ラジオのみ低迷が続く、テレビは22.4%ものプラスに(経産省広告売上推移:2012年7月発表分)

2012/07/11 06:55

経済産業省は2012年7月9日、特定サービス産業動態統計調査において、2012年5月分の速報データを発表した。それによると、2012年5月の主要メディアにおける広告費売上高は前年同月比でプラス19.3%と増加していることが明らかになった。主要項目別では「ラジオ」がマイナス2.8%と、もっとも低迷しているのが確認できる(【発表ページ】)。

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今記事のデータ取得元や選択項目の詳細に関しては記事の一覧【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】の中で解説している。そちらで確認してほしい。今記事はその2012年5月分データ(公開は2012年7月)の速報値を反映させたもの。なおそれより前のデータについては、速報値の後に発表される確定値で修正されたものを用いている。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2012年4-2012年5月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2012年4月-2012年5月)

比較しやすいように先月発表データと並列して図にした。今回月では前回月同様に「ラジオ」を除いた主要項目すべてで前年同月比にてプラスを示している。特に「雑誌」「テレビ」の伸び方が目立つが、同項目は1年前の同月における「前年同月比」ではそれぞれマイナス24.0%・マイナス13.0%を示しており、その反動を受けてのものと考えられる。これらの1年前の大きな下落はもちろん東日本大地震・震災を起因としたものである。

そこで先月に続き、「前年同月」が震災起因で大きく下げた値の反動値となり、状況を正しくつかめないリスクを回避するため、「前々年同月比」も算出し、グラフを作成する。今回の場合は2010年5月の値との比較となる次第である。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費前々年同月比(2010年5月→2012年5月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前々年同月比(2010年5月→2012年5月)

「インターネット広告」の伸びは順当として、「テレビ」が大きな伸びを示しているのが目に留まる。伸び率はそこそこだが額面が大きいので、広告売上全体に与える影響も大きくなる。

今回も該当月における各区分の具体的売上高をグラフ化しておく。電通や博報堂の区分とは違うため、該当同月の両社データとの違和感を覚える部分もあるだろうが、参考値の一つとしてとらえてほしい。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2012年5月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2012年5月、億円)

金額面で見ると昨今では何度か「新聞」を抜き、主要5項目では「テレビ」に次ぐポジションを得る機会を持つようになった「インターネット広告」(【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(月次・-2011年12月版)】)。今月発表分は先月分から転じて、「新聞」が「インターネット広告」に競り勝つ形となった。「追いつ追われつを繰り返しながら」とは最近両者の金額動向を評する際に使っている言い回しだが、今回月はまさにその通りの動きとなった。

次に、公開されているデータの中期的推移をグラフ化する。インターネット広告のデータが掲載されたのは2007年1月からなので、それ以降の値について生成したのが次の図。

月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2012年4月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2012年4月分まで)

大勢としては「インターネットは激しい起伏の中で2009年後半以降は回復、プラス圏を維持」「テレビは2010年あたりから戻しの雰囲気」「ラジオはマイナス圏で低迷-やや下げ幅を縮小」「雑誌はかなり厳しいレベルの下げ幅を継続していたが、ここしばらくは復調の雰囲気も」という傾向を見せてい”た”。そして東日本大地震・震災による影響で2011年3月分から、グラフは大きなうねり・変移を起こしている。

今回月は「雑誌」「テレビ」が(反動とはいえ)大きく伸び、「インターネット広告」「新聞」も戻しを見せたのをはじめ、多くの項目が基準値のプラマイゼロを超えており、雰囲気的には良い状況にある。ただし前述の通り、震災後の大幅下落の反動もあるため、単純に「前年同月比で良かったから業界全体も成長が見込める」との判断は難しい。むしろ震災起因の反動下においてもマイナスを継続している「ラジオ」に憂いを覚えざるを得ない。

元々紙媒体の電子媒体への一部移行と適正な住み分け(紙媒体のすべてが電子媒体に移行するわけではない。紙媒体にもメリットは多い)、電波媒体の広告プラットフォームとしての立ち位置の正当評価は、メディアの技術進歩や需給関係の変化と共に、漸次進行する。日本の場合は諸外国と事情が異なり、既得権益を悪と決めつけ、それを「打破すべし」と語る報道メディア自身が大きな既得権益を握り、守り通そうとする動きが各所で大規模に見られ、結果として各メディアの「立ち位置の正常化」「世界の流れに追随する歩み」は遅れているのが現状(もっとも前者はともかく後者は、すべての面で単純に世界の流れへ追随することが正しいのか否かは別の話)。

一方で東日本大地震・震災とそれに伴う各種震災・人災、そしてその後の消費者の中に芽生えた心理変化は、広告出稿側のコスト意識の変化(多くは費用対効果の厳粛・厳密化)、地震報道などで一部ながらも露呈した各媒体の「真の価値」への、視聴者・広告主による意識の移り変わりのきっかけとなり、広告業界ですらも一部軌道修正の上で、全体における変化の「時計の針」を押し進めている。この「動き」は目立ったものではないが、少しずつ、確実に人々のライフスタイル、そして広告業界にも影響を及ぼしていく。

また直近の動向としては、夏に向けて(地域によって)昨年以上の電力需給問題が発生しており、これに伴い広告出稿・方向性にも多分な変化が生じうる。どの項目にどれだけの影響が生じるのかは、今後の動きを見極める必要がある(節電関連の広告出稿は伸び、電力を多分に使うイメージの強い媒体への出稿は減るものと想像される)。さらに先日【アマゾン、日本国内での「Kindle近日発売」を発表】【電子書籍リーダー「Kobo Touch」を7980円で販売…楽天、グループ会社のKoboの日本国内での事業開始を発表】と海外では主流派機種の電子書籍リーダーが相次いで日本国内での発売を正式発表しており、「雑誌」という媒体が持つ広告の影響力や広告出稿動向にも少なからぬ影響が生じるもであろう状況が発生している。

今後も電通・博報堂の月次レポートの分析と共に、特定サービス産業動態統計調査の結果の追跡に傾注し、メディアと広告の状況変化の移り変わりのチェックをお勧めしたい。単月ではつかみとれないことが、数か月、数年の流れを見て行くうちに、頭にイメージされるに違いない。

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