エコカー補助金などの効果あり…2012年2月景気ウォッチャー調査は現状1.8P上昇・先行き3.0P上昇

2012/03/11 12:00

内閣府は2012年3月8日、2012年2月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは水準値50を割り込む状態に違いは無いが、先月からは上昇した。一方先行き判断DIは50を久々に超え、2か月連続して上昇した。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は「景気の現状は、依然として円高の影響が残るものの、緩やかに持ち直している」とし、為替レートがいくぶん円安に振れたことを受けて、回復基調がややポジティブな方向にあることを示している(【発表ページ】)。

スポンサードリンク


円高いくぶん緩和でほっと一息?
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2012年2月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス1.8ポイントの45.9。
 →2か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」「変わらない」が増え、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少している。
 →家計ではテレビの駆け込み需要の反動は続いたが、エコカー補助金などの効果で上昇。企業は円高の一服感で上昇。雇用は建設・福祉分野などで増加傾向にあることから上昇。
・先行き判断DIは先月比でプラス3.0ポイントの50.1。
 →先行き不透明感、円高の悪影響懸念は続くが、復興需要や円高の緩和への期待から上昇。
テレビの駆け込み需要の反動は【テレビ市場、大・縮・小】などにもある通り、むしろこれからが本番となるが、現時点でもすでに無視できない影響が出ている。今回もその影が色濃く出ているものの、同じように単価が高く購入者が多い乗用車販売のポジティブな動きがあったため、ほぼ相殺、むしろ有り余る形で値の上昇をけん引することとなった。また、円高がいくぶん緩和されたことも大きな影響を及ぼしている。

先行き指数で複数項目が基準値50超え
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分では下げているのは「飲食関連」だけで、後はすべてプラス。上げ幅は小さいながらも、ほぼ一様にポジティブな雰囲気にあることが分かる。特に雇用関係は60に届かんばかりの勢いで、好感すべき状況。一方で今回唯一下げた「飲食関連」は昨年末から減少を継続しており、気になる動きを見せている。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでおり、今回月もその傾向は継続中。ただし小幅ながら上昇したことで、今後の動きに少しながらも期待が持てる状況となった。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復したが、
間もなく失速、低迷継続。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態(このあたりの状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、震災後の急降下に対応する大きなリバウンド的上昇が終わり、再び現実を見据えた動き(一言で表現すればもみ合いを続けながらの「低迷」)に移行したと判断できる。

景気の先行き判断DIは先月に続き増加している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい雇用指数だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月が天井。今月はといえば、先月に続き上昇を見せ、いくぶん余裕のある状況となった。その雇用指数も含め、今回月では全項目でプラスとなり、複数の項目が基準値の50を超えた。やや状況判断・今後の動向を見る目に余裕が出てきた雰囲気はある。ただ、この上昇機運が多分に円高の緩和という外部要因によるところが大きいあたり、危うさも覚える。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる(一時期は「1ケタ台に突入するのでは」とすら思われたほど)。

その後はリーマンショックから立ち直ったものの、不安な状況を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほとんど変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。

そして今月は先月から続いてやや持ち直しの動きを見せ、総合値は久々に50を超えることとなった。繰り返しになるが、この上昇ぶりは多分に円高の状況緩和が主要因であり、他の問題点の解決はなされていないことに留意しておかねばならない。

一部政策などで高揚感、全般的な「もやもやとした」不安
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・エコカー減税や補助金により、特に新型ハイブリッド車の受注が増加している。来客数も増加しており、この傾向は今後も続く見込みである(乗用車販売店)。
・例年より寒波が続き、衣料品や住生活関連の防寒商材バーゲンが好調であった。また恵方巻や節分、バレンタイン、新入学準備用品等が好調で前年の売上を上回っている。客の動向として、ギフト商品を早めに買い求める傾向がある(スーパー)。
・今月も気温が低く推移しているため、春物衣料の動きの悪い状況が続いている。来客数の動きも悪く、前年の93-95%で推移している(スーパー)。
・上旬は冬型の天候が続き、積雪も多かったため、生活にも影響があり、大きな妨げとなった。さらにインフルエンザ患者が増え、子どもや年配者は外出を控えていた(百貨店)。
・前年のエコポイント需要の反動が大きく、家電の主力商品となるテレビの売上が予想以上に大きく落ち込んでいる。年末よりも更に状況が悪くなってきている(家電量販店)。
・消費は当用買いが中心のため、単価は下方で推移している。競合他社間では、価格競争が激化している。来客数の維持で単価の低下をカバーできず、売上減少は避けられない(スーパー)。

■先行き
・注文住宅への問い合わせが増え、契約の見込み客も数人出てきている。このような状況は数年ぶりで、消費税率の引上げ前に家を建てたい人が増えているため、先行きの見通しは明るい(住宅販売会社)。
・東日本大震災から一巡となるため、客単価の上昇を維持しながら、来客数が増加に転じることになれば徐々に回復することになる(百貨店)。
・気候が寒いこともあり、春物の本格稼働がこれから見込める。また、前年の東日本大震災の影響で買わなかった物や、逆に買っておいて良かった物などの思い出し購入が想定されるため、やや良くなる(百貨店)。
・間もなく東日本大震災発生から1年が経つが、マインド的な部分も含め、いまだ復旧復興が進まず、消費税増税の動きが加速しているため、消費者が守りに入るのではないかとみている(スーパー)。
などとなっている。主にエコカー減税などの政策でポジティブな動きが見受けられるが、同時に反動がその分大きくなる懸念も見受けられる(ゴムは伸びるほど、手を離した時の勢いも大きくなるのと同じ理屈。例えば消費税引き上げ懸念に対する駆け込み需要)。また、やはりテレビをはじめとした家電業界の厳しさが実感できる。コメントをざっと見た限りでは、ポジティブ3・中立2・ネガティブ4程度の感はある。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
円高緩和で淡い期待。
2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「2011年の震災前における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしはじめており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていた。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、原発周り、そしてそれらから生じる間接的な不安要素の重なり(生産不調、流通不安定、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」ような雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」。

「震災による中期的な不景気が発生しうる可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化」している。震災前から不景気の状態にあったため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、急激に過ぎる円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。各種データから「余震は完全に過ぎ去った」と断じることが難しい状況も、人々の不安感を駆り立て、「保守化」を後押ししている。

先月、そして今月発表分のデータによる回復基調は、多分に「行き過ぎた円高がいくぶん戻した」ことによる、リバウンド効果によるもの。そして逆に、円高の恩恵を受けていたもの、円安になると生活に悪影響を及ぼすものについては、時間差で状況が進展する(上で事例を挙げたように、ガソリン代、それに関連して輸送コストの増大、それに伴う商品小売価格の上昇、さらには企業収益の悪化)。

一時期と比べれば多少は落ち着いたものの、いまだに徴候が見受けられる余震の動向を見極め、鎮静化を祈ると共に、数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題。そしてこれ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求められる。その道筋が正しければ、明日に希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していくに違いない。

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー