「月刊コロコロコミック」の増刊号「コロコロイチバン!」参入…少年・男性向けコミック誌部数動向(2012年1月-3月)

2012/05/14 06:50

【社団法人日本雑誌協会】は2012年5月8日、2012年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向・実情を示すものとしては、各紙・各出版社が発表している「公称」部数より精度が高く、検証素材としても有益なものである。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも読者が興味をそそるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」がトップにあることに違いはない。

2011年10-12月期と最新データ(2012年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2011年10-12月期と最新データ(2012年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで283万8000部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は実績のもとに今なお維持されている。もっとも、最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下であることも、また事実。

今回は前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由から「退場」した雑誌は無い。一方、新規参入分としては小学館の【コロコロイチバン】が挙げられる。

「コロコロイチバン!」は「月刊コロコロコミック」の増刊号で、タイアップ色の強い作品や有力作家の新作お披露目場、さらには本家よりもやや低い年齢層を対象にしている(以前の記事で紹介した「最強ジャンプ」にややポジションは近い)。2005年の創刊で2011年4月売り号から月刊化されたとのことだが、今回からはじめて印刷証明部数が公開された。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2011年10-12月期と最新データ(2012年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2011年10-12月期と最新データ(2012年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

「ヤングマガジン」「ビックコミックオリジナル」「週刊ヤングジャンプ」の三強状態は継続中。また、【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊、枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売されたものの、今期でも両誌とも今期に至ってもデータの登録は無し。

一方、【隔週刊誌「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」の統合月2回刊誌、「グランドジャンプ(GRAND JUMP)」に決定】でお伝えしたように、「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」両誌は休刊となったため長年継続掲載されていた両誌は前回からデータ掲載誌としては除外。代わりに登場した雑誌「グランドジャンプ」と「グランドジャンププレミアム」のうち、前者のみが前回から参入している。「-プレミアム」は月刊誌で、前回はタイミングの関係から公開が間に合わなかった可能性もあったが、今回も掲載されていない以上、非公開の方針であるようだ。

その「グランドジャンプ」の今期印刷数は25万部。スーパージャンプ・ビジネスジャンプのそれぞれの前期値よりは多いが、両誌分を合わせた値よりは少ない。しかも前期から早くも1割程度の下落を見せている。動向が気になるところではある。

前期・前年同期比の比較をしてみよう
さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化を試みることにする。季節変動「など」を無視することになるが、短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

今件は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかの割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。

まずは少年向けコミック誌。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2012年1-3月期、前期比)

前回記事まで「減退ぶりは相変わらず」などの表記が続いていた「少年サンデーS(スーパー)」。これが2012年1月売りの3月号からリニューアル・新装刊(表紙の表記ママ)を行った。内容も本家週刊少年サンデーの外伝版作品や話題のテレビアニメの漫画版、さらにはかつての人気作品のリバイバル連載、その上付録も盛りだくさんと、色々な意味でチャレンジ要素を盛り込んだ月刊誌に仕上がっている。これに合わせ印刷証明部数も前期の1.4万部から今期は4.3万部にかさ上げ。結果として2倍強増しという、一見すると計算ミスのようにすら思える結果が出ている。

しかしながら他誌はほぼ軟調で、「少年エース」「別冊コロコロコミックスペシャル」「最強ジャンプ」は前期でマイナス10%超。このうち「少年エース」「別冊コロコロコミックスペシャル」は前期が大きく伸びていたための反動とも解釈できるが、「最強ジャンプ」はややいただけない感がある。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2012年1-3月期、前期比)

今回もプラス誌が2誌のみ、マイナス値を示す雑誌がほとんどだが、「誤差」を超えたものは3誌のみと、実質的には多くが「前期と変わらず」の状態にある。かねてからの傾向にある通り、くだんの「コミック乱三兄弟」(「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」「コミック乱」「コミック乱ツインズ」)の底力が改めて認識される。

一方で前期初登場となった「スーパーダッシュ&ゴー!」は早くも前期比でマイナス2割超。元々印刷証明部数がさほど多くないのも一因だが、スタートダッシュとしては「ゴー」の掛け声のような躍進は出来ず、その場でつまづいてしまったかのような結果といえる。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出できるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2012年1-3月と、その1年前の2011年1-3月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2012年1-3月期、前年同期比)

