20年あまりの世界の食料価格の推移をグラフ化してみる(2012年3月分反映版)

2012/04/06 07:00

食料市場以前、国連食糧農業機関(FAO)発表による【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けていることをお伝えした。今データは1990年以降にFAOが世界の食料価格の月ごとの変化を定期的に監視・統計した上で食料価格指数として発表している値で、昨今の各種商品市場の動向や政治情勢を判断する際に、重要な指針となりうるものである。そこで2011年3月分のデータを基に記事にしたもの以降、定期的にデータの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2012年3月分の反映版となる。

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世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)は1990年以降、月次ベースで発表されている指針。総合的な「世界食料価格指数」の他、「食肉価格指数」「乳製品価格指数」「穀物価格指数」「油脂価格指数」「砂糖価格指数」が算出(各指数それぞれ複数の商品を対象としており、合計で55品目が該当する)されている。値そのものは2002年から2004年までの3年間36か月の値の平均値を基準値の100とし、それに対する相対値の値で提供される。なおグラフ内各項目の日本語表現については、【FAOの日本事務所】のものを採用している。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年3月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方。昨年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられる。

目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、昨今はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年3月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作が伝えられたのをきっかけにする反動の結果。しかし価格上昇の原因である需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300超)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況とは言えない。

今回計測月となる2012年3月においては項目によって上げ下げまちまちで、ある意味小康状態にあると見ることも出来る。3月の総合指数215.9(暫定値)は昨年同月の232.0と比べれば1割近い値だが、昨月と比べれば0.5ポイントほどの上昇を示している。これは主に先月に続き、油脂項目での上昇を起因としている。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年3月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年3月)

直近月の前月比では先月同様に乳製品は値を下げ、一方でそれ以外は横ばいか値を上げている。乳製品は先月比だけでなく前年同月比でも減少傾向を継続しており、「乳製品…一年ほど前から現在に至るまで減少中」「食肉…ほぼ横ばい継続中」「油脂……一年前の減少傾向から転じて増加の動きを見せる」などの動向が推し量れる。グラフで把握できる動向を裏付ける形だ。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数ではトウモロコシ供給量のやや減退が懸念されたが、既存の供給量が十分だったこともあり、大きな変動要因にはならず。米相場は中国とナイジェリアの需要増加でいくぶん回復」「菜種油の生産量減退や大豆油の世界的な輸出量減退は、油脂指数を押し上げている」「オセアニア、ヨーロッパ、北アメリカで供給量の拡大が続き、乳製品は押し下げられている」などと説明している。特に大豆の価格上昇は顕著で、油脂価格の上昇は(円安も合わせ)日本国内でも問題視されている。

冒頭にもある通り、直近では食肉を除くと昨年後半からやや値の減少=値下がりが確認できていた。しかし今年に入り再び上昇に転じる動きを見せている。今件3月は油脂以外はほぼ足踏み状態だが、上昇過程にある雰囲気は損なわれていない。昨年後半の減少が豊作や生産量の増大、在庫放出だけでなく、多分に「経済後退で需要が減ったから」でもあることを考えれば、各値の上昇は需要側のお財布事情の改善をも意味し、その点では頼もしい状況といえる。しかし一方で食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させることから、素直に喜ぶわけにもいかない。



小麦食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で加速度的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な要素が揃っている。このため、価格が安くなる要素を見つけにくい。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと同じである。

昨年後半は先進諸国、そしてそれに連動する形で新興国の経済上の歩みの乱れが需要減を、そして幸いにも複数種の作物における豊作を起因とする供給増が、価格下落を導いていた。数少ない「価格が安くなりうる要素」が発動していたのだが、これが今年に入ってから鎮静化、再び大きく上昇する気配を見せている。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の高騰は、社会情勢を不安化させる要因となる。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動も、要因の一つに食料価格の上昇があると考えるのが道理。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。

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