50年余りの間の映画館数の変化をグラフ化してみる(2011年分反映版)

2012/06/25 12:20

映画館先日から【過去一年間の映画館での映画観賞者4割強、若年層ほど多い傾向】などのように映画館周りの記事展開を続けているが、その中で映画館数の変化に関するデータを調べることが多くなった。そこでそのデータの大本である【日本映画産業統計】の内容を当たってみると、現時点では2011年分のものの収録が確認できた。そこで今回はそのデータを元に記事の更新を行うことにした。

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まずは映画館数の変移。後述するように、2000年以降はスクリーン数でカウントしているため、厳密には連続性が無いことに注意。

↑ 映画館数(スクリーン数)
↑ 映画館数(スクリーン数)(-2011年)

シネコングラフ中にもあるが、2000年までは「映画館数(=スクリーン数)」なのに対し、2000年以降は「映画館スクリーン数」に計測対象が変わっている。これはスクリーンが一つしかない通常型映画館に対し、いわゆるシネコン(シネマコンプレックス、同一施設内に複数のスクリーンが用意されている映画館。複合映画館)が取って代わられつつある状況に対応したもの。通常映画館・シネコン別のスクリーン数も2000年からデータが用意されているが、その推移を見ればシネコンの台頭が理解できる。

↑ シネコン・通常映画館のスクリーン数
↑ シネコン・通常映画館のスクリーン数(-2011年)

同時にそのスクリーン数自身も、この数年は「通常映画館は減少」の一方で、その減少分を補完する程度しか「シネコン・スクリーンの増加」が果たされず、全体的には横ばいのまま推移していたのが分かる。「通常映画館数以上にシネコン・スクリーン数が伸び、全体値を押し上げる」動きは停滞していた。そして2011年は「シネコン横ばい」「通常減少」という、ある意味現状を象徴する動きを見せた結果、全体数も減少する結果となった。

さてそのスクリーンで公開される映画本数だが、1980年代後半までは洋画がじわじわと押していたものの、それ以降は邦画が少しずつ押し戻す形となっている。本数そのものは当たり外れの年があるため、「ぶれ」のレベルでの変化はあるが、大体500-800本/年の範囲に収まっている。逆算すると毎日1-2本ずつ新作が公開されている計算。

↑ 映画公開本数(邦画/洋画)
↑ 映画公開本数(邦画/洋画)(-2011年)

↑ 映画公開本数(邦画/洋画、比率)
↑ 映画公開本数(邦画/洋画、比率)(-2011年)

短期的な「ぶれ」の範囲だが、ここ数年は公開本数全体が逓減状態なのが気になるところ。もっとも2011年においてはこの数年の本数減退現象に終止符を打つかのごとく、大きく盛り返している。さらに半世紀の期間で見れば、この数年間はむしろ多めだったのだから、あまり心配は要らない。

続いてグラフ化するのは、入場者数推移。映画の人気ぶりの動向を一番ダイレクトに推し量れる、注目すべき図である。

↑ 映画館入場者数(億人、年単位)
↑ 映画館入場者数(億人、年単位)

1960年前後をピークに急速に入場者数は減少し、1970年後半以降はほぼ横ばいの形を崩していない。この急激な減少の原因は、いわずもがな「テレビの普及」によるもの。特に1959年の皇太子明仁親王(今上天皇)ご成婚の中継が、家庭用テレビの普及に大きなインパクトを与えている。また、1960年にはカラー放送が本格的に始まり、それと共にカラーテレビも発売、普及していき、映像娯楽の主役は映画館からテレビに移り変わっていった。その変化がグラフとして表れている。

ただし直近では後述するように、ほんのわずかずつではあるが、横ばいから持ち直しの動きも見せていた、さらに2011年に限れば前年比で約3000万人減という、昨今では無い規模の減少を示したのも事実である。



映画館業界不振の打開策として登場したシネコンだが、一時的に入場者数のかさ上げには成功しているものの、早くも入場者数は頭打ちの様相を見せている。そして2011年では「頭打ち」の打ち方を強化してしまったために、凹んだような動きすら見られる。当然、興行収入(映画館での入場料から得られる売り上げの合計)も減少している。

↑ 映画館入場者数(万人、年単位、2000年以降)
↑ 映画館入場者数(万人、年単位、2000年以降)

↑ 興行収入(億円、年単位、2000年以降)
↑ 興行収入(億円、年単位、2000年以降)

2009年・2010年は、多少ながらも持ち直しの気配が感じられた。これはひとえにヒット作に恵まれた結果によるもので、特に洋画の健闘が著しい。ところが2011年は入場者数、興行収入共に大きく減少している。東日本大地震・震災による直接的・物理的な開場・上映機会の減少以外に、自粛の世情によるものも否定できないが、冒頭で触れた「過去一年間の映画館での映画観賞者4割強、若年層ほど多い傾向」などの一連の「映画館に関する記事」によれば、むしろ震災による自粛の流れに沿った映画館忌避の動きはあまり見られない(間接的な原因として、「震災に伴うマインド全体の変化」から「映画館での映画鑑賞」というレジャーそのものに対する再評価が生じ、それが原因となった可能性はある)。それ以上に上映された作品の当たり外れによるところがあるものと思われる。

次のグラフは2009年-2011年における、邦画・洋画の年間興行収入ベスト3についてランキングしたものだが、邦画・洋画共に2010年のものと比べ2011年はヒット作がいずれも小粒なものにとどまったのが確認できる。

↑ 2009年-2011年興業収入ベスト3(各年、億円、邦画)
↑ 2009年-2011年興業収入ベスト3(各年、億円、邦画)

↑ 2009年-2011年興業収入ベスト3(各年、億円、洋画)
↑ 2009年-2011年興業収入ベスト3(各年、億円、洋画)

これら配給作品の当たり外れは、言葉通りフタを開けてみるまで分からない。2010年・2011年の入場者数が「単に作品の不作」「映画を取り巻く環境の変移によるもの(観客側のマインド変化も含む)」なのかは、もう数年様子を見る必要がある。

シネコンでの3Dスターウォーズインターネットや携帯電話の普及、動画配信の浸透に伴い、映画もインターネット経由で自宅にて十分な画質のものが視聴可能となり、映画を取り巻く環境は概して厳しくなりつつある(【アジア太平洋地域のモバイル動画視聴動向をグラフ化してみる】などのデータも環境変化の裏付けとなる)。映画業界でもシネコンの展開をはじめとして、環境の変化に対し単に手をこまねいているわけでは無い……が、状況の変化はその対応を上回るスピードで進んでいるようにも見える。

娯楽の質、映画を観る媒体・選択肢の増加など周囲環境、つまりは時代の流れに合ったさらなる変化・アイディアの詰め込みをしなければ、映画館が今後も「今の規模、体制、構造で」生き残ることは難しい。むしろ逆に、新興メディアとの間に相乗効果を狙えるようなアイディアこそが、今の映画館業界には必要といえよう。


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