20歳未満は7%・50歳以上は36%…コンビニ来訪客の年齢階層別分布(最新)

2023/08/21 02:45

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2023-0820少子化と高齢化の人口構成の変化、さらに昨今では大量の団塊世代の定年退職に伴い、小売業界各方面でも商品やサービスの高齢層への注力度の引き上げの動きが見られるようになった。小売店舗でも高齢者の買物風景を見る機会が増えたと実感する人は多いはず。今回はセブン&アイホールディングスが毎夏に最新版の公開を行う、同グループ企業各社の動向をまとめた【コーポレートアウトライン】の最新版(2022年度版)などを用い、セブン-イレブンを具体例としてコンビニ来訪客の年齢階層別分布について確認をしていくことにする。

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セブンイレブンではPOSシステムのデータを活用し、「来店客調査」などの情報を逐次収集し蓄積している(【セブン銀行とは?>お客さまの声から生まれた銀行(セブン銀行の言及ページ)】)。しかしこれは当然のことながら内部データのため一般公開はされておらず、大本のデータを取得することは不可能。だがそのごく一部はコーポレートアウトラインで公開され、その内容を知ることができる。先日発表された2023年2月期(2022年度)版のをはじめ、各年の資料を用いて取得可能な限り過去の値を逐次収集し、作成したのが次のグラフ。同時に総務省統計局の【人口推計】を基に、該当年分などの日本の総人口の年齢階層別人数比率を加え、まとめている。

↑ 来店客の年齢階層別構成比(セブン-イレブン)
↑ 来店客の年齢階層別構成比(セブン-イレブン)

セブン-イレブンの非公開な内部データではもっと具体的な値があるに違いない。しかし公開データを調べた限りでは「年度の歯欠け」「年度によって%の表記が整数値まで」(今件グラフでは表示を統一するために、すべて整数化している)と、かなり精度の荒いものとなってしまった(直近でも2010年度以降2年おきの値が非公開、さらに2019年度の次の公開は2022年度だった)。しかし状況は十分につかみとれる。

状況をざっと箇条書きにすると次の通りとなる。

・コンビニの来店客は高齢化しつつある

・人口構成比と比較するとコンビニの来店客は20-40代の比率が大きく、20歳未満と50歳以上が小さい。コンビニは主に成人若年層から中年層が多用している実態が浮かび上がる。

・コンビニ来店客の高齢層の増加傾向は人口そのもののの高齢層化、比率の変化と比較すると、増加する動きそのものは似ている。ただしこの数年に限るとコンビニ来店客の高齢層比率はほぼ横ばいに。

・20代までの「コンビニ離れ」傾向が顕著化。

・20歳未満は2007年度を底に、わずかずつだが再び増加の気配があったが、2013年度以降は急速に減少している。2019年度以降はいくぶんの回復。

・公開されている範囲での直近となる2022年度では50歳以上は36%。コンビニに3人来客があれば1人以上は50歳以上。また前回年度の2019年度と比べると大きな変化は無し。

若年層のコンビニ離れ傾向は顕著で、年齢階層別構成比で見ると、20歳未満と20代の構成比を合わせても、この30年あまりで1/3強となっている。長きにわたりリピーターとなりうる新しい若年層の利用がやせ細っているのは懸念材料には違いない。【スーパーの圧倒感、高齢者も少しずつコンビニを…単身世帯の過去25年間にわたる食料買い入れ先の移り変わり(最新)】などを見ると、若年単身者の食料品購入先としてのコンビニは、支出額構成比率が今世紀に入ってから減少する傾向があり、関連性が浮かび上がる。

他方40代以上の区切りで見ると、この層の割合は増加(2017年度以降はほぼ横ばいだが)。【100円ショップ来訪客の世代】で紹介した100円ショップの「高齢者の来客頻度の高さ」と比べるとほぼ同じで(100円ショップでは40代以降で約6割を占めている)、興味深い値には違いない。

さいきんの動向を見るに、2013年度から2017年度にわたる「20歳未満層の急減」が目にとまる。比率の上では2007年度から2011年度にかけてゆるやかな増加にあり、「若年層のコンビニ離れ」との言葉が当てはまらない状況だった。この増加の理由としては「若年層向けのスイーツや食玩系アイテムの多数展開」「IT系サービスの導入」などいくつかの要因が考えられる。

