油脂以外は下落基調を継続中(2012年4月分世界食糧指数動向)

2012/05/04 06:40

以前の記事において、国連食糧農業機関(FAO)発表の【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】に関する記事執筆後、定期的に、具体的には2011年3月分反映版以降毎月、データの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今データは1990年以降にFAOが世界の食料価格の月ごとの変化を定期的に監視・統計した上で食料価格指数として発表している値で、昨今の各種商品市場の動向や政治情勢を判断する際に、重要な指針となりうるものであり、注目に値する。今回はその2012年4月分の反映版となる。

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世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)や各項目の名前の定義については【定期更新記事:世界の食料価格の推移(FAO発表)】を参考のこと。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年4月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方。昨年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられる(唯一乳製品は下落を継続しているが)。

目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、昨今はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年4月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作が伝えられたのをきっかけにする反動の結果。しかし価格上昇の原因である需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300超)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況ではない。

今回計測月となる2012年4月においては項目によって上げ下げまちまちで、ある意味小康状態にあると見ることも出来る。4月の総合指数213.9(暫定値)は昨年同月の234.9と比べれば1割近い下げ幅で、昨月と比べれば3.1ポイントほどの下落を示している。これは主に乳製品や砂糖項目での下落を起因としている。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年4月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年4月)

直近月の前月比では先月に続き乳製品は値を下げ、さらに砂糖や穀物でも下げ傾向が見受けられる。乳製品は先月比だけでなく前年同月比でも減少傾向を継続しており、「乳製品…一年ほど前から現在に至るまで減少中」「食肉…ほぼ横ばい継続中」「油脂……一年前の減少傾向から転じて増加の動きを見せる」などの動向が推し量れる。グラフで把握できる動向を裏付ける形だ。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数では十分な生産見込みを反映してか、小幅に値を下げた。前年同月と比べれば15.6%もの下げ」「油脂指数は上昇。不作による供給量不足懸念から生じた大豆価格の急騰に加え、派生製品の需要増加も影響している。この高騰に伴いパーム油の需要が伸びているが、こちらも急な生産増加には組みしにくいため、値上げの一因となっている」「砂糖指数は最大生産地のブラジルをはじめ、インドやEU、タイでも大きな供給量が期待され、これが昨今の指数押し下げの起因となっている」「乳製品指数は下落中。オセアニアと南アフリカで大きな供給が行われているのが原因」などと説明している。特に大豆の価格上昇は顕著で、史上最高値に近づいたとの報道もあり、油脂価格の上昇は日本国内でも問題視されている。

冒頭にもある通り、直近では食肉・油脂を除くと昨年後半からやや値の減少=値下がりが確認できていた。しかし今年に入り乳製品は大きく下落を続けているものの、それ以外は横ばい、あるいは地味だが確実な上昇機運が見受けられる。食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。あまり好ましい話では無い。



食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で加速度的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な要素が揃っている(特に昨今の大豆価格の上昇は、投機資金の流入によるところも少なくない)。このため、価格が安くなる要素を見つけにくい。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと同じである。

昨年後半は先進諸国、そしてそれに連動する形で新興国の経済上の歩みの乱れが需要減を、そして幸いにも複数種の作物における豊作を起因とする供給増が、価格下落を導いていた。数少ない「価格が安くなりうる要素」が発動していたのだが、これが今年に入ってから鎮静化、再び大きく上昇する動きが見受けられる。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の高騰は、社会情勢を不安化させる要因となる。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動も、要因の一つに食料価格の上昇があると考えるのが道理。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。

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