電通ではプラス17.4%・震災の反動で「雑誌」が大きく伸びる(電通・博報堂売上:2012年6月分)

2012/07/11 12:00

[博報堂DYホールディングス(2433)]は2012年7月10日、同社グループ主要3社の2012年6月における売上高速報を発表した。これで[電通(4324)]が同年7月6日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2012年6月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、広告全体及び両社それぞれの広告売上動向を眺めてみることにする。

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グラフ生成のために用いたデータの取得元に関する解説、各項目に関する留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で記述している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2012年6月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2012年6月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震・震災による直接的な広告費(額面)のへの影響は、数字の上ではほぼ終息。そして現在では震災以前からの広告業界・メディアの流れ「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っているが、テレビがやや戻しの動きを見せる」「デジタル系、屋外広告などの非4マス系の一部が堅調」的状況がそのまま継続する動きが見受けられる(これは後述するように一昨年比の試算で分かる)。

一方で6月分の特徴としては、3月以降からの流れにもあるように、一部で大きなプラスへの動きが確認できる。これは一年前の記事で解説している通り、昨年同月が東日本大地震・震災を起因として大きなマイナス値を示したのが原因。それと比較した結果のため、リバウンドで大きくプラスに振れた影響によるもの。例えば2011年6月分では4マス中「雑誌」が一番大きな減少ぶりを示していたため(インクや紙の不足、流通網の混乱などで発売間隔が変更になった雑誌すらあった)、今回はその反動で「雑誌」が大きく伸びている。

参考値として電通における「一昨年前の値」との比較を算出し、グラフを生成する。基準値を設定してその値に「前年における前年同月比」「今件の前年同月比」を順番に掛けただけだが、各項目の実情が良く分かる結果となっている。

電通2012年6月度単体売上(前々年同月比)
↑ 電通2012年6月度単体売上(前々年同月比)

大きく下げた前年同月との比較にもかかわらず今回も下げた「ラジオ」や「新聞」はもちろんだが、今回上昇した「雑誌」「テレビ」ですら、昨年の下げを補完しきれていない。震災の影響が根深く状況復帰するまでには至らないのか、あるいはそれより前から継続している4マスの漸減状態の影響によるものか。多分にその双方によるものとは思われるが、今回発表分データだけでは、断じることは難しい。

今月は先月に続き震災の反動もあり、両社合わせると前年同月比でプラスなのは全部で12項目と多め。先月同様、両社の4マスやインターネット回り以外で堅調な動きを示す項目も少なくない。直上のグラフ(前々年同月比)を見れば分かるように、この分野が成長株として注目に値する動きを見せているのが把握できる。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値について説明しておくが、これは「個々の会社の前年同月比」であり、額面の絶対額を意味しない。例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、電通の方が上となる。

電通・博報堂HDの2012年6月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2012年6月における部門別売上高(億円、一部部門)

電力需給のひっ迫感は相変わらず。むしろ原発の発電状況と火力発電の稼働率(の高さによるトラブルリスク)、その他発電様式のメンテナンスリスク・災害時の休止リスクなどから、今夏は西日本地域における昨年以上の電力供給力不足が生じる状況下にある(【関電管轄に15%節電「要請」…今夏電力需給対策発表】などにもある通り、すでに「節電要請」が発動中)。そのような電力事情を見越してか自動販売機や電灯など、電力を常用する公的あるいはそれに準じる施設・機器では、加速度的に節電機能が開発、搭載される動きが見受けられる。

新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ」もまた、地震直後のような「すべて全面オフ」という状況からは復帰しているものの、積極的な節電の「雰囲気」は深く浸透し、以前ほどの活力・積極性は見られない。「全国規模で」電力浪費(「に見える」「叩かれやすい」)による非難リスクを自然に避ける、自主規制をする傾向がある。各小売店でも昨年以上・過剰とも見えるまでの節電状況を随所で確認されている(マーケティングの上では確実に売上にマイナスの効果が出るような場合すらある)。

そのような状況なら電力消費をほとんど伴わない、従来型野外広告に注目が集まるのは自然の流れ。昨今の「4マスとネット以外の堅調さ」も、社会的状況が影響しているものと考えられる。

今後は従来型・4マス・ネットそれぞれの長所を上手く流用・活用・併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、「慣習だから」との理由だけで効果の無い・薄い手法にとらわれることなく、コストパフォーマンスの高い、そして同時に効果が分かりやすい広告手法が求められる。本来なら自然の流れとして発するべき、アイディア面で優れた広告に注目が集まり、採用され、トレンドとして消費者の目に留まる機会が増えてくる。その動きはすでに見え始めている。


■関連記事:
【関電夏期のピーク時の電力需給推移を時間ベースで】

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