全般的に大きなプラスへの動き、しかし震災反動(電通・博報堂売上:2012年3月分)

2012/04/11 06:45

[博報堂DYホールディングス(2433)]は2012年4月10日、同社グループ主要3社の2012年3月における売上高速報を発表した。これで[電通(4324)]が同年4月6日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2012年3月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、広告全体及び両社それぞれの広告売上動向を眺めてみることにする。

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データ取得元の詳細や各項目に関する留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で解説している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2012年3月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2012年3月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震・震災による直接的な広告費(額面)のへの影響は、数字の上ではほぼ終息。そして現在では震災以前からの広告業界・メディアの流れ「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っている」「デジタル系、屋外広告などの非4マス系の一部が堅調」的状況がそのまま継続する動きが見受けられる。

3月の特徴としては、全般的に大きなプラスへの動きが確認できる。これは一年前の記事で解説している通り、昨年同月が東日本大地震・震災によって大きなマイナス値を示したのが原因。それとの比較のため、リバウンドで大きくプラスに振れた感が強い。例えば2011年3月分では4マス中「新聞」が一番大きな減少ぶりを示していたため、今回はその反動で一番大きな上昇値を算出している。

参考値として電通における、「一昨年前の値」との比較を算出したのが次のグラフ。基準値を設定してその値に「前年における前年同月比」「今件の前年同月比」を順番に掛けただけだが、各項目の実情が良く分かる結果となっている。

電通2012年3月度単体売上(前々年同月比)
↑ 電通2012年3月度単体売上(前々年同月比)

今月は震災の反動もあり、両社合わせると前年同月比でプラスなのは全部で17項目。前月の6項目の3倍近くとなる。4マス中マイナスは博報堂の「雑誌」のみ。

「4マスとインターネットメディア」以外は起伏が激しいが、両社の「OOHメディア」(「Out of Homeメディア」。交通広告や屋外広告などを意味する)など、堅調な動きを示す項目も少なくない。直上のグラフ(前々年同月比)を見れば分かるように、この分野が成長株として注目に値する動きを見せているのが分かる。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値について説明しておくが、これは「個々の会社の前年同月比」であり、額面の絶対額を意味しない。例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、電通の方が上となる。

電通・博報堂HDの2012年3月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2012年3月における部門別売上高(億円、一部部門)

電力需給のひっ迫感は相変わらず、むしろ原発の発電状況と火力発電の稼働率(の高さによるトラブルリスク)を考慮すると、今夏は昨年以上の供給力不足が生じることは誰にでも容易に想像できる。被災地や震災で稼働できなかった施設の復旧も進んでいることから、需要も増加しており、電力需給の問題は震災後1年を経過した今年の方が厳しい状況にある。

そのような電力事情を見越してか自動販売機や電灯など、電力を常用する公的あるいはそれに準じる施設・機器では、加速度的に節電機能が開発、搭載される動きが見受けられる。新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ」もまた、【池袋駅のデジタルサイネージ、その後】で報告しているように地震直後のような「すべて全面オフ」という状況からは復帰しているものの、積極的な節電の「空気」は深く浸透し、以前ほどの活力は見られない。「全国規模で」電力浪費(「に見える」「叩かれやすい」)による非難リスクを自然に避ける傾向が見受けられる。

電力使用制限令が終了しても節電体制を維持する自動販売機そのような状況なら電力消費をほとんど伴わない、従来型野外広告に注目が集まるのは自然の流れ。昨今の「4マスとネット以外の堅調さ」、例えば「OOHメディア」の動きも、そのような社会的状況が影響しているものと考えられる。

今後は従来型・4マス・ネットそれぞれの長所を上手く流用・活用・併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、「慣習だから」との理由だけで効果の無い・薄い手法にとらわれることなく、コストパフォーマンスの高い、そして同時に効果が分かりやすい広告手法が求められる。本来なら自然の流れとして発するべき、発想に優れた広告に注目が集まり、採用され、トレンドとして消費者の目に留まる機会が増えてくる。その動きはすでに見え始めているといえる。


■関連記事:
【冬場の時間単位での電力需給推移をグラフ化してみる】

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