供が小さくても働きに出なければならない(経済上)」「出たい(女性の意識上)」「出ることが可能な環境が整った(保育所などの整備)」が、増加を後押ししたものと考えられる。

子供がいる「働く女性」における正規・非正規率


次に示すのは子供がいる世帯において、就労している主婦の正規社員・非正規社員率。これらのどれにも該当しない女性が、専業主婦となる。非正社員は概してパート・アルバイト。また出産前に正社員として勤めていた会社に、嘱託として勤務する場合もありうる。「その他」は会社・団体などの役員、自営業主、家族従業者、内職、その他、勤めか自営か不詳および勤め先での呼称不詳などが該当する。

↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別・就業形態別)(2022年)
↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別・就業形態別)(2022年)

子供が大きくなるに連れてかかる手間も少なくなり、正社員としてフルタイムで働ける条件も整ってくる…との想像をする人も少なくないが、現実にはむしろ逆で、子供が小さい方が正規社員率は高い。子供の年齢が上になるに連れて非正規社員率は大きく増え、全体としての仕事のありの割合を底上げしていくことになる。

子供の年齢が上になるに連れて正社員率が低くなるのは、手間がかかりにくくなっているとはいえ、子供に何かトラブルが生じた時の対応のしやすさ、時間拘束や距離感の問題がネックになっているのだろう。さらには就労そのものが難しい正規社員としてよりは、就労しやすいパートなどの非正規社員として雇われることで、ともかく金銭的な家計の補完が最優先されると考えれば道理は通る(子供の年齢が上の方が養育費は大きなものとなるので、家計の切迫感は大きいものと思われる)。いわゆる「主婦の就労事情」が透けて見えてくる。

この正規社員・非正規社員率について、前回調査年分となる2021年からの変移を算出したのが次のグラフ。

↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、前年比、末子の年齢階層別・就業形態別、ppt)(2022年)
↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、前年比、末子の年齢階層別・就業形態別、ppt)(2022年)

201年から2022年にかけての動きでは、おおよその年齢階層で非正規社員の値が減り、正規社員の値が増えている。仕事ありの値が増えただけでなく、その内容も正規社員が増える形となっていると見てよいだろう。


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