メディア別の有料音楽配信売上の関係をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/04/13 10:52

日本における個人向け有料音楽配信は従来型携帯電話(フィーチャーフォン)への「着うた」「着メロ」の配信事業で一気に花開いた感がある。そしてそれは携帯電話の普及形態の変化、具体的には従来型携帯からスマートフォンへのシフトに伴い、大きな変容を遂げている。今回は日本レコード協会が2016年4月8日に発表した音楽業界に関する白書「日本のレコード産業2016」を基に、「着うた」「着メロ」のような従来型携帯電話向けの音源による「モバイル部門」、そしてスマートフォン向けやパソコン向けなどが主になる「インターネット部門(パソコン・スマートフォン部門)」などから構成される、有料音楽配信の「売上」実績、そして両部門の関係の変化をグラフ化し、状況の精査を行う(【発表リリース:「日本のレコード産業2016」を発行】)。

スポンサードリンク


直近データが開示された2015年分の音楽業界は先日【わずかに復調、3000億円を回復…音楽CD・有料音楽配信の売上動向(2016年)(最新)】で記した通り、物理メディアの売上から構成される「音楽ソフト部門」はわずかに復調、従来型携帯電話向け・スマートフォン向けなどの音源配信で構成される「有料音楽配信部門」はサブスクリプション方面を中心に大きく飛躍し、結果として総売り上げは前年比でプラスを計上する形となった。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2015年)(再録)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2015年)(再録)

それではそれらの「有料音楽配信の売上」はどのような金額推移を見せているのか。その変化をグラフ化したのが次の図。さらに各項目「パソコン・スマートフォン部門」「モバイル部門」「その他部門(サブスクリプション含む)」の、「有料音楽配信」売上全体に対するシェア推移もグラフにした。

↑ 有料音楽配信売上実績推移(メディア別)(億円)(-2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績推移(メディア別)(億円)(-2015年)

↑ 有料音楽配信売上実績推移(メディア別)(有料音楽配信売上全体に対するシェア)(-2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績推移(メディア別)(有料音楽配信売上全体に対するシェア)(-2015年)

「Q1」「Q2」の「Q」とは「Quarter」、つまり「四半期」を意味する。例えば「Q1」ならば第1四半期、つまり1月から3月を表す。上記グラフから分かることを箇条書きにすると次の通りとなる。

・有料音楽配信市場では「モバイル部門」が圧倒的多数を占めて「いた」。

・全体の成長率は鈍化。そして2010年で明らかに縮小方向に転じた(前年同期比が100%を割っている)。さらに減少具合は加速化。

・全体の値は2013年頭を底とし、以降は横ばい。しかし2014年終わり以降はその他(実質的にサブスクリプション)の急激な成長で全体も底上げする形に。

・2010年前後から「モバイル減少」「パソコン・スマートフォン漸増」の傾向が見え、2011年以降は加速度的にその動きを進めている。

・2012年に入ってから、「パソコン・スマートフォン部門」の売上シェアは急上昇を続けている。この動きがそのまま進み、2013年第1四半期には「モバイル部門」「パソコン・スマートフォン部門」の売り上げ面での立ち位置が逆転した。

・2013年に入ってからは「パソコン・スマートフォン部門」の売上はほぼ横ばいで推移。代わりにその他(サブスクリプション)が額面・シェア共に大きな伸びを示しつつある。

・2014年以降は「パソコン・スマートフォン部門は横ばい」「モバイル減少継続」「その他部門(サブスクリプション)が増加」の流れ。

「パソコン・スマートフォン部門」の額面上の動きを精査すると、2005年の第2四半期から急速な伸びを見せている。これは2005年8月にアップル社のインターネット音楽配信サービス「iTunes」がスタートしたのが原因。当時はまだ「モバイル部門」と比べると額は少ないものの、その上昇ぶりは見逃せない。

iTunes Storeまた2012年では2011年に続き、「パソコン・スマートフォン部門」が大きく伸びている。この動きの最大の理由は、スマートフォンやタブレット型端末利用者の急増に伴う、iTunesStoreに代表される音楽データスタンド(ポータルサイト)の需要拡大が大きな要因(iTunes Storeの売上が今件データに反映されていることは日本レコード協会に確認済み)。

一方で「パソコン・スマートフォン部門」へ注目と資金が集まる過程で、「旧来メディア(今件では「モバイル部門」)の減少分を、新規メディア(「パソコン・スマートフォン部門」)の増加分でまかないきれない」「全体額は漸減する」との図式が確認できる。これはメディアの移行期・過渡期にはよく見られる現象。

直近2015年では前年からその気配があったものの、「パソコン・スマートフォン部門」の成長が頭打ちとなり、代わりに「その他」、実内容としては「サブスクリプション」(期間限定の使用権や、サポート受理権利による売り上げ)が大きく伸びる形となった。【有料音楽配信販売数と売上動向】でも指摘しているが、有料音楽の聴取スタイル性向が、いわゆる「定額制の音楽聴き放題サービス」(例えばAWA、Apple Music、Google Play Music、LINE MUSICなど)にシフトしつつある状況をうかがわせる。見方を変えれば、「単品特定指名買い」から「バスケット買い」に趣向が変化しつつあると見なすことができる。

他方現状ではアラカルト方式(特定楽曲の買い)の成長分をサブスクリプション方式が吸収する構図となっているが、今後さらにサブスクが成長を続けた場合、有料音楽配信業界全体の販売、そして収益、さらには音楽業界全体そのものにも大きな変化が生じる感は否めない。よほどの購入動機の生じる楽曲で無い限り、サブスクに収録されていなければ楽曲そのものに手を出さないとの選択を行う音楽ユーザーが(今後さらに)増える可能性は十分あり得るからだ。極論としては、ある程度自分の選択が可能な有線放送的な音楽視聴スタイルで満足してしまう形である。

直近となる2015年Q4では、パソコン・スマートフォンを合わせて約66億円、それに対してほとんどがサブスクのその他部門は約47億円。その差は20億円足らずでしかない。前者が横ばいから漸減の気配を見せ、後者が急成長を続ける現状では、早ければ2016年中の四半期で、両社の売上が逆転する可能性はゼロでは無い。



「有料音楽配信市場は再編期にある」。これは上にある通り、各種データが証明している。その機能のシンプルさに対する需要が一定量存在することから、携帯電話市場で従来型携帯電話(フィーチャーフォン)が無くなることはありえず、従って有料音楽配信市場でも「モバイル部門」が消滅することはない。しかし今後スマートフォンのシェアはさらに拡大し、利用台数が増え、同時に従来型携帯電話のシェアは削られていく。利用者が少なくなれば採算性の問題から新譜を提供する事業者も減り、市場はますます縮小する。

さらに高音質の音源が多数ストックできる環境は、「手持ちの音楽でお腹一杯」な状況を生み出し、新規の曲購入へのハードルを高め、新譜の品質の変化と共に、単品買いからまとめ買いへの需要変化をも生み出している。以前「2013年はモバイルからパソコン・スマートフォンへの転換点の年となるはずだ」と言及したが、同時に視聴スタイルの変化に伴う「単品から聴き放題への視聴スタイルの変化」を予見させる年としても、後に記憶される年となるに違いない。直近2015年のデータはその裏付けの確定的な動きを示したと表現できよう。


■関連記事:
【世代別の「音楽との付き合い方」をグラフ化してみる】
【一般携帯からスマホへの乗り換え希望派・継続利用派で大きく異なる、使用料金やパケット定額制の契約状況】
【携帯電話の買い替えをした世帯の割合をグラフ化してみる】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー