米雑誌業界の動向をグラフ化してみる(デジタル編)

2012/03/27 12:10

TimeのiPad版アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年3月19日、デジタル・非デジタル双方におけるアメリカでのニュースメディアの動向と展望に関するレポート【State of the News Media 2012】を発表した。現状と将来展望をPew Research社の調査結果と公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた、いわば「米デジタルニュース白書」のようなもので、貴重なデータが数多く盛り込まれている。そこで先日から【タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況をグラフ化してみる】のように、気になる要項について抽出やグラフの再構築などを逐次行い、現状を少しでも把握すると共に、今後の記事展開の資料構築も兼ねるようにしている。今回は雑誌の現状のうち、先日の【米雑誌業界の動向をグラフ化してみる(紙媒体編)】に続き、デジタル方面の話を絡めてみることにする。

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今レポートは大きく「公的機関など他機関の調査結果」と「Pew Research Centerの調査結果」(いずれもアメリカ国内)で構成されている。後者については2012年1月12-15日・19-22日・26-29日にかけて、RDD方式で選ばれた番号による電話による口頭調査で、英語にて18歳以上に対して行われたもので、有効回答数は3016人。そのうち1809人は固定電話で、1207人は携帯電話で回答している。携帯電話回答者のうち605人は固定電話を保有していなかった。また調査結果は2011年3月時点の国勢調査結果によるウェイトバックがかけられている。

いわゆる「リセッション」前から各雑誌社は収益の多様化を積極的に推し進めていたが、景気回復(と思われる)昨今においては、その動きを加速化している。そして読者の購読性向の変化に追いつこうとばかりに、特にデジタル方面への注力が著しい。次のグラフは主要雑誌の購読者における、購読のための利用ツール区分。先の記事で例に挙げた「Time」誌では、全読者のうち15%が「デジタルのみ」で購読している。

↑ 購読者全体における利用視聴ツール別シェア(米、雑誌社別、2011年12月)
↑ 購読者全体における利用視聴ツール別シェア(米、雑誌社別、2011年12月)

例えば「リーダーズダイジェスト」のように9割近くが紙媒体のみの雑誌もあるが、3割近くがデジタルのみ、紙媒体併用も合わせると5割近くがデジタル購読者という雑誌も存在する。

デジタル読者の増加そのものは嬉しい話ではあるが、売上の面では痛しかゆし。何しろデジタル版は(コストは低いものの)価格も安く、今の規模では紙媒体の売上の数分の一、数十分の一程度でしか無い。ただしこのままデジタル上のコンテンツを上乗せしていくと、デジタル読者の売上も急増を見せ、紙媒体の減少分を補うまでに成長するという予想もある。

その予想を支えるのは、デジタルデータの蓄積性と検索による再発掘、スマートフォンやタブレット機などモバイルでの高性能機を使った読者の増加に伴う、広告収入の増加にある。

↑ 雑誌業界におけるデジタル・モバイルの売上(米、億ドル)(予想含む)
↑ 雑誌業界におけるデジタル・モバイルの売上(米、億ドル)(予想含む)

収益の増加率が少々遅れを見せる可能性はあるが、タブレット機や電子書籍リーダー、スマートフォンの急速な浸透普及ぶりを見る限りでは、少なくとも方向性に間違いは無い。今後スマートフォン・タブレット機の普及率はさらに高まり、読者も増えていく。そして【タブレット機は魔法のツール…米タブレット機利用者のニュース購読上の変化をグラフ化してみる】などにある通り、とりわけタブレット機経由のニュース読者は、紙媒体以上に「ロイヤリティの高い」読者となりうる可能性を秘めている。その上広告面では、新聞では不可能な「インタラクティブ性のある」表現力を活用できる長所がある。

当然、これらの「読者予備軍」を迎え入れるため、雑誌社側でも「モバイル対応」「タブレット対応」に急なかじ取りを続けている最中である。

↑ モバイル端末専用コンテンツを用意した雑誌社など(全体比)
↑ モバイル端末専用コンテンツを用意した雑誌社などの割合(全体比)

その他各雑誌の動向として、「ニッチな雑誌は全般的にセールスが厳しい状態にある」「大手雑誌は一部売りが復調を見せている(アメリカの新聞や雑誌は主に「定期購読(Subscriptions)」と「一部売り(Single Copies)」の2つのスタイルでの販売が行われている。それぞれ「例えば半年や一年のような一定期間の定期購読。料金前払い」「本屋などでの一部買い」を意味する)」「大手雑誌の一部は定期購読者が減る」などの状況が進展中である。

レポートでは個別事例も解説されているが、全部挙げてもキリが無いので、上記にも例示した「Time」誌をかいつまんでみる。同誌は主要雑誌の公式サイトにおいては、群を抜いたアクセス数を誇っている。

↑ 2011年における各雑誌公式サイトへの平均ユニーク来訪者(米、月次、万人)
↑ 2011年における各雑誌公式サイトへの平均ユニーク来訪者(米、月次、万人)

ここまで堅調な値を示す理由はいくつかあるが、その一つは料金プラン、もう一つは使いやすいインターフェイスを有したアプリの提供にある。前者は「All Access」なるもので、紙媒体の定期購読者はオンライン版や独自コンテンツへのアクセス、ダウンロード用アプリの使用が可能になるというもの。要は「紙媒体の雑誌を定期購読したら、オンライン版の権利も贈呈」という仕組み。デジタル版のみの利用も可能だが、むしろその方が割高になる(【TIME Launches "All Access" 】)。

そしてもう一つは使いやすいアプリケーションの提供。


↑ TIME Magazine on the iPad using WoodWing's Digital Magazine Solution。
↑ TIME Magazine on the iPad using WoodWing's Digital Magazine Solution。

紙媒体のTimeと似たようなデザインを使い親近感を維持しつつ、写真や動画を巧みに組み入れているのが分かる。



紙媒体の特性を考えれば、100%デジタルに移行することはあり得ない。むしろデジタルもまた紙媒体と同様「選択肢として与えられた媒体の一つ」という認識がされつつあり、その割り切りをした雑誌社が試行錯誤を繰り返している感はある。

媒体が違えば切り口も変える必要があるものの、最終的には「中身」の善し悪しが大きな魅力となる。紙媒体として長年の歴史と実績を歩んできた雑誌社が、一番大切なそのことを忘れていなければ、そして適切な「時代の流れを読む目」と理解力を持っていれば、昨今のメディアを巡る荒波も乗り越えて行けるに違いない。

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