油脂が再び大きな下げ、前月比マイナス5.6%(2012年6月分世界食糧指数動向)

2012/07/07 12:00

以前の記事で、国連食糧農業機関(FAO)発表が公式サイト上で発表している【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けていることをお伝えした。これは1990年以降にFAOが世界の食料価格の変化を食料価格指数として発表しているものだが、この高値維持状況は、昨今の各種商品市場の動向や政治情勢を判断する際に、大きな検証材料となりうるものである。そこで当サイトでは定期的にデータの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2012年6月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元および用語の解説は、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認の程、お願いしたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。


↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年6月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

昨年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。だが前回5月分からは再び大きな減少を示し、その傾向は今回6月分も継続している。

その他に目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、昨今はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年6月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作が伝えられたのをきっかけにする反動の結果。しかし価格上昇の原因である需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300超)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況ではない(今月は先月に続きそのラインを割り込んだが)。

今回計測月となる2012年6月においては項目によって幅に違いがあるものの、一様に下げの傾向を見せている。この事由については経済動向の不透明感の強まり(景気が悪化すれば食料需要は減り、値は下がる)、十分な供給量の確保などを起因としている。一部で悪天候による不作への懸念が底値を支えているもの、全般的には下落の勢いの方が強い。6月の総合指数201.4(暫定値)は昨年同月の233.4と比べれば1割超の下げ幅で、昨月と比べても3.6ポイントほどの下落を示している。これは特に油脂をはじめとする複数項目での項目での大幅な下落が起因。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年6月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年6月)

直近月の前月比では油脂が大きな下げ幅を見せており、それ以外の項目も一様に下げている様子が確認できる。そして前年同月比では食肉以外は1割超え、乳製品に至っては2割強も下げている。砂糖はもともと価格変動幅が大きいため、前年同月比で2割近い下落でもさぼと気にすることはない。だが乳製品はすでに2009年後期あたりの水準まで下げており、今後の動向には注意を要するかもしれない。

リリースでは今月の動きについて「穀物価格では、天候不順が相場を不安定な状況に。トウモロコシの価格上昇分は小麦の下落を支える形となった。米価格は安定的」「油脂価格は大きく続落中。原油の需要・原油価格の下落から連鎖する形での下げ要因が大きい」「乳製品ではバターや粉ミルク(ぜいたく品の類)が大きく下げた」「砂糖ではインドやEU、タイなどの豊作予想による供給過多懸念、原油価格の下落が下げる要因となった。一方で最大の輸出国ブラジルの不作懸念が値の下げ方を最小限にとどめさせている」などと説明している。供給過多によるだぶつきは天候など自然環境の変移に伴う事象であり、人間の手が及ぶ範囲は限られている。だが、景気後退による需要減退で需給バランスが崩れて値が下がる動きは、一概に喜べないものがある。

今年に入ってからは砂糖など一部を除き再び上昇の気配があったが、今回6月では乳製品・油脂を全項目で下落が見られた。特に油脂については前年同月比1割強、前月比でも5ポイント強のマイナス、乳製品は前年同月比で2割強という大きな下げ幅を示している。需給バランスの調整も含めた市場の再構築過程にあると説明されていることから、価格の平常化にはしばらくの時間を要するだろう。

食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。その観点からすれば食料品の価格下落は好ましい話ではある。しかし下落も度を過ぎると作り手側の負担が大きくなり、供給力上の不安が生じかねない。バランス感覚が必要で、なかなか調整が難しい。



食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で加速度的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な要素が揃っている。このため、価格が安くなる要素を見つけにくい。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと同じである。

今回月は幸いにも大きな区分項目別では全項目で値を落としている。食料供給から見れば、社会の情勢安定化が進んだ感はある。もっとも単純に供給量の増加ならまだしも、需要量の減少が起因で、しかもそれが景気後退によるものである場合、「値は下がっても消費者一人ひとりの手取りも落ちて、結局一人当たりの食料確保量は増加しない」という、困った状況になりかねない。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動のすう勢も、食料価格の動きと小さからぬ関係がある。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な、今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。


■関連記事:
【世界の食料価格は8か月連続で上昇・1990年来最高値】

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