増強4割台、今の程度5割台、縮小4%足らず…自衛隊の防衛力への要望(最新)

2023/03/18 02:44

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2023-0310国際社会情勢の変化、兵器技術の向上、近隣周辺諸国の外交姿勢の変貌・圧力の増加などを受け、自衛隊に対する期待はこれまで以上の高まりを見せている。それではその期待の基盤となる防衛力そのものに対する要望は、いかなる状況にあるのだろうか。今回は内閣府が2023年3月7日付で発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査から、その実情を探ることにする(【自衛隊・防衛問題に関する世論調査(令和4年11月調査)】)。

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今調査に関する調査要項は先行記事【自衛隊への好印象度90.8%(最新)】を参照のこと。

「全般的に見て」というただし書き付きの上で、自衛隊の防衛力について回答者の意見として「増強」「縮小」「今の程度」のいずれの状態(変化)を望むかを尋ねたところ、「増強」を望む人は41.5%と4割を超える値となった。現状維持を望む「今の程度」は53.0%で最大多数の回答値。一方「縮小」回答者は3.6%にとどまっている。

↑ 自衛隊の防衛力について(2022年)
↑ 自衛隊の防衛力について(2022年)

男女別では男性の方が「増強」を望む声が強い。年齢階層別では意外にも傾向だった動きは無い。「今の程度」がやや高齢層で少なめにも見えるが、これは「分からない・無回答」の増加で圧迫されている形。

その「分からない」は女性や60代以上の人で多いが、女性は「判断にいたるだけの情報・知識を習得していない」、60代以上は戦争体験(見聞も含む)のことを考えると判断が付きにくい結果によるものと思われる。いずれにせよ、「縮小」を望む声は少数派には違いない。

これを前回調査となる2018年当時の回答状況と照らし合わせ、その変移を算出したのが次のグラフ。プラス値が大きいほどその意見が増加したことを、マイナスほど減少したことを意味する。

↑ 自衛隊の防衛力について(各回答選択肢、2018年から2022年への変移)
↑ 自衛隊の防衛力について(各回答選択肢、2018年から2022年への変移)

すべての属性で「増強」は増えているが、40代は他と比べると増え度合いが小さく、さらに唯一「縮小」がプラスの値を示している。40代は他の設問でも自衛隊に対するネガティブな印象が強い傾向を示しており(例えば自衛隊や防衛問題に対する関心度合いでは、40代は「非常にあり」の回答値が他属性と比べて際立って低く、その理由として「自分の生活に関係ないから」の値が高くなっている)、40代は自衛隊に対する反発感が強いのかもしれないとの推測ができてしまう。

男女別では男性がおおよそ「今の程度」が「増強」にシフトしたような動きを見せているが、女性は「分からない・無回答」が「増強」に転じたように見える。興味深い動きではある。女性に対する自衛隊への啓蒙活動が功を奏したのだろうか。

これを経年推移で見ると、2009年にややイレギュラーな動きがあったものの、ほぼ少しずつ「増強」意見が増加、「縮小」意見が減少し、「今の程度」がそのままの値を維持している動向が確認できる。特に2022年では「増強」の値が急増している。

↑ 自衛隊の防衛力について
↑ 自衛隊の防衛力について

2009年から2012年にかけては「増強」意見が10%ポイント以上も増加しており、これまでの「割合上では縮小派の分が増強派に移行し、現状維持派はほぼ変わらず」の傾向に変化が生じてきた可能性が見て取れる(同時に「今の程度」も減っており、こちらからも増強派にシフトした人がいるのだろう)。さらに2012年から2015年にかけても同じように「縮小派の減少」「増強派の増加」が同時に起きている。

そして2022年では「増強」が大きく増え、「今の程度」「縮小」が減っている。「増強」の増え方は調査以来はじめての大きさとなる前回調査比12.4%ポイント。いうまでもなく、ロシアによるウクライナへの侵略戦争と、それに半ば連動する形で生じている国際情勢の軍事的緊張化を受けてのものだろう。

なお原文では「防衛力」「自衛隊は増強・縮小」との表現のみ。「防衛力」(≒戦力)との表現では戦車や戦闘機、護衛艦など「直接の正面戦力」のみをイメージしがちだが、実際には、特に「防衛力」という言葉からは正面戦力だけではなく、各種支援体制、情報・補給システム、整備能力、柔軟性に富んだ「決まり」の整備、果ては各隊員の士気維持・向上のための仕組みまで含まれる。

2012年以降の「増強派」の増加は震災での活躍ぶり、そして昨今の国際情勢を受けてのものであることは容易に想像できる。しかし正面装備だけで無くそれ以外の「普段は目にとまることのない、自衛隊の『力』の一側面」も防衛力を担う大切な要素であることを認識し、全般的・包括的な観点における「防衛力」の整備を果たして欲しいものである。


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