読む機会はパソコンが上、しばしば読むのは…米媒体別電子書籍購読性向

2012/04/28 06:55

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電子書籍リーダー米国の調査機関の一つである【Pew Research Center】は2012年4月4日に、電子書籍をメインに据えた、同国の読書性向に関わる調査報告書【The Rise of E-Reading】を発表した。同国の読書の現状が、電子書籍やモバイル端末の浸透でどのような変化を遂げているかを知ることができる。今回はその中から「媒体別・電子書籍の購読性向」にチェックを入れることにする。


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調査要項の詳細は先行して掲載した記事【テクノロジーは読書のアプローチに…デジタル機器と米の読書性向との関係】で解説している。詳しくはそちらを参考のこと。

先に【非保有者の「今後欲しい」は1-2割、要らない理由は「そもそも欲しくない」…米電子書籍リーダーとタブレット機「非」保有者の思惑】などで触れているが、電子書籍リーダーやタブレット機の保有比率は2割足らず。

↑ 直近調査におけるデジタル機器保有率(米、18歳以上、2011年5月-2012年2月)
↑ 直近調査におけるデジタル機器保有率(米、18歳以上、2011年5月-2012年2月)(再録)

さて、電子書籍(e-books)についてだが、電子書籍リーダーはもちろんのこと、パソコン、タブレット機、そして対応さえしていれば携帯電話(スマートフォンも含む)でも読み解くことができる。そこで「媒体・頻度はともかく電子書籍を読む人」に対し、どの媒体を使っているのかを複数回答で聞いた結果が次のグラフ。意外にも電子書籍リーダーの41%を超える形で、パソコンによるもの42%がトップという形になった。

↑ 使用媒体を問わず「電子書籍を読んだ」と回答した人における、その購読の際の使用媒体(米、2011年11-12月、16歳以上、複数回答、頻度は問わず)
↑ 使用媒体を問わず「電子書籍を読んだ」と回答した人における、その購読の際の使用媒体(米、2011年11-12月、16歳以上、複数回答、頻度は問わず)

電子書籍読者の多く(人数的)は、パソコン経由で読書を楽しんでいるように見える。

これを別の切り口で見たのが次のグラフ。個々の端末保有者に対し、電子書籍をどの程度の頻度で読んでいるか尋ねたもの。例えばタブレット機の場合、19%は「その端末では電子書籍は読まない」とあるので、残りの81%が「タブレット機保有者における、電子書籍購読者(頻度はともかく)」という計算になる。

↑ 電子書籍リーダーなとで電子書籍を読む場合の頻度(米、2011年11-12月、16歳以上、各端末保有者による回答)
↑ 電子書籍リーダーなとで電子書籍を読む場合の頻度(米、2011年11-12月、16歳以上、各端末保有者による回答)

電子書籍読者全体に対しては、パソコン経由の読者比率がもっとも多い。にもかかわらず、パソコン利用者全体では半数にも達していない。一方電子書籍リーダー保有者間では93%が電子書籍読者という計算になる。結局のところ「電子書籍読者全体に占めるパソコン経由読者の比率が高い」のは、単に「パソコン利用者”数”が多い」からに他ならない。

そして色の濃い部分の多さを見ると、パソコンや携帯電話より、タブレット機や電子書籍リーダーの方が「個々メディア利用の読者全体に占める、頻度の高い読者の割合」が多いことが分かる。「ほぼ毎日」に限定すれば、電子書籍リーダーの場合は34%となるが、パソコンの場合は15%でしかない。

↑ 端末別、電子書籍を読む人に対する、「(ほぼ)毎日読む人」の割合(米、2011年11-12月、16歳以上、各端末保有者による回答)
↑ 端末別、電子書籍を読む人に対する、「(ほぼ)毎日読む人」の割合(米、2011年11-12月、16歳以上、各端末保有者による回答)

元々読書好きだから電子書籍リーダーを保有しているのか、電子書籍リーダーで書籍好きになったのか、どちらか一方のみとは限らないが、いずれにせよ、電子書籍リーダー保有者は、高い頻度で電子書籍を読みこなしていることになる。



「電子書籍読者数はまだパソコン経由の方が多い」「タブレットや電子書籍リーダーでの電子書籍読者は、高い頻度で電子書籍を読む」。特に後者が重要で、モバイル系のデジタル機器が読書性向を高め得る傾向は、以前【タブレット機は魔法のツール…米タブレット機利用者のニュース購読上の変化】で記した、タブレット機と電子新聞間との関係にも類似している。

また見方を変えれば「元々読書性向が高いからこそ、それらの端末を調達する」とも解釈できる。実際、別項目で「電子書籍リーダーを1年以上前から持っていた人」の45%が以前より読書(電子書籍含む)の機会が増えたと答えているが、「半年以内に保有した」人の場合は30%でしかない。心底読書が好きな人は早期に電子書籍リーダーを調達し、時間の経過と共にそれより読書そのものの傾注度が低い人もがリーダーを調達するようになった、要は超マニアからマニア、ややマニアへと電子書籍リーダーの保有層が広まってきたというところか。

日本の場合はパソコン経由ならば(リーダーの事前インストールが必要な場合もあるが、さほど難儀することは無い)比較的楽に読み通せる。一方電子書籍リーダーは規格が乱立状態にあり、「超」がつくマニア以外は手が出しにくい状態と表現しても間違いではない。

「黒船」とも評せるアマゾンのKindle日本版が展開を開始したら、どこまで裾が広がるのか、そして「読者」の購読性向を高めていくのか。色々な視点で気になる事は多い。


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