アメリカの新聞動向をグラフ化してみる

2012/03/30 07:20

新聞アメリカ合衆国の調査機関【Pew Research Center】は2012年3月19日に、デジタル・非デジタル双方におけるアメリカでのニュースメディアの動向、展望に関する報告書【State of the News Media 2012】を公開した。現状、さらには将来への展望を同社の調査結果だけでなく、公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」で、貴重なデータが数多く配されている。そこで先日の【タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況をグラフ化してみる】のように、気になる要項を抽出、さらにはグラフの再構築を逐次行い、現状を概要的にでも把握すると共に、今後の記事展開の資料構築も兼ねるようにしている。今回はアメリカの新聞業界の動向に関する部分を、いくつかの数字・グラフと共にかいつまんでみることにする。

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調査対象母集団の詳細などは2012年3月の記事「タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況をグラフ化してみる」などでチェックしてほしい。

アメリカの新聞業界の動向に関しては、以前から定期的に年ベース・四半期ベースで広告売上の面から確認の記事を展開している。次に示すグラフはその広告費動向と、さらに新聞そのものの販売による売上を重ねたグラフ。

↑ 新聞売上推移(米、億ドル)(2003年以降の広告費にはオンラインも含む)
↑ 新聞売上推移(米、億ドル)(2003年以降の広告費にはオンラインも含む)

「広告売上」が2011年分まであるのに対し、「販売売上」の値が2009年を最後に掲載が止まっている。元資料をたどってもその値は見つけらなかった。【アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年分まで)】でも触れているように、【アメリカの新聞発行部数などをグラフ化してみる(2009年分)】でも取り上げている「新聞の発行部数」周りの値が、2010年分以降公開されていないことになる(レポートでもそのように説明されている。推測値として「2011年は100億ドルを少々切るくらいではないか」ともある)。

グラフの動向を見る限りにおいては、販売売上をベースとし、広告費で不足分を補い利益を算出するビジネスモデルであり、その広告費分が2007年以降急落したため、経営が悪化したように見受けられる(レポートでは「販売売上だけで粗利益は何とか出せる領域だが、各種経費や税金を勘定すると赤字になる」とある)。この2007年はもちろん、直近の金融危機の始まり(いわゆる「サブプライムローンショック」)であり、同時にデジタルメディアへの本格的な移行が始まった時でもある。ちなみに【アメリカにおける日曜版の新聞の発行部数などをグラフ化してみる(2009年分)】で解説している「日曜版」は、平日版とは違って堅調に推移しているとのこと。デジタルクーポンとの競争にも健闘を見せているという。

さて新聞の売上の多分を占める広告収入だが、「アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年分まで)」で解説しているように、2007年をターニングポイントとし、大きな減退を続けている。

↑ 日刊紙における広告収入変動(米、紙媒体のみ、億ドル)
↑ 日刊紙における広告収入変動(米、紙媒体のみ、億ドル)

「クラシファイド広告」いくつか用語解説を。「ナショナル広告」とは全国区(今件ではアメリカ合衆国全土)の広告。「リテール広告」はそれに対し、小売・地域別・小口の広告。「クラシファイド広告」は小さな広告をたくさん集めて情報集合体として見せるタイプの広告。いわゆる「三行広告」というもの。この三つを合わせて紙媒体の広告となる。

インターネットに代替されやすい「クラシファイド広告」の減少ぶりが著しいこと、何とか持ちこたえそうに見えた「リテール広告」「ナショナル広告」もリーマンショックのあった2009年に大きく下落し、「クラシファイド広告」の後を追う事で広告費全体を大きく押し下げた様子が確認できる。収録されているデータは1985年以降のものだが、この数年間の動きは、まさに期間内では初めての規模の下落ぶりで、かつ紙媒体の広告費総額は1985年以前のレベルにまで戻ってしまったことになる。

インターネットの登場でもっとも大きな痛手を受けた「クラシファイド広告」だが、主要3分野「自動車」「不動産」「求人」すべての項目で2007年以降出稿額が急降下を描いている。

↑ 米新聞の主要カテゴリにおけるクラシファイド広告売上の推移(億ドル)
↑ 米新聞の主要カテゴリにおけるクラシファイド広告売上の推移(億ドル)

元々「求人」は今世紀に入ってから、「自動車」は2005年あたりから減少していたものの「不動産」がそれを補う形で上昇を続けていた。しかし2007年の「サブプライムローンショック」で主要3分野は大きく額を減らす。2011年の時点では下落もある程度落ち着きを見せているが、やはり減少の一途をたどっていることには違いない。レポートでは「さらなる景気回復が果たされれば、主要3分野の広告出稿も持ち直す可能性はある」と説明しているものの、メディアの構造そのものが大きく変化した昨今においては、過度の期待は禁物といえる。

もちろんオンライン版の展開は各社とも進めており、それによる広告収入・会員収入は増加中。しかし紙媒体の売上、特に広告費の減退は著しく、オンライン版の躍進分では穴を埋めきれないのが現状であることは、以前「アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年分まで)」で伝えた通りである。

↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)
↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)(2011年分まで)(再録)

この減少ぶりを覆すことが出来なければ、必然的にさらなる経費の削減が必要不可欠となる。前向きな経費削減なら良いが、これまでと同じような切り口では、質の低下、さらなる読者・部数の減少、広告費の低迷と、マイナススパイラルに陥る可能性は否定できまい。



レポートでは主要米新聞における直近の発行部数のデータも記されている。良い機会なので上位陣の値についてグラフをしておく。

↑ 米新聞部数上位10位(2011年9月時点)
↑ 米新聞部数上位10位(2011年9月時点)

日本の全国紙における「1000万部が絶対防衛線」「700万部が死守ライン」云々との話と比べると、意外にも少ないのが分かる。これは日本以上に地方紙の影響力が強く、「地方紙メインで全国紙はついで」的な立ち位置があるのが理由(もっとも、New York TimesやWashington Postですら「地方紙」と考えることもできる)。

これら全国紙、そして地方紙もまた、固定費の削減を続けている。従業員の解雇や事務所の移転、給与の一部カットなど、削れる費用は何でも削る勢い。それですら広告費・部数の減少には追いつかず、休刊したり買収されたりオンライン版に専念する新聞社がちらほら出始めている。

日本では新聞を取り巻く事情が異なるため、まったく同じような動きを示すとは考えにくい。とはいえ、メディア関連の動向はほぼ踏襲しており、似たような流れの中にあることは間違いあるまい。

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