米国で進む「本離れ」に歯止めをかけるのが電子書籍? 米書籍購読傾向をグラフ化してみる

2012/04/16 07:05

読書アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年4月4日、電子書籍を中心に、アメリカの読書性向に関する調査報告書【The Rise of E-Reading】を発表した。モバイル端末、特に電子書籍リーダーの登場・普及で大きな変化をとげている、アメリカの読書の現状をかいまみられる貴重なデータが、多数盛り込まれている。今回はその中から「アメリカにおける書籍の読書性向推移」にチェックを入れることにする。

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調査要項は先行する記事【テクノロジーは読書のアプローチに…デジタル機器と米の読書性向との関係をグラフ化してみる】で解説している。

なお今調査では特記無き限り、「紙媒体としての書籍」の購読以外に「電子書籍を読む」ことも「読書」と見なしている。日本では一部で「電子書籍を読むのは読書とは呼ばない」とする意見もあり、今件データの確認・他調査結果との比較時には注意が必要である。

今レポートでは別調査機関ギャラップ社による書籍の読書性向推移が寄せられている。それによると1978年時点では「一年を通して書籍を一冊も読まなかった人は8%」、1990年になるとその値は16%にまで増加。1990年時点での平均年間購読冊数は11冊という結果が出ている。そして直近の値として2011年12月分には今回のPew Research社の調査結果が添付されている。

↑ 過去一年間の「書籍の」読書数(Gallup社・紙媒体のみ、2011年のみPewResearch社で電子媒体含む)
↑ 過去一年間の「書籍の」読書数(Gallup社・紙媒体のみ、2011年のみPewResearch社で電子媒体含む)

レポートでも注意書きの有る通り、ギャラップ社の結果は「紙媒体の書籍のみ」、Pew Research社の値は「電子書籍も含む」ことに注意してほしい(仮に「紙媒体のみで」と問い合わせていれば、Pew Research社調査における「読書」結果は今件調査よりも小さな値になることは、容易に想像できる)。それでもなお「一年間に1冊も読書をしなかった」人は増加しており、2割に近づいている。また他の「読書冊数」区分も大きな違いは無く、むしろ2005年の(電子書籍をカウントしていない)ギャラップ社の結果と比較すると、多めの冊数区分がいくぶん増えており、電子書籍の普及がアメリカにおける「(新聞や雑誌では無く書籍における)読書離れ」を押しとどめている感はある。

これが良く分かるのが次のグラフ。購読書籍冊数の平均値と中央値をグラフ化したものだが(1978年の分はデータが無い)、1999年をピークに漸減していたものが、2011年、つまり電子書籍をカウントに加えた時点で再び増加しているのが分かる。

↑ 過去一年間の「書籍の」読書数(Gallup社・紙媒体のみ、2011年のみPewResearch社で電子媒体含む)(冊数)
↑ 過去一年間の「書籍の」読書数(Gallup社・紙媒体のみ、2011年のみPewResearch社で電子媒体含む)(冊数)

電子書籍もカウントに加えることで、書籍読書冊数は1999年の水準にまで回復している。平均値は同じで中央値はむしろ2011年の方が1冊多いことから、(一部の多冊購読者による平均値のかさ上げでは無く)全体的な読書性向はむしろ強まっていることが分かる。アメリカでも「紙製の本離れ」はあるかもしれないが、「(デジタルも含めた)本離れ」は電子書籍の展開で押しとどめられた可能性がある、と見てよいだろう。無論この仮説を確定付けるには、もうしばらく継続した調査結果の確認が必要であることは言うまでも無い。



レポートでは概要のみではあるが、紙の書籍・電子書籍それぞれの動向にも触れられている。それによると「2011年12月の調査では、16歳以上の72%は少なくとも1冊の紙媒体の、16%は電子書籍を読み、11%は音声本(audiobook)を聴いている。18歳以上で仕切り直しても値は同じ(電子書籍の購読者率が17%にかさ上げされるのみ)」「同様の調査を2012年2月に行ったところ、電子書籍の購読者率は21%にまで増加した」とあり、短期間で電子書籍購読者が増えたことを示唆している。

詳しくは別途詳細を見て行くことにするが、【アマゾンのKindle Fireはタブレット市場の起爆剤に】でも触れたように昨年末から今年の頭にかけて年末年始商戦でキンドルファイアが飛ぶように売れ、これが電子書籍購読者を大量に増やしている。主に(当然年末年始には他のタブレット機や電子書籍リーダーも売れており、電子書籍そのものの急速な浸透もあるので、キンドルファイア「だけ」が理由ではないが、)この動きが具体的な「電子書籍購読者率の増加」として現れたと考えるのが、素直な見方といえよう。

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