「初めてのたまごクラブ」「栗原はるみ haru mi」が良い動き…諸種雑誌部数動向(2012年1-3月)

2012/05/21 07:05

先に【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年1月-3月データ)】などで【社団法人日本雑誌協会】が2012年5月8日に発表した、2012年1月から3月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータを元に、いくつかのグラフを生成した。今データは定期的に更新され、いくつかの雑誌について丸一年以上のデータが取得できたため、季節属性にとらわれない「前年同期比」の値を出せるようになったことは、これまでの記事でお伝えした通り。今回は当サイトで定点観測しているデータ以外のいくつかの雑誌について、「前年同期比」における部数推移のグラフ化を試みることにした。雑誌不況はどの程度、どのジャンルに浸透しているのか、それなりにつかみとれるハズだ。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

まずは一般週刊誌。状況を端的に表現するのなら「一部は踏みとどまり、他は減退」。

一般週刊誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)

一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年1-3月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年1-3月)(万部)

今回計測分では前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスに転じている雑誌は3誌に留まっている。震災後の原材料不足を含めたマイナス影響からようやく抜け出た前期を頂点に、失速した感がある。「サンデー毎日」は前期比でプラス10%超え。ただしこれは直前期も含めた前3期が極度に落ち込んでいたことへの反動面が大きく、前年同期比ではマイナスの値が出ている。

前年同期比ではプラス誌は2誌だが、5%超は1誌のみ。一方マイナス誌は11誌で、誤差の許容量を超えたのは6誌。元々紙媒体は一部を除き漸減傾向にあるとはいえ、少々その影響が強めに出ている感はある。

マイナス10%超えを継続している「SPA!」や「FLASH!」などは、紙媒体による「写真週刊誌」という存在において、供給過多のイメージは否めない。掲載内容の需要の観点では「週刊プレイボーイ」もしかり。数字の減退ぶりがそれを裏付けている。あるいはデジタル系をメインとし、本誌はそのデジタル系のプラットフォームとして割り切り、出版形態・構成を変えるぐらいの変革も切り口の一つとして見出してもよいかもしれない。電子書籍リーダーの爆発的な浸透普及が進めば、その選択肢も選ばれやすくなる。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期も状況は変わらずあまり良くない。今期で唯一プラスを見せたのは「初めてのたまごクラブ」。今誌は季刊誌で該当期間に発売されたのは1誌のみ。「妊娠がわかったら最初に読む本」をコンセプトに掲げ、毎回役立つ小物や小冊子などの付録が魅力的。また【「初めてのたまごクラブ」公式サイト】を見ると、同社類似他誌との巧みな連動性(「子育て」をテーマにするとという雑誌の性質上、連動するのは当然の話)や関連商品の情報提供など、さまざまな切り口で相乗効果を測っている工夫が見て取れる。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食への注力が高まる一方の昨今、ニーズは強まるはずなのだが、全般的に軟調なのは前期と変わらず。インターネット、とりわけモバイル系端末経由の情報提供サイトに読者を奪われている可能性は高い。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)

栗原はるみ haru mi印刷実績
↑ 栗原はるみ haru mi印刷実績

特に「きょうの料理」は今期も前期に続きマイナス20%近い値を示しており、根本的なテコ入れが求められている。印刷部数としてはまだ40万部強ほどある(今件4誌中最大部数)のが幸いなところ。一方で「栗原はるみ haru mi」は前回同様今回も堅調な動き。改めて単独で部数動向を調べたところ、昨今の雑誌界隈、特に料理系雑誌としては稀有な動きを見せているのが分かる。やはり「栗原はるみ」というカリスマ的存在が、雑誌の最大の魅力として生き続け、読書を引きつけているに違いない

なお今グラフは「前年同期比」で今回も反映されないものの、2009年10-12月期以降データが非開示となった「レタスクラブ」について、前々期から再び公開された(今期は約29.1万部)ことを記しておく。

エリア情報誌。こちらも一部を除き苦境は続く。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)

大きく跳ねた「北海道ウォーカー」だが、【北海道ウォーカー、季刊誌へ】で記したように、今回該当期の3月売り号から季刊誌に販売スタイルが変更された。今件上昇はこれに伴う部数増加で、人気による上昇ぶりか否かは次回以降の結果待ちというところ(ちなみに直近期部数は4.8万部)。

【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、しばしば対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2011年1-3月、前年同期比)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数(万部)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)

今回も前回同様、前年同期比では「ねこのきもち」の勝利(とはいえ両誌ともマイナス)。ちなみに直近期の発行部数は「いぬのきもち」13.4万部・「ねこのきもち」10.3万部で、「いぬ」の勝ち。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。以前【「小学五年生」「小学六年生」が休刊・来年春に学習まんが誌「GAKUMANPLUS」を創刊へ】で報じたように、「小学五年生」「小学六年生」は休刊しておりすでに無く、さらに【「小学三年生」「小学四年生」来年2月売り号で休刊】の通り「小学三年生」「小学四年生」の休刊も決まったため、早々とデータ開示を止めてしまっている。

そして【GAKUMANplus (ガクマンプラス) 、休刊してましたァァッ】でも伝えているが、「GAKUMANPLUS」も休刊をしていたため、更新データとして提示できるのは「小学一年生」と「小学二年生」のみとなってしまった。前回はこの2誌だけでグラフを構成したが、あまりにも間が抜けていることもあり、今回からは幼稚園関連の雑誌を3誌ほど追加して再構築を行うことにした。

「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年1-3月、前年同期比)

今回は「小学一年生」「小学二年生」共に大きくプラスを示している。3月売りの4月号は入学直前期ということで付録もゴージャスなものが多く人気を集めることもあり、毎年この期の売上は伸びる傾向を示している。詳しくは後日あらためて解説するが、今回期は特に前年よりも冊数自身を伸ばしており、持ち直しの気配を感じさせる。

一方今回から言及を始めた、幼稚園系3誌のうち「たのしい幼稚園」はともかく、他の2誌はあまり調子が良くない。こちらも後日触れるが、両誌とも中期的に部数を減らしており、根本的な対策が求められる時期に来ている。



以上ざっとではあるが、いつものように各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移のグラフ化を行った。ごく一部の例外をのぞき、ほとんどが前年同期で小さからぬ下げ幅でのマイナス基調が確認できる。

また、今回取り上げた業界専門誌の領域(料理や育児など比較的ハードルが低い、一般向けの業界)は、デジタル系ツールとの組合せで、逆に紙媒体としての魅力を活かしつつ、多くの人から注目を集められる可能性を十分に秘めている。例えばAR(Augmented Reality(拡張現実・強化現実))の常用活用を模索するなど、今だからこそ出来る挑戦もある(【「毎日新聞におけるAR技術の試験導入に関する感想」をまとめてみた】などが一例)。

少なくとも市場を取り巻く環境が大きく変化している以上、これまで通りの切り口は通用しないことを、あらためて認識しておくべきだろう。


■関連記事:
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(2011年・完全版)】

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