米雑誌業界の動向をグラフ化してみる(紙媒体編)

2012/03/27 06:55

雑誌アメリカの調査機関【Pew Research Center】が2012年3月19日に発表したデジタル・非デジタル双方におけるアメリカでのニュースメディアの動向と展望に関するレポート【State of the News Media 2012】が、このレポートは現状と将来展望を同社の調査結果と公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」のようなもので、貴重なデータが多数盛り込まれている。そこで先日から【タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況をグラフ化してみる】に代表されるように、気になる要項を抽出し、グラフの再構築を行い、現状を少しでも把握すると共に、今後役立つであろう資料構築も兼ねるようにしている。今回は雑誌の現状、特に「紙媒体」としての雑誌に関するデータを見て行くことにする。

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調査対象母集団の詳細などは2012年3月の記事「タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況をグラフ化してみる」などで確認のこと。

まずは直近4年間における、雑誌の販売部数全体の前年比。

↑ 雑誌販売数動向(米、前年比)
↑ 雑誌販売数動向(米、前年比)

一つ補足説明をしておこう。「定期購読(Subscriptions)」と「一部売り(Single Copies)」の違いだが、そのまま「例えば半年や一年のような一定期間の定期購読。料金前払い」「本屋などでの一部買い」を意味する。日本でも雑誌の定期購読の仕組みは用意されていて、利用している人も少なくないが、アメリカの場合「定期購読で読者数=販売実態部数が確保できれば、広告費で売上はカバーできる」との思惑が強く、(新聞同様)雑誌では定期購読者に対する割引率が異様に高くなっている。

「Time」誌を例に挙げてみよう。アマゾンで確認すると1年間の定期購読の場合、通常277ドル20セントなのが、わずか30ドルで済んでしまう。9割近い割引率である。

↑ 米アマゾンでTime紙の1年間定期購読版を確認。
↑ 米アマゾンでTime紙の1年間定期購読版を確認。

当然この仕組みを利用する読者は多く、雑誌によっては「定期購読」対「一部売り」の比率が9対1を超えているものもある(雑誌業界団体MPA(The Association of Magazine Media)のデータによれば、2010年時点での定期購読部数は2億9223万7864部、一部売りは3299万9207部で、大体9対1となる(【Historical Subscriptions/Single Copy Sales】))。

↑ 米雑誌販売総数(MPA、万部)
↑ 米雑誌販売総数(MPA、万部)

↑ 米雑誌販売総数(MPA、販売スタイル別シェア)
↑ 米雑誌販売総数(MPA、販売スタイル別シェア)

両スタイルの動向を見ると、「一部売り」の前年比が毎年マイナス1割前後と大幅に減少している。「一部売り」は駅の売店や本屋などでの「一見さん」「気になったから」買いと、いわゆる「ロイヤリティ」(忠誠心・愛着心・傾注度合い)の低い購入層が多く、また読む状況も時間つぶしである場合が少なくない。当然、スマートフォンをはじめとするモバイル端末にその立ち場を奪われつつあり、売上減少は著しいものとなる。

一方「定期購読」は1%内外の減少、あるいはむしろ増加をしているのが分かる。これは元々「ロイヤリティ」が高めの層で、しかも読む場所が通勤時などに限定されない(職場や自宅買いが好例)。さらに売上が落ちる傾向があれば、出版側が値引き率を調整することで、購読者離れを引きとめることも(ある程度は)できる。

もっとも、この「値引き率調整」もあり、「雑誌業界そのものの勢いを推し量るには、一部売りの動向を見るべき」とレポートでは説明している。つまり、「雑誌業界は(少なくとも紙媒体では)集客魅力が減退している」と見なして良いだろう。

「定期購読」が著しい値引き率を出せる原動力となる「雑誌内広告」だが、2011年では多くの分野で減少傾向を見せた。

↑ 雑誌広告の種類別ページ数推移(米、2010-2011年)
↑ 雑誌広告の種類別ページ数推移(米、2010-2011年)

アメリカでは一部領域で景気回復の兆しがあり、それに伴い消費の増加、広告への投入資本も増えつつあるが、広告主の多くはむしろ増加分をデジタル分野など他の媒体へ切り替える動きを見せている。景気後退と共に始まった媒体シフトは、景気が回復しても継続されている次第。特に食品関連項目で、その傾向が著しい。

また、金額的には大きい存在の自動車産業項目では、日本の東日本大地震・震災に伴い日本企業の出稿が減り、それに伴いライバルとなる同業他社も広告を減らしたのが一因と説明している。

一方雑誌業界内の構造再構築はある程度進んでいるようで、人員の大規模な削減は峠を越した雰囲気がある。

↑ 雑誌部門における人員数推移(米、前年比)
↑ 雑誌部門における人員数推移(米、前年比)

とはいえ、景気が堅調な時期もほとんど増加傾向は見受けられることが無い(2005-2007年がかろうじてプラスだが、それ以降の2年でそのプラス分は余裕で帳消しとなっている)。中長期的な人員面での縮小傾向は継続しそうだ。無論これが単純な規模縮小だけを意味するのではなく、デジタル化などによる効率向上に伴う減少を含んでいるのも忘れてはならない。



今件は「紙媒体」としての雑誌に焦点を絞ったものだが、デジタル方面への展開では少々違った動きを見せている。それについては次の機会にまとめて解説することにしよう。


■関連記事:
【「The New Yorker」という雑誌】

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