「Vジャンプ」はレンジ下方スライドか、データ非公開化の動きも続く…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2012年1月-3月)

2012/05/17 12:10

【社団法人日本雑誌協会】は2012年5月8日、2012年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さの観点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値といえる。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

スポンサードリンク


データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

それでは早速、まずは2012年の1-3月期とその直前期2011年10-12月期における印刷実績を見ることにする。

2011年の10-12月期と2012年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2011年の10-12月期と2012年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

前回ではアスキー・メディアワークス発の4誌が、現在もなお通常通り刊行されているにも関わらず、印刷証明付き平均印刷部数の公開を取りやめてしまった。やや寂しい感はあったのだが、今回はまた1誌、同様のパターンで脱落する雑誌「HYPER HOBBY」が出てしまった。【HYPER HOBBYの公式サイト】で確認すると、同誌は現在もなお刊行中で、単に公開・非公開の方針転換が行われたものと思われる。今誌は徳間書店発でアスキー・メディアワークスとは直接の関係は無いことから、情報の非開示化が業界全体に浸透しつつあるのではないかという懸念が沸いてくる。

それ以外で目立つものといえば、やはり「Vジャンプがずば抜けた売上」「アニメ系ではニュータイプがトップ」の二つ。また、前期との比較で見ても、全体的に今期は軟調な様子が確認できる。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2012年1-3月期、前期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2012年1-3月期、前期比)

前回は年末年始のニンテンドーDSの猛ラッシュに合わせて大きく実績を伸ばした「ファミ通DS+Wii」だが、今回はその反動から20%超の下げ率を示してしまっている。もっともこの下げにより、実印刷証明部数は「2期前」の値に戻す程度で落ち着いていることから、単に「旧に復した」と見るべき。

「Vジャンプ」も状況としてはほぼ同じ。年末年始の「任天堂効果」、さらにはゲーム系全般への購入意欲の高まりを受けたかさ上げが起きた前期の反動といえる。とはいえ「ファミ通DS+Wii」が実部数で2期前とほぼ同じだったのに対し、「Vジャンプ」は2期前比でマイナス1万部となっているのは気になるところ。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移が確認可能となった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2012年1-3月期、前年同期比)

プラス誌は3誌、マイナス誌は7誌。誤差範囲のプラスマイナス5%内を除けば、プラスは2誌、マイナスは6誌となる。前期からは多少改善された感もあるが、その一方で状況が悪い雑誌の悪化進行度合いが目に留まる、かなり厳しい状況。特にマイナス陣では前期同様筆頭に立つ「ファミ通DS+Wii」「メガミマガジン」が、相変わらず2割超のマイナス値を示している状況は、「まだあわてるような時間じゃない」どころの話ではないことが分かる。

一方、前回記事でも注目した「アニメージュ」や「声優アニメディア」「PASH!」など、どちらかといえばコア層色が強いものは、今回も上位に多く位置している。これらは読者として設定している層への積極的かつニーズに応えた雑誌構成や付録提供が、現状維持・堅調化に表れていると見てよい。特に「PASH!」は印刷証明部数の絶対値としては他誌に比べると小さめ(直近では2.9万部)、さらに直近3期ではわずかずつだが部数を減らしていることもあるが、今グラフ上では地味な健闘を続けている。

他方、印刷部数では最上位の「Vジャンプ」も、今グラフでは「赤組」。同誌は印刷部数も大きい(今回期は28.7万部)が、同時に特集・付録内容とそれらに対する需要を考慮し、数万部単位での調整を行っているので、「誤差の範囲」との解釈もできる。しかし2010年第4四半期(10-12月)以降、増減の上下幅を5万-10万部単位で下方修正した気配がある。以前【Vジャンプ印刷実績のレンジ変動】でも呈したが、この推論はほぼ決定的なものと見てよいはず。



今期は震災の影響からほぼ立ち直りを見せ、しかも前年同期比の値ではいくぶん「震災の影響を受けて減った部数」の反動が生じるため、かさ上げが起きてもおかしくない。にもかかわらず前回記事同様、各値で思わしくない結果が出た雑誌が数多く確認され、市場全体の不安程感は否定できない。一方で上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」「時節に連動した読者層のニーズを適切につかみ、それに応えるコンテンツの提供」「自社、自雑誌の『資産』の有効活用」が際立つ傾向がある。それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばしている。

不景気で可処分所得が減少し(主要購読者層たる若年層は不景気のあおりを受けやすく、特に減退中)、さらにスマートフォン・携帯電話のようなモバイル情報端末や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間と可処分所得を奪われる。その上ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌への必要性も薄れている。とりわけスマートフォン、さらには今後本格化するであろう電子書籍リーダー(現状ではタブレット機が主力)の登場と普及は、「機動性の高い娯楽」(例えば雑誌、携帯ゲーム機)に大きな打撃を与えている。スマートフォンの浸透が主に若年層から進んでいることを考えれば、エンタメ市場に与える影響は、加速度的といえる。

お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、そして紙媒体ならではのメリットを読者に実感させるには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く、「他には無い特別な一品」「紙媒体として手元に残しておきたい魅力あるもの」に見える個性的な雑誌を創らねばならない。

もちろん「読者の需要を適切に、深く追求する」だけを求め、同人誌やサークル誌のノリを突き進むことを求めているわけではない。一定数量を販売する(=一定数の不特定多数から成る人達に支持される)商業誌であることを忘れてはならない。つまり「適度」で「良識・常識の範囲内」での個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない(その「ノリ」が通じる「市場」が、雑誌を支えるのに十分な力を持っているのなら話は別だが)。

印刷部数上でプラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、プラスへの歩みを続けている香りがある。上位陣の雑誌をくまなく読み解くことで、不調著しい雑誌業界における状況改善策のヒントが見いだせるに違いない。


■関連記事:
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(2011年・完全版)】

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー