優れたキャッチコピーで「PRESIDENT」が伸びる…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2012年1月-3月)

2012/05/18 12:00

【社団法人日本雑誌協会】は2012年5月8日、2012年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2012年の1-3月期とその前期、2011年10-12月期における印刷実績を確認する。

2011年10-12月期と2012年1-3月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2011年10-12月期と2012年1-3月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年1月-3月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「プレジデント」が断トツで印刷部数が多い状況に変化はない。今期は全般的にやや軟調な雑誌が多い中、トップの「PRESIDENT」が大きく印刷部数を伸ばしているのが喜ばしい。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化が生じたのかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られないはず。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年1-3月、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年1-3月、前期比)

前回は青・緑系統(前期比プラス)が多数派だった今件グラフは、今回は圧倒的に黄色・赤系統(前期比マイナス)で支配されることとなった。誤差範囲のプラスマイナス5%を除外して考えると、プラス誌1誌、マイナス誌1誌。誤差分が全部マイナスに振れたのは気になるところだが、昨今の雑誌情勢を考慮すれば、小康状態というところか。

とりわけ大きな伸びを見せた「PRESIDENT」だが、該当期間ではお金周りの話を中心に、秀逸なコピーが表紙を踊っているのが目に留まる。内容ももちろんだが、それを的確に、しかも不特定多数に興味関心を引かせるようなコピーは、時として雑誌を大いに底上げする力を持つ。そのような仮説をイメージさせるほどの出来を持つ言い回しが並ぶ。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年1-3月、前年同期比)

順位に違いが生じたが、下位2位の「\en SPA!」「THE21」の軟調ぶりは相変わらず。他の赤色着色(前年同期比マイナス5%超)雑誌の顔ぶれも前期から変化が無く、危機感を覚えるものがある。一方、今回前期比でも取り上げた「PRESIDENT」、そして前期から引き続き「COURRiER Japon」がプラス値を継続しているのは注目に値する。



2008年秋のいわゆる「リーマンショック」で多くの人が経済情報に注目した時期が直近における天井となる形で、それ以降は金融・経済系のウェブサイトへの(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加はゆるやかなものとなり、あるいは減少に転じている。しかしパソコン、そして携帯電話やスマートフォン、タブレット機など各種モバイル情報端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは加速の真っただ中にある。

特に時間・分単位で情勢が変化する経済系のジャンルでは、記事の作成と読者への公知の間に大きな時間差が生じる雑誌の不利さは、他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)とは比べ物にならないくらい大きい。スピード感で例えれば、インターネット系媒体は紙媒体における「号外」を逐次配信しているようなもの。昨今では、即時対応ができる今件記事におけるジャンルのインターネット上での情報展開は、ますますその重要度を増しつつある。

頑なに古い体制ばかりのみを固持するのでは無く、現状を正しく認識・分析し、「紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みはどのようにすれば構築できるか」という基本原理に立ち返り、同時に「躍動する新メディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いか」との模索をすること。その際に固定概念や既得権益にとらわれることなく、先を見据えて柔軟な発想を行うこと。さらにそれらの答えを見つけ出したら、躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が早急に求められている。そしてその進化は対象や環境こそ違えど、昔から常に、あらゆる場面で求められていたことに過ぎない。

そしてもちろん今回の「PRESIDENT」のように、雑誌そのものとしての基本、魅力となるポイントを忘れてはならないのは言うまでも無い。

環境の変化に対応・進化できない生物が種としてどのような結末を迎えるかは、これまでの歴史が十分すぎるほどに語っている。そしてその動きにもっとも敏感な、今記事で対象となる雑誌達自身こそが一番よく知っているはずだ。

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