「安保は日本の平和と安全に役立つ」9割近く(最新)

2023/03/20 02:10

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2023-0310日本の戦後における外交・政治・軍事さらには経済の面で大きな役割を果たした条約の一つに「日米安全保障条約」がある。その条約に関して内閣府が2023年3月7日付で発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査によると、89.7%の人が日本の平和と安全に役立っていると答えていることが明らかになった。役立っていないとの否定的意見を持つ人は9.1%にとどまっている。また日本の安全を守るとの観点では、現状の日米安保体制の維持が望ましいとする意見が90.9%に達しており、安保の撤回と自衛隊のみによる国防や、安保撤回に加え自衛隊も縮小すべきであるとの意見は少数にとどまる結果が出ている(【自衛隊・防衛問題に関する世論調査(令和4年11月調査)】)。

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「日米安保は日本の平和と安全に役立っている」9割近く


今調査に関する調査要項は先行記事【自衛隊への好印象度90.8%(最新)】を参照のこと。

「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、通常は「日米安全保障条約」「日米安保」と呼ばれる日米間の条約は、両国の同盟関係の根幹となる条約として知られている。また、両国間の関係50周年を記念して在日米軍司令部からオリジナルの解説漫画が刊行されたことは、以前【在日米軍司令部、日米同盟50周年を記念したオリジナル漫画第4部を公開】などでお伝えした通り(※2015年時点では掲載は終了している。解説は米大使館サイト内の【在日米軍発行のマンガ「わたしたちの同盟永続的パートナーシップ」について】でも確認できる)。

その安保条約について、「日本の」平和と安全に役立っているか否かを5段階評価で聞いたところ、「役立っている」「どちらかといえば役立っている」を合わせた肯定派は89.7%を占める結果となった。逆に否定派(「どちらかといえば役立っていない」「役立っていない」の合計)は9.1%に過ぎない。

↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役だっていると思うか(2022年)
↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役だっていると思うか(2022年)

属性別に見ると、女性の否定感、高齢層の留保感(「分からない・無回答」の値の高さ)がやや強いように見受けられる。軍事的な話には拒否反応を示しやすい属性でもあることから、この動きは当然かもしれない。男性に限れば5割近くが「役立っている」の回答を示している。この類の設問でありがちな、若年層あるいは高齢層における拒否感の強さといったものは見られない。

経年推移を見ると、湾岸戦争時に大きな動き、具体的には否定派の増加・肯定派の減少が確認できるが、それ以外はおおよそ肯定派の増加が継続している。否定派は大きな動きを見せず、ほぼ横ばいのまま推移している。

↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか
↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか

2012年の調査結果では肯定派がはじめて8割を超えた。2015年ではさらに増加を示し、その時点における過去最高の82.9%に達した。この動きは見方を変えると「分からない・無回答」、あるいは判断留保の人の割合が減ってきたことを意味する。時間の経過とともに安保の意味合いが浸透し、はっきりと判断をする、特に肯定する人が増えてきたと考えるのが妥当ではある。

直近の2022年では前回調査から否定派が減り、肯定派が大きく増えている。結果として肯定派は過去最高の89.7%を示した。公開値だけでは具体的思惑を断じることはできないが、おそらくはロシアによるウクライナへの侵略戦争と、それに連動する形で生じている日本周辺での軍事的緊張が、日米安全保障条約の役立ち感を覚えさせたのではないだろうか。

日本の安全を守るための選択肢、とは!?


日米安保が日本の平和と安全に寄与すると考えている人は漸増している。それでは安保体制以外に日本の安全を守るための方法論としての選択肢は無いのだろうか。現状維持も含めていくつかの選択肢を提示し、回答者の考えとしてはどれが適切かを選んでもらった結果が次のグラフ。

↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え(2022年)
↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え(2022年)

先の日米安保の肯定派が、ほぼ「現状維持」にスライドした形で、回答値もほぼ同じ値が出ている。次いで多いのは「安保を撤回して自衛隊のみで日本の安全を守る」との回答だが、どの属性でも1割に満たない。「安保撤回・自衛隊も縮小か廃止」(この状態でどのようにして安全を守るのかは設問では設定されていない)の回答者は数%程度しかなく、最大値を示している属性の40代でも2.1%。「分からない・無回答」との回答も1割に満たない。

属性別傾向を見ると、男女別では男女ともにほぼ同じような傾向を示している。年齢階層別ではおおよそ若年層ほど現状維持(日米安保体制の維持)への支持の値が高い。とはいえ、差異は数%ポイント程度で、事実上誤差と見ても問題はない。要は男女別・年齢階層別のような属性別の傾向はなく、一様に日米安全保障条約と自衛隊の防衛に関して、現状維持を求める声が絶対多数を占めていることになる。

今件の経年推移を見ると、戦争・軍事関連の大きな出来事があると現状維持への反発が強くなることが見て取れる。また近年につれて現状維持への意向がより強くなる動きを示しているのが確認できる。

↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え
↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え

昨今では「非武装化」的な意見は漸減し、むしろ「自衛隊のみ」の意見が増加する兆しもあったが、2009年を頂点として再び減少。ぶれの範囲内での動きと評価できる。「現状維持」が直近では9割を超えていることから、大勢の意見は「(日本の平和・安全には)日米安全保障条約と自衛隊の防衛の現状維持が一番」であると判断してまず問題はないだろう。


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