昨年からほぼ変わらず、ユニットデビューの増加が原因か…デビュー歌手推移動向(2012年発表)

2012/04/06 12:00

日本レコード協会は2012年3月29日、「日本のレコード産業2012」を発表した(【発表リリース】)。同協会調査による2011年のレコード・音楽産業の概要を網羅した資料であり、音楽業界の動向を多方面から確認できる、貴重な資料といえる。今回はこの資料のデータの中から、以前デビュー歌手数をグラフ化してその推移を精査した記事の更新を行うことにする。

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「初音ミク」のようないわゆる『ボーカロイド』(ヤマハが開発した音声合成による歌声生成システム)なら話は別だが、音楽業界・市場にはコンテンツ(曲)を創る=歌う歌手が欠かせない。一方、歌手一人一人が永遠に生き続け、次々と新曲を出し続けるのは不可能。毎年多くの歌手予備群がさまざまな困難に立ち向かいながらプロデビューを目指し、音楽マーケットは常に新陳代謝が起きている。多くは何とかデビューを果たしてもなかなかメジャーにはなれず、いつの間にか引退したり、あるいは地方巡業などで、さらなる修行と実力の積み重ねを行うことになる(このあたりのプロセスは、昨今流行りの「アイドル事務所運営シミュレーション」系のゲームで、疑似体験している人も多いはず)。

新陳代謝の活性化は、その業界のすう勢を推し量る一つのバロメーターでもある(もちろん「粗製乱造」という相反する要素と背中合わせでもある。また、それとは別に「ベテラン」の域に達する匠的な歌手も多数いるのも事実)。それでは音楽業界のデビュー歌手数は、一体どのような推移を見せているのか。今資料では1998年以降において、日本レコード協会の会員社関係に限定された数だが、デビュー・再デビュー数が公開されている。それをグラフ化したのが次の図。

↑ デビュー歌手数推移
↑ デビュー歌手数推移

少なくともデータ範囲内ではもっとも少ない値をつけた2001年を境に大きな変化が起き、「デビュー数総計の増加」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の増加」という二つの傾向が確認できた。特に後者においては、全デビュー数の2割前後が再デビューという状態が維持されており、これが一種のトレンドであるかのようにも見えた。

ところが2009年以降は「デビュー合計数の減少」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の減少」という、ここ数年来の動きとはまったく逆の流れを見せ、特に2010年においては両傾向が著しく現れている。直近2011年は「新人歌手」の減少を「再デビュー歌手」の増加が補う形で、総デビュー歌手数は前年からほぼ横ばいで推移している。

なおこのデータでは、複数人数によるグループの場合は1人として勘定している。2009年まで上昇傾向にあったデビュー歌手数が減少したのは、単純に「新規・再デビュー双方における新人数の減少」だけでなく、「ユニットデビュー率の増加」も推定される。



音楽CD関係絡みの記事で繰り返し伝えているように、今世紀に入ってから「iPodをはじめとするデジタル音楽端末や携帯電話・スマートフォンのようなモバイル端末など配信メディアの多角化と購入実行までのハードルの低下(いわゆる「手元ですぐにお気軽購入」が可能)」「情報取得の容易さの進歩と情報そのものの増加による趣味趣向の多様分散化」で、選択購入される音楽が分散化し、ミリオンセラーが生まれ難い状況が生じている(これは特に、分散化と入手の容易化が著しいインターネット上の音楽配信で顕著)。一方で、歌手数が多ければそれだけ多くの曲が世に出回ることになる。

”歌手が増えたから曲が増え、視聴者の「好みの曲」が(より趣味趣向にマッチすべくものを選ぶ形で)分散化した”のか、”視聴者の趣味趣向が分散化したので、市場がそれにマッチすべく歌手が増加している”のか。いわば「卵が先かニワトリが先か」の話になるが、どちらが市場動向の主要因なのかは判断がつきにくい。あるいは双方が同時進行をしている可能性もある。しかし恐らくメインは後者、しかも元々存在していた細かい区分が、媒体の進化で明確化したことによるものと考えられる。

例えるなら「ラーメンとカレーライスしか無い飲食店」なら選べるのはラーメンかカレーライスしかない。常連客はどちらかを選ぶことになる。しかし「ラーメンはしょう油以外にスープとしてみそ、塩も。具にチャーシューと野菜大盛りを用意」「カレーは辛口と甘口を別途調達。サイドメニューにコーンとソーセージとコロッケを新たに選択可能」となれば、注文されるメニューは細分化され(例えばみそラーメンチャーシュー入り、コーンカレーのコロッケ乗せ)、一つひとつのメニューの注文数はかつての数より減ることになる。「ミリオンセラー」が生まれにくくなっているのも、市場そのものの縮小以外に、この細分化が要因の一つと考えてよい。

一方で【縮み、変容する市場…音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化してみる(2011年版)】などで触れているように、「曲を視聴するため」「音楽媒体として」のCDでは無く、「他の主目的を果たすため」「対象歌手を応援するため」のツールとしてシングルCDが発売され、大きな売上を果たし、市場そのものにも小さからぬ成果・影響を及ぼすという「変化」も起きている。

これらの変化が、今後業界構造にどのような影響を及ぼしていくのか。視聴側の購入・視聴スタンスの変化、視聴メディアの変容と共に、来年も今年同様、あるいはそれ以上の大きなうねりがあることだろう。その際、新人歌手数はいかなる変移を見せるのか。気になるところではある。

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