震災年との比較で一部の業種で大きな上昇…新聞やテレビなどへの業種別広告費の「5年間」での推移(2012年発表)

2012/03/06 06:50

先日の記事【電通資料を基に過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる(2011年分反映版)】内で言及した通り、電通(4324)は2012年2月23日に日本の広告費に関わる調査報告書を発表した。それによると、2011年の日本の総広告費は(電通推定で)前年比2.3%減となる5兆7096億円であることが分かった。景気低迷で企業も予算縮小を余儀なくされ、円高、さらには東日本大地震・震災をはじめとした各種災害の影響を受け、広告の出稿額も減少。結果として広告費全体額も減ってしまった。今回はこの報告書から、いわゆる4大既存メディア「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」における、業種別広告費の5年前と直近(2011年)との比較をグラフ化してみることにした。各業種における、主要媒体に対する中期ベースでのアプローチの変化をかいま見れるだろう(【発表リリース、PDF】)。

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2011年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体では(2010年分ではかろうじてプラスだった)テレビも含め、すべてがマイナス。

↑ 2011年媒体別広告費前年比
↑ 2011年媒体別広告費前年比(再録)

それでは5年単位の変化はどのようなものだろうか。それが今回の記事の主旨。

区切りを「5年」にしたのにはいくつか理由がある。一つは「きりが良いから」。一つは「2004年と2005年の間で広告費の区分などの変更がなされているため、厳密にはその間前後のデータに継続性は無いため」。5年同様に区切りのよい10年で考えると、その継続性云々が問題となってしまう。そして最後に「インターネットの浸透がちょうど2005年前後から本格化したため」。

報告書には4大既存メディア「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」に対する21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2006年と2011年における値を抽出してグラフ化したのが次の図。増加した業種は2つ。

↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2006年と2011年)(億円)
↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2006年と2011年)(億円)

5年の期間には今なお続いている「金融危機」の期間も含まれている。その影響が「金融・保険」や「自動車・関連品」に大きく出ているのがひと目で分かる。元々大きな額だっただけに、減少比率が大きいと余計に目立つ。

他方、「家庭用品」は元々額が小さかったものの5年前と比べればプラス、「官公庁・団体」は大きくプラスとなっている。「家庭用品」には「石油・ガス機器、寝具、インテリア、家具、仏具、台所用品、殺虫・防虫剤、芳香・消臭剤など」が該当すると説明されているが、元々視聴者に身近な、そして消費者が新商品に敏感な業界なだけに、景気動向に左右して出稿を減らすと命取りになりかねないという広告主側の思惑があるのだろう。

一方「官公庁・団体」だが以前説明した通り、2011年における統一地方選挙の影響、そして東日本大地震・震災後のテレビCM自粛とACジャパンへの広告の切り替えによる増加が大きな影響をもたらしている。ACジャパンのサイト自身でも

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4大マスメディアを他に、街頭ビジョンや屋内ビジョン、駅や電車内などの交通広告、インターネット広告などを展開しています。CM、新聞広告、ポスターなどの枠は、会員媒体社からの無償提供です。

放映時間、掲出スペースなどは、各媒体社の自主的な判断に委ねられていますが、大震災後、テレビ・ラジオを中心に一般の広告は姿を消し、メディアにはACジャパンの広告が溢れました。そのため広告費の総額は正規料金換算で約2800億円という巨大なものになりました。

と言及されている通り、先行して広告枠を購入していた企業が震災による自粛でテレビCMの放映をキャンセル。キャンセル料が発生し、空いた時間帯にはACジャパンの広告が入る事態となった。よって、間接的な代金支払いは別企業だが、「有料対価による、官公庁・団体区分のテレビCMが放映」され、「官公庁・団体」の料金が跳ね上がる結果となる。しかしながら同項目の金額は、前年比では「跳ね上がる」レベルなものの、5年前と比べると「それなりに増えた」程度でしか無い(他項目と比べれば、やはり「跳ね上がる」となるが)。

直上のグラフは額面の推移が把握できるものだが、減少比率を算出してグラフ化すると、個別の業種毎の「4大既存メディアに対する広告費」の減らし具合が見えてくる。

↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2006年から2011年への変移)
↑ 業種別広告費(既存4大メディア全体、2006年から2011年への変移)

やはり「金融・保険」や「自動車・関連品」が極めて大きい。そしてそれ以外にも「エネルギー・素材・機械」の下げが目立つ。これは2011年における特異事項「東日本大地震・震災」に伴い、電力関連企業が広告出稿を自粛・縮小したことによるものと考えて間違いない。2010年分の「5年前」と比べれば2項目のプラスがあっただけマシではあるものの、震災起因を考えれば実質的には「家庭用品」1項目のみであり、状況の厳しさを再認識できる。それと共に各業界そのものの盛衰にもよるところがあるが、わずか5年間の動きであることを考えると、あまりにもの額面の変化に驚く人も多いはずだ。くだんの量販店のキャッチコピーではないが「三割、四割引は当たり前」の世界となっている。



やや蛇足ではあるが、ある手法による影響度を算出しておく。単純に「5年間の総減少額」のうち、どの位の割合を各業種の減少分で構成したのかを計算したもの。例えば「自動車・関連品」は10.9%と出ているので、5年間の総減少分9652億円のうち10.9%・1052億円ほどが減ったことになる。

↑ 業種別・2006年-2011年の広告費変移が与えた影響度(既存4大メディア全体、5年間の変移額のうち占める割合)
↑ 業種別・2006年-2011年の広告費変移が与えた影響度(既存4大メディア全体、5年間の変移額のうち占める割合)

「金融・保険」と「自動車・関連品」だけで減少額の3割近くを占めていることが分かる。また、例えば個別の減少率としてては51.5%のマイナスと大きい「エネルギー・素材・機械」は、額面の上ではメディアに対する影響は小さめなのが確認できよう。

さらに「家庭用品」「官公庁・団体」は5年比がプラスだったため、「減少額に占める割合」としてはマイナス値が出ている、つまり差額のマイナス化を邪魔していることになる。構造的には他の項目の広告費を多分に吸い取った形ではあるが、2011年の異様さがあらためて理解できるというものだ。

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