円高と、電力不足懸念と…2012年6月景気ウォッチャー調査は現状低下・先行きも低下継続

2012/07/10 12:10

内閣府は2012年7月9日、2012年6月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて減少し、水準値50を切る結果となった。一方先行き判断DIも先月から継続する形で減少し、50を切っている。結果として、現状低下・先行き低下の傾向を示している。基調判断は「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」とし、先月発表分よりさらに景気の停滞、あるいは後退の気配が感じられる結果となっている(【発表ページ】)。

スポンサードリンク


プラス要因の一服感と、円高と、電力不足懸念と
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2012年6月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス3.4ポイントの43.8。
 →3か月連続の低下。「やや良くなっている」が大幅に減り、「やや悪くなっている」が増えている。
 →家計では天候不順で季節商材の売り上げが低迷、乗用車需要の一服感などを受けて低下。企業も円高に伴う受注の減少から低下。雇用は製造業の求人増加に一服感があり、低下。

・先行き判断DIは先月比でマイナス2.4ポイントの45.7。
 →復興需要の期待がある一方、夏の電力不足への懸念が高まり、消費税に対するマインド低下懸念、円高への懸念に伴う先行き不透明感が積上げられ、全部門で低下。
今月も先月に続き現状・先行き共に低下したが、その原因が双方とも「昨月までのプラス要因がひと段落ついたこと」「円高」、さらには「電力不足」「消費税」など(ほぼ)確定事項を起因としているのが気になるところ。また先月ほぼ同じ言い回しだった要件に関して、先月は「伸び悩み」だったものが今月は「減少」となり、状況が悪化している様子がうかがえる。

下落明確化、下げトレンドほぼ確定
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分も先月から引き続きキレイに全項目がマイナスを示しており、明らかに雰囲気が悪化した状況が確認できる。雇用関係はかろうじて基準値50超を維持しているが、それ以外は全項目で30-40台となってしまった。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2007年夏以降の「金融危機」ですでに下落傾向が見られたが、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやくその動きも落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。

そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。この数か月は地味な動きながら再上昇の気配を見せていたが、今月は2か月前の「気配」から先月の「具体的動き」に続きマイナス側への流れを継続、当然合計値は50を切る形を続けている(雇用関連はかろうじて50超を維持)。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
そして低迷から再浮上、再下落へ。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」の方が適切な表現といえる(この状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

2011年夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、今年に入ってからは円安などを背景に再び伸びの気配があった。ところが5月になると欧州債務危機の懸念再来に伴う円高・景気の後退、そして夏に向けた電力不足の具象化というマイナス要因が積み重なり、半ば期待されていた「2003-2004年の動きに近い形」「50超の状態で安定」が吹き飛んでしまったのが分かる。

景気の先行き判断DIも先月から継続して下落している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい「雇用関連」だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月の58.7が天井。今月はといえば、先月から続いて下落し、さらに基準値50への割り込みをうかがう気配となった。プラスなのは皆無、プラスマイナスゼロは「住宅関連」のみで、これは先月はプラスだった項目。マイナス値を見せた項目は家計動向で3-4%の下げ幅を先月から維持しており、さらなる下落が懸念されるのが気になるところ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数の意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる(一時期は「各DI値が1ケタ台に突入するのでは」とすら思われたほど)。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほぼ変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてこの数か月は基準値50付近をうろうろとする動きが続いている。多分に為替レートに反応する傾向が強く、今月も円高の影響を受け、さらに電力や消費税などのマイナス要因が積み重なり、値を下げた感はある。

円高、電力不足、消費税…積み重なる懸念材料
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・今月は前年比約30%増となっている。地元客と復興支援の客が半々である。主に建設関係と公的機関、団体で、特に1泊可能な関東圏からの客が多くなっている(観光型ホテル)。
・クリアランス期間の変更や天候の影響で金額、来客数共に減少しているが、買上単価が改善している(百貨店)。
・エコカー補助金制度の効果も大分薄らいで問い合わせも減少しており、それに伴って販売台数も減少傾向にある(乗用車販売店)。
・昨年の東日本大震災以降、節電に向けての夏対策商材が売れたが、今年は新たに追加して買い求める動きがない(スーパー)。
・一進一退の流れが、台風4号の直撃による大ブレーキで急激に悪化した。その上、衣料品部門は、夏物の値下げを遅らせるブランドがあるため、セールのスタートが分散化している(百貨店)。
・週末ごとの悪天候や台風の影響で、前年と比べると飲料やアイス、ファーストフードを中心に売上は大幅に落ちている。梅雨明け後の最終週は前年並みに推移しているが、天候に左右された売上のカバーには至らず、収益面も悪化している(コンビニ)。

■先行き
・今年は節電の夏と言われている。今後3か月の長期予報は平年並みとなっているが、7-9月における節電で、計画停電が発生した場合、小売店としては大変な事態になる。また、ある程度暑くならないと、7月のクリアランス商品の動きも先が見えない(百貨店)。
・消費税増税の議論が大きく取りざたされ、少なからず消費マインドに影響が出る。また、今夏は衣料品のクリアランスセールを例年に比べて全体的に遅くするなどの施策から、先が見通せない状況にある(百貨店)。
・ボーナスの前年割れや、消費税増税など、消費者は再度節約を意識するマインドになりつつある。大手小売店の値下げ攻勢もこうした動きを先取りしており、全体的に消費を取り巻く環境は厳しくなりつつある(スーパー)。
・エコカー補助金の効果で動いていた流れは、補助金の終了後は一気に止まることが懸念される(乗用車販売店)。
などとなっている。状況の改善を喜ぶ場面もあるが、エコカー減税の終了、円高や電力回り、消費税など政策にまつわる話はその多くがマイナスとして話が進んでいる。円高と電力はダブルパンチの形で製造業にダメージを与えており、さらに消費税が消費者への大きなマインド減退を呼び起こしているようすがうかがえる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
復興需要への期待以上に
電力不足と円高への
懸念が重しに。
2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「2011年の震災前における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を(中心では無く)天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車の利用コストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流経費のアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていた。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、それを起因として生じる間接的な不安要素(流通不安や生産力の低下、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安など)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」雰囲気を覚えさせる。

これは端的な表現をすれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表せる。特に一般社会経済行動において中心的な存在となる、中堅女性層に著しい。さらにそれを(悪用する形で)「機会」ととらえ、煽動などを繰り返して自らの懐を温める者も多数登場しており、これが社会全体の不安を一層募らせ、経済活動を委縮させる要因の一つにもつながっている。

「震災による中期的な不景気が発生しうる可能性」という言葉はすでに過去のもので、もはや「実体化」している。震災前から不景気の状態にあったため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。

半年近く前から続いていた一時的な回復基調は、多分に「行き過ぎた円高がいくぶん戻した」ことによる、リバウンド効果でしかなった。実際には4月下旬から欧州債務危機の再燃とアメリカの景気後退(むしろ回復の兆しが兆しでしかなかった可能性)に伴う円高が大きく進行。さらに夏の電力不足への不安(とそれに対応すべき国や自治体の迷走への不信感)が急速に高まり、今回現状・先行き双方にその反応が現れた形ではある。

震災経験を元にした災害対策に関しては、多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた、煽動的・感情的な論議が行われている。今般の経験を有効に活かす手立てを講じ(可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので)、そして状況の鎮静化を祈りたい。さらに数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題といえる。これ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求められる。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が上から下まで跳梁跋扈している昨今においてこそ、本当に「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していく。その流れに世の中が従えば、回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示す動きを見せるに違いない。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー