原油価格の上昇が懸念材料…2012年3月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2012/04/09 19:30

内閣府は2012年4月9日、2012年3月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月に続いて上昇し、水準値50を久々に超えた。一方先行き判断DIは50を再び割り込み、3か月ぶりに下落した。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向を示している。基調判断は「景気は、持ち直している」とし、消費の活性化の気配が見えていることや為替レートが円安に振れたことを受けて、回復基調がポジティブな方向にあることを示している(【発表ページ】)。

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復興ムードで現状はプラスへ
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2012年3月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス5.9ポイントの51.8。
 →2か月連続の上昇。「やや良くなっている」が大幅に増え、「やや悪くなっている」が大きく減少している。
 →家計では消費活性化の動きが見られたことなどから上昇。企業は円高の一服感で上昇。雇用は建設・自動車分野などの製造業で増加傾向にあることから上昇。
・先行き判断DIは先月比でマイナス0.4ポイントの49.7。
 →原油価格の上昇などによる先行き不透明感が根強く、家計や企業部門で低下。
現状判断の大幅増加は「震災からの復興ムードの高まりに伴う消費の活発化」を起因としているとある。さらに円高がやや落ち着いたのもプラスとなった。特に飲食・サービスなど娯楽周りの部門での伸びが著しい。

現状指数で複数項目が大きな上昇
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分では下げているのは皆無、プラス0.4ポイントの「雇用関連」を除けばいずれも5.0ポイント以上の大きな上昇を示しており、上記の「復興ムード」という表現を用いたくなるのも理解できる。特に「飲食関連」は10.7ポイントの増加。震災後のリバウンド時期を除けば、このような上げ幅は珍しい。またこれで、基準値の50を割り込んだ項目は「小売関係」「飲食関係」の二つのみとなったのも注目に値する。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。この数か月は地味な動きながら再上昇の気配を見せていたが、今回月では大きな背伸びを見せ、再び50を超えることとなった。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
そして低迷から再浮上へ。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態(このあたりの状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、この数か月は円安などを背景に再び伸びの気配を見せている。このまま勢いが継続すれば、2003-2004年の動きに近い形(下落、リバウンドの急上昇、失速、上昇から50超え、そして高値でしばらく安定)を踏襲することになるのだが。

景気の先行き判断DIは先月から転じて減少している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい「雇用関連」だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月が天井。今月はといえば、先月に続き上昇を見せ、それなりに余裕のある状況となった。その雇用指数がやや目立つ形で、今回月では多くの項目がマイナス、基準値の50割れ項目は「合計」を含めて7項目となった(前回は6項目)。「雇用関連」が上昇を続けているのは安心できるが、「現状」で大きく伸びた「飲食関連」が、「先行き」では一番下げているのが気になるところ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数の意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる(一時期は「各DI値が1ケタ台に突入するのでは」とすら思われたほど)。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほぼ変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてこの数か月は基準値50付近をうろうろとする動きが続いている。多分に為替レートに反応する傾向が強く、翻弄されている感は否めない。

新年度で気分が高揚
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・ギフト関連の商材が好調に推移した。卒業や進入学などで人の動きが一層活発となり、お祝いや内祝いなどが、前年同月には自粛ムードでできなかった分、今年は大いに動いている(百貨店)。
・年度の区切りということもあるが、東日本大震災後1年を経過して復興工事が始まるとともに、株価も回復しつつあることから、客から明るい声を聞くことが多くなってきている(通信会社)。
・今月は気温が低く、また週末の雨がずっと続いて春物衣料の動きが非常に悪かったため、悪くなっている(スーパー)。

■先行き
・例年にない大雪の影響で、この時期になっても雪がまだまだ残っていることで春の準備が遅れており、悪い影響が出ている。それでも復興景気への期待が大きいことから、今後については良くなる(一般小売店[土産])。
・株価の回復による高額所得者の買上需要の上昇や、絆消費に見られるような、必要なものは購入するという一般消費者の買上需要の上昇傾向が顕著になりつつあるため、やや良くなる(百貨店)。
・3月の気温が低く、衣料品の動きが悪かったが、紳士カジュアルウェアは気温の上昇とともに動きが出ている。売上は3月よりはやや上向きに推移する(百貨店)。
・燃料費の価格上昇、所得控除の減額と、家計を直撃する要素が多く、販売増加に期待したいところであるが難しい(スーパー)。
・今後、ガソリンの高騰や電気料金の値上がり、消費税の増税などが見込まれるため、消費マインドが冷え込むことになる(スーパー)。
などとなっている。「復興」のキーワードがあちこちで見受けられ、特に年度替わりを迎えることで「新たな気分で」的な気持ちの切り替えによる経済活動(への期待)がそこかしこに見受けられる。株価の上昇や為替動向もプラスに働いている。一方で燃料費の上昇や所得の減少、消費税増税などの現実的な側面を受けてのネガティブな話も多く、これが「先行き指数」を押し下げる起因となっている。




金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
円高緩和と新年度で
ほのかな期待。
2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「2011年の震災前における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を(中心では無く)天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車の利用コストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流経費のアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていた。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、それを起因として生じる間接的な不安要素(流通不安や生産力の低下、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安など)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」。

「震災による中期的な不景気が発生しうる可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化」している。震災前から不景気の状態にあったため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。

三か月ほど前から続く回復基調は、多分に「行き過ぎた円高がいくぶん戻した」ことによる、リバウンド効果によるもの。さらに今回月は新年度を迎えるにあたっての「気持ちの切り替え」的な心理的影響面によるところが大きい。そして逆に、円高の恩恵を受けていたもの、円安になると生活に悪影響を及ぼすものについては、時間差で状況が進展する(上で事例を挙げたように、ガソリン代、それに関連して輸送コストの増大、それに伴う商品小売価格の上昇、さらには企業収益の悪化)。

震災経験を元にした災害対策に関しては、多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた論議が行われている感はあるが、今般の経験を有効に活かす手立てを講じ、そして状況の鎮静化を祈りたいものだ。さらに数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題といえる。これ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求められる。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が上から下まで跳梁跋扈している昨今においてだからこそ、本当に「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していくに違いない。

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