一様に下げを見せる相場展開が続く(2012年5月分世界食糧指数動向)

2012/06/09 19:30

国連食糧農業機関(FAO)が公式サイト上で定期的に発表している【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けている。この動向は昨今の各種商品市場の動向や政治情勢を判断する際に、重要な指針となりうるものであり、高値維持は懸念材料の一つとなり、注目に値する。そこで当サイトでは毎月、定期的にデータの更新・グラフの再構築と精査を行うことにしている。今回はその2012年5月分の反映版となる。

スポンサードリンク


今記事のデータ取得元および用語の解説は、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認の程、お願いしたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年5月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方。

昨年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。ところが今回5月分は再び大きな減少を示している。詳しくは後述するが米ドルの他通貨に対する強まりや、供給量の改善、そしてヨーロッパ地域の景気後退が大きな原因。

その他に目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、昨今はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年5月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作が伝えられたのをきっかけにする反動の結果。しかし価格上昇の原因である需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300超)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況ではない(今月は瓢差にそのラインを割り込んだが)。

今回計測月となる2012年5月においては項目によって幅に違いがあるものの、一様に下げの傾向を見せている。この事由については上記の通り。5月の総合指数203.9(暫定値)は昨年同月の231.6と比べれば1割超の下げ幅で、昨月と比べても4.2ポイントほどの下落を示している。これは特に乳製品、その他や食肉以外の多くの項目での大幅な下落が起因。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年5月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年5月)

直近月の前月比では食肉、穀物がやや大人しい以外は一様に大きな下げを見せている。特に先月から続き乳製品、そして油脂や砂糖も先月比だけでなく前年同月比でも減少傾向を継続しており、「乳製品…一年ほど前から現在に至るまで減少中」「食肉…ほぼ横ばい継続中」などの動向が推し量れる。グラフで把握できる動向を裏付ける形だ。

リリースでは今月の動きについて「穀物は気象状況の好転によりトウモロコシや小麦の豊作が予想されることで価格が下がった。特にアメリカで記録的なトウモロコシの増産予想が出て、大きな下げが起きた」「油脂の下落は大豆油とパーム油の値下がりが原因。原油価格の動向やヨーロッパ方面での景気後退による輸入量減少も需給のバランスを崩し、値を下げさせた」「砂糖価格は豊作予想による供給過多懸念、原油価格の下落とドルの上昇が下げる要因となった」などと説明している。ドルの堅調さや供給過多によるだぶつきはともかく、ヨーロッパ方面での景気後退に伴う需要量の減退との説明が随所で行われているのは、非常に気になるところではある。

今年に入ってからは砂糖など一部を除き再び上昇の気配があったが、今回5月では乳製品を筆頭に多くの項目で下落が見られた。特に乳製品については前年同月比3割近く、前月比でも1割強のマイナスという大きな値を示している。需給バランスの調整も含めた市場の再構築過程にある(中でもチーズやバター、脱脂粉乳は値下がりを続けている)と説明されていることから、価格の平常化にはもうしばらくの時間を要するだろう。

食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。その観点からすれば食料品の価格下落は好ましい話ではあるが、下落も度を過ぎると作り手側の負担が大きくなる。バランス感覚が必要ではあるが、なかなか調整が難しい。



食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で加速度的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な要素が揃っている(特に昨今の大豆価格の上昇は、投機資金の流入によるところも少なくない)。このため、価格が安くなる要素を見つけにくい。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと同じである。

今回月は幸いにも大きな区分項目別では全項目で値を落としており、その視点では社会の情勢安定化が進んだ感はある。もっとも供給量の増加ならまだしも、需要量の減少が景気後退によるものである場合、「値は下がっても手取りも落ちて、結局一人当たりの食料確保量は増加しない」という、困った状況になってまう。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動のすう勢も、食料価格の動きと小さからぬ関係があるそれだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。


■関連記事:
【世界の食料価格は8か月連続で上昇・1990年来最高値】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー