複数の国で状況の悪化を確認・若年層の失業率、スペイン・ギリシャ共に52.1%…EU失業率動向(2012年5月分)

2012/07/03 12:00

ヨーロッパ各国で特に高い失業率を見せるスペインでの(当時の)直近2011年12月分の値を以前分析精査した。これは【EU統計局(Eurostat)】内で毎月発表している、失業率関連の統計データを利用している。以降毎月、EU統計局の発表資料を元に最新情報の確認をしているが、今回はその2012年7月2日発表・同年5月分の値について各種グラフを生成更新し、状況の把握を行うことにした(該当リリース:【May 2012 Euro area unemployment rate at 11.1%(PDF)】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分を参考のこと。

ILO基準における2012年5月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則としてその前の月分のデータを代用している。

↑ 2012年5月時点での失業率(季節調整済)
↑ 2012年5月時点での失業率(季節調整済)

スペインは相変わらず2割強の値を示し、ギリシャもそれに続いている。たかだか一か月ほどで状況の大きな変化があろうはずは無い(概して悪化の方向を進んでいることに違いは無し)。そして、やはり債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置する状況を見ると、失業問題と経済・債務問題が密接な関係にあることが容易に推測できる。

今回も前回同様、前月(2012年4月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率については(次の若年層周りでも同様だが)、国によって細かい修正が過去にさかのぼって行われることが少なくない。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2012年4月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行う。またリリース上に掲載が無いデータに関しては、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算を行う。

↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年4月→2012年5月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年4月→2012年5月)(またはデータ最新一か月前→最新)

ギリシャは他国と比べてデータの集計に遅れが生じているため、実質的には2012年3月と2月の差異によるものだが、今回対象となった国の中ではもっとも大きな悪化率を示している(今グラフでは(失業率の)「プラス」は「悪化」を意味する)。またスウェーデンの0.3ポイント・ルーマニアの0.2ポイントの悪化をはじめ、複数の国で状況の悪化が確認できる(もっとも0.1-0.2ポイント程度なら誤差の範囲で、後日修正される可能性も高いので、実質的には0.3ポイントの増減を「注意すべき変化」と見るべきといえる)。

そして冒頭にあるように、特に問題視されているのが、若年層の失業率。25歳未満の失業率はEA17か国で22.6%・EU27か国でも22.7%を記録しており、5人に1人以上が失業状態。中でもスペインの52.1%、ギリシャの52.1%(2012年3月)を筆頭にポルトガルやイタリアなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国での高さ、急激に経済が冷え込んだ国の失業率増加が確認できる。

↑ 2012年5月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(5月データが無い国は直近分)
↑ 2012年5月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(5月データが無い国は直近分)

↑ 2012年5月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(5月データが無い国は直近分)
↑ 2012年5月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(5月データが無い国は直近分)

スウェーデンの若年層失業「率」が急激に悪化しているが、人口(900万人強)の少なさによる「ぶれ」の可能性はあるものの、詳細は不明(他国同様、経済状態・雇用市場の悪化によることに違いは無い)。さらに同国では全体の失業率は7.8%とEU諸国でも低い位置にあり、その3倍以上もの高い失業率が確認される若年層の雇用状況に、大きな問題があることは容易に想像できる(ちなみに同国の25歳-74歳における失業率は5.3%でしかない)。なお、いくつかの資料(一例:【青少年に関する調査研究等:ユースアドバイザー(仮称)の研修・養成プログラムの開発に向けた調査研究報告書】)によれば、同国の若年層対策においては企業側が対応しきれていないことや、予算不足、行政管轄間における意志疎通不足による連係上の問題などが指摘されている。

各国とも総じて若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得で比較的容易な作業」が機械化され、為替レート上で相対的賃金の安い新興国に割り振られるのが主な要因。

さらに債務問題で国レベルの財政が悪化しており、その対策として緊縮財政が取られていることも大きな要素。一般的に緊縮財政をとれば国内の産業が冷え込み、経済は低迷してしまう。当然、労働市場も緊縮する。その上、高齢化により就労年齢が上がっていることから、必然的に「席が空かない」状態になり、若年層が割を食う事態に陥っている。その上すぐには利益の上での成果が出ない「若年層の労働訓練・修練」は「即戦力にならない」「結果が出ない」とばかりに軽視されるため、若年層の立ち位置はますます悪化する。いわゆる負のスパイラル状態といえる。

また、意図してか、結果論なのかは判断が分かれるが、【欧州の若年失業問題の整理に役立ちそうな記事】の例にあるように、「高齢者優遇」「若者冷遇」の雇用対策の結果(「(既存)労働者」の権利を手厚く保護するため、業績が悪化しても容易に現行労働者の解雇はできず、必然的に若年層を雇う余裕はこれまで以上に無くなる)が、若年層の失業率増加の大きな原因の一つとなっている(これは日本にも当てはまる)。

労働市場、失業対策においては「他国と比べればマシだから我慢するように」では無く、「失業率の低い国々から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的かつ先行きが明るく見える政策が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。

一時は非難の対象にすら挙げられた、日本の「終身雇用制」。雇用される側の心理も合わせて考えると、社会構造・労働市場の方法論の一つとして、再評価を受ける時期が来ているといえよう。


■関連記事:
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2011年版)】

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