景気の回復基調の薄らぎ…2012年5月景気ウォッチャー調査は現状低下・先行きも低下

2012/06/09 06:40

内閣府は2012年6月8日、2012年5月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて減少し、水準値50を切る結果となった。一方先行き判断DIも先月から転じて減少し、50を切っている。結果として、現状低下・先行き低下の傾向を示している。基調判断は「景気は、このところ持ち直しのテンポが緩やかになっている」とし、景気の回復基調が薄らぎ、停滞、あるいは後退の気配が感じられる結果となっている(【発表ページ】)。

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プラス要因の一服感と、円高と、電力不足懸念と
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2012年5月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス3.7ポイントの47.2。
 →2か月連続の低下。「やや良くなっている」が大幅に減り、「やや悪くなっている」が増えている。
 →家計では復興ムードに伴う消費活発化などがあったが、乗用車販売の動きが鈍くなったことを受けて低下。企業も円高に伴う受注の伸び悩みから低下。雇用は製造業の求人増加に一服感があり、低下。
・先行き判断DIは先月比でマイナス2.8ポイントの48.1。
 →復興需要の期待がある一方、夏の電力不足への懸念が高まり、円高への懸念に伴う先行き不透明感が積上げられ、全部門で低下。
今月は現状・先行き共に低下したが、その原因が双方とも「昨月までのプラス要因がひと段落ついたこと」「円高」の点で共通しているのが気になるところ。また「電力不足」が先月から続き「先行き」のマイナス材料として明記されており、不安材料として大きなものであることが確認できる。

下落明確化、下げトレンドか?
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分ではキレイに全項目がマイナスを示している。先月「流れがマイナスに転化した」との主旨の記述をしたが、それが具体化した形だ。また今回の下げで、基準値50を超える項目は雇用関係だけとなってしまった。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。

そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。この数か月は地味な動きながら再上昇の気配を見せていたが、今月は先月の「気配」から「具体的動き」としてマイナスに向かい、合計値は50を切る形となった(雇用関連はかろうじて50超を維持)。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
そして低迷から再浮上、再下落へ。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態(このあたりの状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

2011年夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、この数か月は円安などを背景に再び伸びの気配があった。ところが5月に入り欧州債務危機の懸念再来に伴う円高・景気の後退、そして夏に向けた電力不足の具象化というマイナス要因が積み重なり、先月コメントした「2003-2004年の動きに近い形」「50超の状態で安定」が吹き飛んでしまったのが分かる。

景気の先行き判断DIは先月から転じて下落している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい「雇用関連」だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月の58.7が天井。今月はといえば、先月から大きく下落し、再び基準値50への割り込みをうかがう気配となった。プラスなのは「住宅関連」のみで、しかもギリギリ。マイナス値を見せた項目も3-4%の下げがざら。「現状」と比べれば下げ幅は多少控えめだが、一様に下げているのが気になるところ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数の意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる(一時期は「各DI値が1ケタ台に突入するのでは」とすら思われたほど)。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほぼ変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてこの数か月は基準値50付近をうろうろとする動きが続いている。多分に為替レートに反応する傾向が強く、今月は円高の影響を受け、マイナス方面に翻弄された感がある。

復興需要回復への期待以上に高まる、円高と景気後退と電力不足への懸念
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・まだ十分とは言えないが、外国人観光客の復活が見える。また、教育旅行団体(小学校)も、若干の目減りはあるものの、ほぼ順調にきている。東京スカイツリーからの誘客も徐々に浸透し、平日の宿泊利用の底上げもできてきているようである(旅行代理店)。
・当県では復興需要がうかがえる。家電製品のテレビなどの販売量は減っているが、白物家電といわれている冷蔵庫、洗濯機の買換え需要は引き続き堅調である(家電量販店)。
・連休の間は前年以上の人出もあり、売上も好調であったが、連休後は急激な落ち込みが続き、月末まで回復していない(商店街)。
・今月は天候不順が続いたため客数が減少し、売上につながっていない(一般小売店[和菓子])。
・ゴールデンウィーク後、売上の落ち込みが例年以上になっている。特に、夜の繁華街の落ち込みが激しい(タクシー運転手)。
・エコカー減税・補助金の効果はあるものの、消費者の購買意欲は上がっていない(乗用車販売店)。

■先行き
・エコカー補助金の締切りは、7月から8月になると思われ、前回同様、かなりの駆け込み需要が見込まれる(乗用車販売店)。
・8月の電気料金の値上げや消費税増税の議論、年金の問題等、また、天気もかなり消費に影響を与えると思うが、東日本大震災復興事業の本格稼働によって全体的に動きが出てきているため、消費も喚起してくる(衣料品専門店)。
・電力供給状況のひっ迫感から消費者の節電意識が高まり、高省エネタイプのエアコン、冷蔵庫やLED照明の需要が更に高まるとともに、太陽光発電の需要の高まりにも期待が持てる(家電量販店)。
・今夏の節電意識が購買行動にも影響し、不急不要な物の購入を控える傾向が予想される(百貨店)。
・エコカー補助金の終了にともなう反動減が生じることになる(乗用車販売店)。
などとなっている。一部業態ではプラス要因としているところもあるが、円高や電力回り、政策にまつわる話はその多くがマイナスとして話が進んでいる。特に円高と電力はダブルパンチの形で製造業にダメージを与えており、二次的なマイナス影響(設備投資の停止、雇用懸念)まで発生しているのが確認される。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
復興需要への期待以上に
電力不足と円高への
懸念が重しに。
2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「2011年の震災前における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を(中心では無く)天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車の利用コストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流経費のアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていた。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、それを起因として生じる間接的な不安要素(流通不安や生産力の低下、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安など)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」。これは特に一般社会経済行動において中心的な存在となる、中堅女性層に著しい。

「震災による中期的な不景気が発生しうる可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化」している。震災前から不景気の状態にあったため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。

三か月ほど前から続く回復基調は、多分に「行き過ぎた円高がいくぶん戻した」ことによる、リバウンド効果でしかなった。実際には4月下旬から欧州債務危機の再燃とアメリカの景気後退(むしろ回復の兆しが兆しでしかなかった可能性)に伴う円高が大きく進行。さらに夏の電力不足への不安(とそれに対応すべき国や自治体の迷走への不信感)が急速に高まり、今回現状・先行き双方にその反応が現れた形ではある。

震災経験を元にした災害対策に関しては、多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた論議が行われている。今般の経験を有効に活かす手立てを講じ(可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので)、そして状況の鎮静化を祈りたい。さらに数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題といえる。これ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求められる。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が上から下まで跳梁跋扈している昨今においてこそ、本当に「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していくに違いない。そして今件「景気ウォッチャー」は回答者一人ひとりのマインドの集積による結果であることを思えば、人の心の安寧がいかに大切かを再認識させてくれるというものだ。

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