総広告費ネットと衛星のみプラス、前年比マイナス2.3%・5兆7096億円…日本の広告市場動向(2012年発表)

2012/03/02 06:50

先に【電通資料を基に過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる(2011年分反映版)】でお伝えしたように、[電通(4324)]は2012年2月23日、日本の広告費に関する調査報告書を発表した。それによると、電通推定による2011年の日本の総広告費は前年比2.3%減の5兆7096億円であることが明らかにされた。景気低迷による企業の予算縮小や円高、東日本大地震・震災をはじめとした各種災害の影響を受けて広告の出稿も減少。結果として広告費全体額も減少している。今報告書では広告業界に関する多種多様なレポート・データもあわせて掲載されており、業界の動向を知るのにはよい資料といえる。今回は主要項目のいくつかをグラフ化し、状況の把握容易化を試みることにした(【発表リリース、PDF】)。

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まずは2011年の広告費における前年比。2010年から2011年の間に、各媒体で広告費に関してどのような動きがあったかがよく分かる。

↑ 2011年媒体別広告費前年比
↑ 2011年媒体別広告費前年比

全体的には去年同様に衛星メディアとインターネット周りの盛況ぶりがあらためて認識できるグラフとなっている。2010年はまだ「テレビ」がわずかながらプラスだったものの、2011年はマイナスに転じており、「衛星メディア」「インターネット」の2項目”のみ”伸びを示したことが分かる。一方、4マス中「雑誌」の下げ方が厳しいのは2010年同様だが、下げ幅はやや縮小。その分「新聞」の下げ幅がキツくなっている。

「プロモーションメディア」では「電話帳」「屋外」「展示・映像他」の下げ幅が大きい。「電話帳」は昨年からの動きの継続だが、「屋外」「展示・映像他」は特に震災の影響を大きく受けている可能性が高い(自粛、節電によるデジタルサイネージの休止など)。

続いて前年比ではなく、絶対金額のグラフ。

↑ 2011年媒体別広告費(億円)
↑ 2011年媒体別広告費(億円)

既存4大媒体(4マス)、中でも「テレビ」が未だに大きな広告費を占めているのがひと目で分かる。また、金額の面で「インターネット広告費」全体が「新聞」を抜き、「テレビ」に次ぐ金額を見せている。これは先日【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(月次・-2011年12月版)】にて「経済産業省の特定サービス産業動態統計調査」の結果動向で確認した動きと同じであり、メディアの変化の一つと捕えられる。

経年変化を眺めてみよう
直近における個々の項目の金額はこれらのグラフで分かるが、広告費全体に占める比率や金額そのものの推移がどのようなものかも気になる。そこで過去のデータや今回発表された数字を基に、経年推移をグラフ化する。

今回公開されている範囲は2002年から2011年まで。さらに2004年と2005年の間で広告費の区分などの変更が行われているため、厳密にはその間前後のデータに継続性は無い。参照程度ということで認識してほしい。また、2000年以前のものもサルベージをすればデータを反映させることは可能だが、2001年より前のものはインターネット広告などの項目が無いに等しいため、今回は省略する。

まずは単純に金額を積み上げたグラフ。今世紀に入ってからは、2007年が天井で、あとは景気後退と共に広告費そのものも減退していることが分かる(2011年はそれに加えて震災起因とする減少)。そして特に「新聞」や「テレビ」が大きくその額を減らしているのも確認できよう。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2011年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2011年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

「プロモーションメディア広告費」(黄緑色)が2004-2005年の間に大きく上昇しているのは、区分の変更で色々と追加がされているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長したわけではない。また、すでに複数の記事で触れているが、「新聞」や「雑誌」など紙媒体の落ち込みが著しいことが分かる。これは【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(総世帯版)(2011年分まで反映)】などで解説しているように、購入層そのものの減少による媒体力の低下「も」大きな要因(「も」としたのは、部数減少だけではなく、全体的な質の低下も要因のため)。また、一部には媒体側がインターネットへの傾注度合いを増した面も影響しているものと思われる。

既存4大メディア(4マス)、すなわち「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」の「広告費」という観点からの影響力の変化が分かるのが次の図。広告費全体に占める、それぞれのメディアの構成比を100分率でグラフ化したもの。やはり2004-2005年は継続性は無いのでご注意を。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2011年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2011年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

既存4大メディアを黒枠・青系統色で装飾したが、その部分が2004-2005年以降じりじりと、しかも確実に減少していくのが手に取るように分かる。それ以前も小さな減退傾向は見られたが、この区分変更以降、はっきりと確認できる。

2004年-2005年に大きな変化があることから、「区分変更が要因では?」とも思えてしまうが、代わりに増加している項目が2011年でプラスを見せた数少ない項目「インターネット」「衛星メディア関係」なので、納得もいく。また、4大既存メディアでは2010年は唯一金額面で前年比プラス、2011年もわずかな減少で済んだ「テレビ」も、今回は全体に占めるシェアを0.6ポイント増加させている。

要は繰り返しになるが「インターネットと衛星メディアが既存4大メディアの、特に新聞と雑誌の広告費シェアを奪い取っている」のが分かる。ただしここ数年に限れば「プロモーションメディア広告」も奪い取られる側に回っているのが見て取れる。



数少ない出世候補といえる「インターネット」「衛星メディア関係」だが、成長の伸びしろは大きいものの、その市場規模はまだ小さい(双方足してもシェアは広告費全体の2割にも満たない)。「新聞」や「雑誌」「テレビ」などの既存メディアの広告費(の減少分)を吸収しきれるほどでなく、結果として総広告費は減少傾向にある(上の積み上げグラフを見れば一目瞭然)。とはいえ、元々広告を出稿する企業側のお財布事情が厳しいのだから、それは当然の話。そして逆にお財布事情が厳しいからこそ、同じ効用を狙えるならコストの低い、そして出来れば効果測定がしやすい媒体に目が移るのも納得はいく。

広告費躍進イメージもちろん旧来の広告メディアが消失することなどありえない。しかし、時代や技術の流れに沿う形で進化をしなければ、相対的・絶対的なコストパフォーマンスは落ち、魅力も減退してしまう。2005年あたりから顕著化した、広告費の構造変化は今後も継続していくに違いない。

そして広告周りの記事で何度となく触れているが、2011年3月の東日本大地震とそれに伴う各種震災は、日本人の行動様式・性質を大きく変容させた可能性が高い。少なくとも現在に至るもなお続いている電力需給のひっ迫性は、デジタルサイネージ周りの広告展開の進化態様を大きく変えてしまっている。同時に露呈される面が多くなった、各媒体の「実態」への広告主側の対応とあわせ、広告業界にどのような進路変化が見られるのか、気になるところだ。

なお余談だが、例えば「雑誌」の区分範囲は「全国月刊誌、週刊誌、専門誌の広告料および雑誌広告制作費」とある。そしてインターネット広告費は「インターネットサイト上の広告掲載費(モバイル広告を含む)および広告制作費(バナー広告等の制作費および商品サービス・キャンペーン関連ホームページの制作費)」と定義されている。同じ出版社への広告出稿の際に、紙媒体としての雑誌から、同雑誌のオンライン上に移行した場合、雑誌社に入る広告費は同じでも、今件統計のデータ上では「雑誌……マイナス」「インターネット……プラス」という動きを見せることになる。本文中でも触れているが、「雑誌」の急下降ぶりには幾分なりともこの動きがあることを付け加えておく。

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