ところが2013年度以降はその期待の星的存在の20歳未満の構成比率が減るトレンドに転じ、特に2015年度は前回分2013年度比で4%ポイントも低下する結果が出てしまった。2019年度では20歳未満はプラス3%ポイント、20代もプラス1%ポイントと、流れに反して増えているが、単なるイレギュラーか、新型コロナウイルス流行による変化の可能性がある。もっともそれでも、コンビニに14人の来客があった場合、20歳未満はそのうち1人でしかない。

高齢者の比率増加の動きは、団塊世代の定年退職に伴うプライベート時間の増加によるコンビニ利用機会の増加、「買い物困難者」対策の意味合いも持つ(高齢者の人口比率が高い)地方へのコンビニの積極進出、各種サービスの多様化など、色々と(後付ながらも)説明ができる。しかしながら20歳未満の急速な減り方は(単純な人口構成比と比較しても)理由付けを探すのは難しい。カウンターコーヒー、そしてそれに連動する形によるドーナツなどの洋風粉菓子の積極的な導入、子供向けの商品(カードゲーム用カードや特典系景品)の展開で、子供のみ、あるいは親子連れの形で20歳未満の来客増加の機会は色々と整備されているのだが。



今回データを精査するにあたり、併記されている数字を基に二次的な値を算出したのが次のグラフ。各階年齢層ごとに「全体比」ではなく具体的な人数を算出したもの。年度によって取得できる比率が整数までのために「ぶれ」が生じてしまうのは否めないが、そしてデータが一部欠けているために横軸の「年度」が等間隔ではないが、大まかな動きはつかみ取れる(2017年度分以降は一部平均来客数が非公開のため、その年度では公開されている値をベースに概算で算出している)。

↑ セブン-イレブンにおける年齢階層別来客数(1日1店舗あたり、概算、人)
↑ セブン-イレブンにおける年齢階層別来客数(1日1店舗あたり、概算、人)

元々コンビニの主力客だった20歳未満と20代だが、前世紀末から漸次来客数を減らしていく。その年齢階層の人口そのものの減少も一因だが、それ以上に「コンビニ離れ」も少なからぬ要因と考えられる(同層の単純人口はこれほど急激には減っていない)。一方で30代以降は少しずつ数を増やし、特に50歳以上の伸びは急上昇のカーブを描く。そして2008年度には他の年齢階層を抜き、「50歳以上の来客数が一番多い」状態になる。

他方、2019年度以降から来店客数そのものにおいても、各年齢階層で減少の動きが生じている。2019年度では19歳以下と20代は増加したが、2022年度ではその動きは続かず、全年齢階層で減少。特に50歳以上の減り方が著しい。新型コロナウイルスの流行による外出忌避が影響しているのだろうか。

コーポレートアウトラインの最新版でデータが更新されていた、来店頻度の実情は次の通り。

↑ 来店頻度(セブン-イレブン)(2022年度)
↑ 来店頻度(セブン-イレブン)(2022年度)

毎日足を運ぶ人が16%、週4-5日が17%、週2-3回が31%。週1以上では83%となる。コンビニでは単に商品を購入するだけでなく、ATMで入出金をしたり、公共料金の支払い手続きをしたり、チケットの購入・予約をしたり、さらに最近では多機能化が進んでいるマルチコピー機でコピーやファックス、公的文書の受け取りに使うなど、多様なサービスを利用することもあるため、来店頻度は高くなるのだろう。

コンビニ(今件はセブン‐イレブンを対象としているが、他のコンビニも大きな違いはないだろう)はすでに40代以降が主役となっているのが実情。そして人口構成比を見れば、今後も40代以降、特に50歳以上の来客比率が増加するのは容易に想像ができる。昨今のコンビニにおける数々の商品展開、例えば和菓子系食品の積極開発、おつまみ系食材の提供開始、宅配サービスのスタートなどの動きを見ると、「常に目の前の、そしてこれからのお客を見ている」との点で、納得も行く次第ではある。


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