上記で取り上げた「新装刊」の「少年サンデーS(スーパー)」が、前年同期比でも大きな伸びであったことが分かる。この極端な事例に半ば隠れてしまったが、他の各誌は押し並べて軟調。かろうじて「ウルトラジャンプ」がプラス圏にある程度。マイナス10%超が7誌(前回の記事では5誌)という値は決して「見て見ぬふり」ができる状況とはいえない。

さらに「コロコロコミックス」「月刊少年ライバル」がマイナス20%超の値を前回から継続して出してしまっている。そろそろ「少年サンデーS(スーパー)」のリニューアルのような、何らかの活性化策を打ち出さねばならない状況下にあることは否めない。

また週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。前期記事では「年約1割の売上減少は、容易ならざる事態」としたが、今回は「年1割強」(マイナス14.4%)と表記を改める必要が生じてしまった。手元のデータでは「前年同期比」の算出が可能なのは2009年4-6月期からだが、それ以降においては最大の下げ幅を記録してしまっている。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2012年1-3月期、前年同期比)

前期分記事と比べると「上の方(プラス、あるいはマイナスでも少なめで済んでいる)」「下の方(大きなマイナス)」の雑誌の顔ぶれにほとんど変化は無く、男性向けコミック誌は勢いで二分化されている雰囲気が見られる。

また前期で「前年同期比」マイナス20%超を記録した「モーニング2」は、今期も再びマイナス20%超。直近で下げ止まりを見せた前期からさらに部数が削られており、先行きに懸念を覚えざるを得ない。同誌はインターネットとの連動で色々な模索を行ったり、読み切りや新人賞作品の掲載が多いなど、多分に実験的プラットフォームの感がある。そのため、よほどの部数の減退が無い限り、他誌ほど心配は要らないのかもしれないが。



今期データは東日本大地震・震災の影響(直接の購入性向の減退に加え、インクや紙、付録用素材の不足)は多分に払しょくされており、通常の出版業界動向を反映したもの。むしろ前年同期比においては多少なりとも震災要素の反動によるかさ上げが考えられる(次期掲載記事分ではこの影響が大きく出るに違いない)。しかしそれでもなお、多くの雑誌でマイナス値を継続している状況を見るに、全体として売上の減少傾向が継続していることは疑うべくもない。

特に「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返す雑誌が複数存在している状況は、雑誌そのものの休刊・デジタル化への移行や、今期「グランドジャンプ」として新生を果たした「スーパージャンプ」「ビジネスジャンプ」両誌の統合のような、雑誌の再編が起きる可能性を多分に示唆している。あるいは大きな売上を見せるプラットフォーム的な雑誌の手ほどきを受ける形でリニューアルを実施した「少年サンデーS(スーパー)」のような切り口もありだろう。

【1か月の購入金額は143円!? 週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(2011年12月版)】【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(2011年・完全版)】などで触れている通り、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的に雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」事態が進行している。雑誌販売の一番の窓口といえるコンビニでも【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(後編:全体編)(2011年「出版物販売額の実態」版)】で示した通り、出版物販売額は減少のさなかにあり、「雑誌離れ」が進んでいるのが確認できる。

もちろん堅調さを続けている一部雑誌のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権の芽は残されている。さらに紙媒体では無いため今データには直接は反映されなくなるが、デジタルメディアへの積極的なアプローチ、そしてデジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開、さらには電子出版による「雑誌」の展開も検証課題として挙げられる。

今年は欧米で大きな電子書籍ブームを巻き起こしたアマゾン・キンドルの日本展開版の発売も予定されており、これまでに無い大きな動きが予想される。一方で【Jコミ】のような過去の需要の掘り起こしで、新作への需要との連鎖反応が生じるサービスの堅調さも注目に値する。

携帯情報端末の浸透が、一般携帯電話からスマートフォン、そしてタブレット機などに移行することにより、雑誌の立ち位置はますます不安定なものとなっていく。紙媒体としての雑誌のスタイルを維持するにせよ、他メディアとの連動性を高めるにせよ、大胆なかじ取りが求められている。【米国で進む「本離れ」に歯止めをかけるのが電子書籍? 米書籍購読傾向をグラフ化してみる】などでも触れているが、海外ではすでに電子書籍リーダーなどを介したデジタルメディアでの書籍を読み説くことも、一般の紙媒体経由によるもの同様「読書」として取り扱う動きが多分に生じている。紙には紙の、デジタルメディアにはデジタルメディアの利点があることを認めた上で、一歩前に進む時はすでに来ているといえよう。

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