一部で震災の影響が顕著に…テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4マスにおける業種別広告費推移(2012年発表)

2012/03/05 06:50

先日の記事【電通資料を基に過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる(2011年分反映版)】で言及したように、電通(4324)は2012年2月23日に、日本の広告費を包括的にまとめた調査報告書を発表した。その資料によると、2011年の日本の総広告費は前年比2.3%減の5兆7096億円であることが分かった(電通推定)。景気低迷による企業の予算縮小や円高、東日本大地震・震災をはじめとした各種災害の影響を受け、企業の広告の出稿も減少している。今報告書では広告業界に関する多彩なデータも掲載されており、業界の動向を知るのにはよい資料といえる。そこで今回は同資料を用い、去年の同趣旨の記事を更新する形で、いわゆる4大既存メディア(4マス)こと「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」における、業種別広告費の前年比をグラフ化してみることにした。各業種における、主要媒体に対するアプローチの変化をかいま見れるだろう(【発表リリース、PDF】)。

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2011年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体はすべて前年比マイナス。

↑ 2011年媒体別広告費前年比
↑ 2011年媒体別広告費前年比(再録)

さて今資料では広告出稿元を20の業種に区分し、「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」それぞれに対する出稿広告費、各メディアへの出稿額に対する構成比、前年比の一覧が掲載されている。これをグラフ化したのが次の図。まずは「新聞」。

↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(新聞)
↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(新聞)

「ファッション・アクセサリー」は2010年同様に大きく伸びている。しかしそれ以外は多くがマイナス。特に「官公庁・団体」の下げが目立つ。また、2010年と比べるとマイナスの項目が増えているのが分かる。

続いて「雑誌」。

↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(雑誌)
↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(雑誌)

「雑誌」全体値の大幅な下げが一部業種によるものではなく、ほとんど一様であることが分かる。特に「エネルギー・素材・機械」(多分に電力会社回りだろう)は30%近い下げを見せており、「雑誌」が大きな打撃を受けたことが分かる。昨年30%下げた「官公庁・団体」はやや落ち着いたものの、それでも10%以上引き続き下落している。

「ラジオ」は業種による動き方の差異が激しい。

↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(ラジオ)
↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(ラジオ)

「前年比下げ幅4割超えが2項目」という異常事態を迎えた2010年と比べればいくぶん大人しくなっているものの、「2割3割引は当たり前」的な状況に違いは無い。また「エネルギー・素材・機械」部門の下げ幅が大きく、「雑誌」同様に電力会社・業界周りの広告事情が「単項目としては」大きな影響を与えたのが見て取れる。

一方、「精密機器・事務用品」は2010年のマイナス4割超に続き、2011年も2割強の下げ。震災の直接起因や自粛の動き、消費性向の変化を超え、広告媒体の視点から同業界が「ラジオ」をどのように評価しているのか、その変貌が見て取れる。

最後に「テレビ」。

↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(テレビ)
↑ 4大既存メディアにおける業種別広告費(2011年、前年比)(テレビ)

他のメディアと異なり、プラスにせよマイナスにせよ、振れ幅が大きい。特に「官公庁・団体」の値は飛びぬけてしまい、グラフもやや変型的な形をとらざるを得なくなった。これは統一地方選挙に伴う各団体などの選挙CMが、大きな影響を与えたものと思われる(さらに震災後にはACジャパンのテレビCMが大量に放映され、元資料には「『官公庁・団体』(ACジャパンなどが増加)」ともあり、多分に影響を与えているのが分かる)。

「テレビ」もまた、電力会社関連の「エネルギー・素材・機械部門」、そして「精密機器・事務用品」「家電・AV機器」の下げが大きい。これらの業界の苦戦ぶりが見て取れる。



今回のグラフは、「各媒体に対する」「個々の業種別の」「広告費の前年比」。同じ「10%のマイナス」でも、その業種の広告費そのものの額面が違えば、各媒体に与える金額的影響は異なるものとなる。例えば「年間1000億円の業種」が「10%増えた」のならその額は100億円のプラスとなるが、「年間10億円の業種」が同じように「10%増えた」としても、額の上での増加分は1億円にしかならない。個々の業種の変移は重要だが、各媒体全体に対する金額の変移も合わせて推し量るべき案件ではある。

そこで参考値として、「前年比の比率」に「2011年における金額上の構成比」を乗じ、年間変移における影響度を算出したのが次のグラフ。値が大きいほど、その業種の広告費に対して大きな影響を与えたことになる。

↑ 業種別・2010年-2011年の広告費変移が与えた影響度(前年比×2011年の構成比)
↑ 業種別・2010年-2011年の広告費変移が与えた影響度(前年比×2011年の構成比)

↑ 業種別・2010年-2011年の広告費変移が与えた影響度(前年比×2011年の構成比)(除く官公庁・団体)
↑ 業種別・2010年-2011年の広告費変移が与えた影響度(前年比×2011年の構成比)(除く官公庁・団体)

前述したように統一地方選挙、さらには震災を受けて一部企業CMの自粛・ACジャパンへの切り替えなどの流れもあり、「官公庁・団体」のテレビCM出稿額が2010年比で大幅に増えている。金額も小さくなく(テレビCM全体比で4.8%、819.5億円)、結果としてダイナミックな影響をテレビに与えたことになる。この影響が、「テレビ」全体の下げ幅を最小限にとどめた原因の一つと見てよい。

それを除けば、「新聞」は「交通・レジャー」、雑誌は「化粧品・トイレタリー」、「ラジオ」は「自動車・関連品」「交通・レジャー」が大きなダメージとなったのが分かる。昨年と大きな差異は無く、各業界の各媒体に対する姿勢の変化が単年度では無く、中期的な流れであるのが推測できる。

また、項目単位では大きな変化を見せた「エネルギー・素材・機械部門」だが、媒体全体としては大した影響を与えていない(ラジオはやや「痛い」が)。広告出稿側と配信側の力関係、配信側の報道姿勢の挙動も「それとなく」すけて見えてきそうな気がしてならない。

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