持ち直すミリオン、シングルは5本・アルバムも4本…CDやネット配信の「ミリオン”認定”」動向(2012年発表)

2012/04/04 06:50

日本レコード協会は2012年3月29日、「日本のレコード産業2012」を発表した(【発表リリース】)。同協会調査による2011年のレコード・音楽産業の概要を網羅した資料であり、音楽業界の動向を多方面から確認できる、貴重な資料といえる。今回はこの資料のデータの中から、CDやネット配信の「ミリオン”認定”」をグラフ化して精査した記事を更新する形で、「ミリオン認定」のグラフを生成することにした。

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雑誌やゲームソフト市場でも使われている言い回しとしても知られ、作家・出版元にとっては夢の一つでもある「ミリオンセラー」(100万本以上売れることを意味する)。以前の記事では1989年以降2009年までのデータをグラフ化したが、今世紀に入ってからミリオンセラーは急減し、2009年にいたってはシングル0・アルバム5・ダブルミリオン (200万枚以上)は1本という物悲しい結果となっていた。2009年までにおける(当時の定義としての)動向は次の通り。

↑ 音楽CD・ミリオンセラーの推移(1989年-)など(作品数)
↑ 音楽CD・ミリオンセラーの推移(1989年-2009年)など(作品数)(再録)

ところが昨年発表された「日本のレコード産業2011」では「ミリオンセラー」という文言は一切消え、代わりに「ミリオン認定」という言葉が用いられている。これは販売数ではなく、「発売日からの累計正味出荷枚数が100万枚を超えた場合」かつ「会員各社からの申請に基づき」行われるもの(【説明ページ】)。当然「ミリオンセラー」と比べれば作品数は増加する。実際、「2011」には2001年以降のデータが記載されているが、去年の「2010」の「ミリオンセラー」一覧と比べると、多数の年で数が増加しているのが確認できた。

そして今回の「日本のレコード産業2012」でも同じく「ミリオン認定」のデータが掲載されているが、「本年より集計方法を変更したため、昨年までの認定数と異なる場合がある」との文言が表中に確認できる。検証すると確かに同じ「ミリオン認定」に関する値ではあるが、同じ年数・項目数でも違いがいくつか見受けられる。これでは昨年の「ミリオンセラー」から「ミリオン認定」への切り替え同様、データ上の連続性が得られない。そこで今回は「2012」に掲載されている期間分(2002年-2011年分)のみを使い、「ミリオン認定推移」をグラフ化する。

↑ 音楽CD・ミリオン認定の推移など(作品数)
↑ 音楽CD・ミリオン認定の推移(2002年-2011年)など(作品数)

なお2011年も2010年に続き、残念ながらダブルミリオンを記録する曲は登場しなかった。そしてシングルのミリオンは5本・アルバムは4本。具体的には

●シングル
・桜の木になろう(AKB48)
・Everyday、カチューシャ(AKB48)
・フライングゲット(AKB48)
・風は吹いている(AKB48)
・上からマリコ(AKB48)

●アルバム
・Vザ・フェイム(レディー・ガガ)
・願いの塔(EXILE)
・ここにいたこと(AKB48)
・Beautiful World(嵐)

という次第。なお前回と比べると、計算方法の変更、あるいは累計枚数の計上により2009年時点で1作品アルバムのダブルミリオンが新たに登場している。これは『EXILE BALLAD BEST』のようだ。

アルバムは昨年同様大御所的な立ち位置の歌手・グループによる「手堅い」作品が多い。他方シングルは【縮み、変容する市場…音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化してみる(2011年版)】でも触れているが、いわゆる「選挙」との絡みをはじめとするさまざまな仕組みもあり、2011年では5タイトルものミリオンセラーを輩出することとなった。単純計算でも最低500万枚は売れており、2011年のシングルCD総売上枚数6239万9000枚に対し1割近い(実際には1割に届いているだろう)という計算になる。無論「選挙」が無くともそれなりにヒットはしたはずだが、ミリオン5タイトル獲得には大いに貢献したことは間違いない。

前回の記事でも解説しているが、2010年の「Beginner(AKB48)」もまた同様の事由によるところが大きく、2007年8月に発売された「千の風になって」(秋川雅史)以来3年強ぶりのシングルミリオンとして認定されていた。つまり「千の風になって」以降、シングルCDのミリオンセラーはAKB48によるもの(加えるならば「選挙」絡みの影響が色濃く出ている)のみということになる。

他方有料音楽配信のミリオン認定は2011年分認定分は15本(ダブル1本「桜(コブクロ)」、トリプル1本「Story(AI)」含む)。購入までの手間的なハードルが低く価格も安く、場合によっては一人が何度も購入する場合もあること、さらには「着うた」「着うたフル」の双方でランクインしている曲名も(「Story」)確認できる。金額的な問題や端末上の仕様、利用用途など、多彩な条件下で好きなタイプを選べる点では、物理的なCD・DVDのような媒体より自由度は高く、その点でも門戸は広い。

なお詳しくは別所ですでに解説しているが、配信回数そのものは減少傾向にある(モバイルの有料音楽配信売上実績・数量は前年比マイナス22%)。これも前述したように、「有料音楽配信」の中で「一般携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)」から「スマートフォン・タブレット機」へのシフトという構造変化が起きているのが要因。「スマートフォン・タブレット機」での音楽配信が該当するインターネットダウンロードは配信回数を前年比で23%ほど上乗せしており、これからの動きに期待がかかる(もっとも配信種類数が多いので特定のタイトルがミリオンになる気配は無い)。



2011年はアルバム、ミリオン共に2010年から増加し、特にシングルの増加は音楽ソフト全体の売り上げ低迷を足止めした感が強い結果となっている。もっともシングルの増加分については、純粋に「音楽業界の伸長による結果」と評して良いのか否か、判断に迷う部分があるのは否めない。

かつて宇多田ヒカルの初アルバム『First Love』は初回出荷280万枚、1999年だけで800万枚を超えるヒットを記録した。このような「超ヒットセラー」は、よほどのことが起きない限り二度と起きない(AKB48のようにさまざまな仕組みを凝らしても、ダブルミリオンには届かない状態は2011年も続いている)。エントロピーは得てして増大する方向に進むのであり、それを後押しする環境(情報伝達スピードの向上や情報検索・習得・蓄積手段の個人ベースへの拡散)が整備されつつある以上、趣味趣向もまた拡散するのが世の常であることを、つくづく思い知らされる。インターネットダウンロードタイトルが、種類が山ほどあるのと同時に、同一作品でまとまった数のセールスがなかなか出てこないのもまた、よい説明事例といえる。

音楽供給の媒体がデジタルへの移行を続け、それと共に購入までのハードルが低くなり、「”ちょっと”気になったらすぐダウンロードで買おう」という行動が可能となった昨今。皆が同じ曲に振り向き、我も彼も同じ曲を買い求めるという状況は、それこそかつてのアニメにおける「銀河の歌姫」でも登場しない限り、いにしえの出来事として語り伝えられる昔話となってしまうのだろう。

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