28.9%は「希望する種類・内容の仕事がない」…完全失業者の「仕事につけない理由」とは?(2011年版)

2012/03/05 12:00

総務省統計局は2012年2月20日付で同省公式サイト上にて、2011年時点での労働力調査(詳細集計)の速報結果を発表した(【労働力調査(詳細集計) 平成23年平均(速報)結果:発表ページ】)。2011年、さらには2011年を含む過去数年間の、日本の労働環境や雇用問題関連のデータが豊富に盛り込まれており、精査に値する内容となっている。今回はそのデータから、過去の記事に最新値を反映させる形で、「完全失業者が仕事に就けない理由」を眺めることにする。

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「完全失業率」とは【辞めさせられたけど再就職をあきらめる人が増えている!? 統計局の「完全失業率の急上昇」をざっと読み通す】でも説明しているように、「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出される。総務省統計局の場合は「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」の全条件に該当する人が「完全失業者」に認定される。

また2011年東日本大地震・震災の影響で、岩手県・宮城県・福島県での調査実施が一時的に困難となったことを受け、 2011年平均は当該3県を除いた結果が公表されている。今回図表作成で用いる値では、「基本的に」2010年(前年比で不整合が生じないようにすねため)・2011年の値は当該3県を除いた値を用いている。

さて、2011年における完全失業者数は284万人との結果が出ている。そのうちある程度理由が明確化しているものについてまとめた結果が次のグラフ。もっとも多い理由は「希望する種類・内容の仕事がない」とするもので、人数では81万人の人が該当している。

↑ 仕事につけない理由別完全失業者(2011年、万人)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 仕事につけない理由別完全失業者(2011年、万人)(2010-2011年は被災三県を除く)

2011年のグラフ上の人数の合計が284万人に達しないのは、「その他の事由」があるため。また、経年人数変移グラフは略するが、「賃金・給与が希望と合わない」という回答者数は2002年以降ほぼ横ばいを続けており(2010-2011年は被災三県が除かれていることに注意)、その一方で「希望する種類・内容の仕事がない」「求人の年齢と自分の年齢が合わない」「条件にこだわらないが仕事がない」の回答人数が2008年から2009年にかけて急増している。いわゆる「リーマンショック」で労働条件が急激に悪化し、就業がかなわない人が増えたことがうかがえる。

2010-2011年の動きでは被災三県分が除かれていることを考慮する必要があるものの、上位陣で漸減の動きが見えている。2009年の状況悪化の影響はまだ残るものの、就職希望者が妥協ラインを引き下げた・雇用側が条件を緩和した動きがすけて見える。

2010年の「大きなぶれ」これを年齢階層別にみると、世代別の失業事情を見ることができる。なお今件資料では2010年分については「被災三県を除いて算出した値」は未記載だった。そこでe-Statで該当する元値を抽出し、当方で再計算を試みたものの、取得できる公開値が「万人単位」までで、算出結果に大きなぶれが生じることが判明。やむなく2010年の値は被災三県も含むものとしている。

↑ 完全失業者の仕事につけない理由別割合(2010年)
↑ 完全失業者の仕事につけない理由別割合(2010年)

↑ 完全失業者の仕事につけない理由別割合(2011年)(被災三県を除く)
↑ 完全失業者の仕事につけない理由別割合(2011年)(被災三県を除く)

・若年層ほど「技術・技能」不足が多い
・家族を抱えているためか、中堅層は(35-44歳は特に)「勤務時間・休日」などの条件がクリアできないことが多い
・どの年齢階層も「条件にこだわらないが仕事がない」割合は一定率存在する
・若年層ほど「希望する種類・内容の仕事がない」(A)
・高齢層ほど「求人の年齢と自分の年齢が合わない」(B)
・2010年から2011年の変移としては※、
 1)15-24歳は具体的要件での理由が増え、「その他」が減っている
 2)25-34歳では逆に具体的要件の一部が減り、「その他」が増えている
3)高齢層で「求人の年齢と自分の年齢が合わない」のように、求職側の努力では太刀打ちできない理由による項目が増加している

※上記説明の通り2010年・2011年は厳密には母体が異なるため、「仮の」比較となる

(A)と(B)の2項目は2010年・2011年とも顕著な傾向として現れている。まず(A)だが、【職種別有効求人倍率をグラフ化してみる(2010年10月更新版)】でも解説した「仕事における需要と供給のミスマッチ」が多分に作用していると見るべき。さらに「技術・技能」が不足しているからこそ、希望職種・内容が限定されてしまうパターンも少なからずあると考えると、単純な「ミスマッチ」以外に「経験・技能不足による選択肢の少なさ」が就職活動の上でわざわいしている場合も容易に想定できる(例えば普通免許を持たないために、「要免許」の職につけない、選択すらできないという事例)。

一方(B)は「年齢のミスマッチ、ハードル」が問題。本人はやる気(、さらには技術や経験)があるが、年齢という越えられない壁が立ちはだかり、職につくことができない状態。一般職における再就職は30代までというのが通例で、40代が含まれる「35-44歳」の層から「求人の年齢と自分の年齢が合わない」比率が高まるのも合点がいく(ただし厚生労働省側では【募集・採用における年齢制限の禁止について】にもある通り、事業主に対して労働者の募集及び採用について年齢制限の原則禁止を義務付けている)。

さらに2010年から2011年の変移を見ると、「全体的に求人そのものが減少しているが、若年層(15-24歳)がとりわけひっ迫化している(とにかく仕事そのものが無い)」「中堅層-高齢層の”勤務時間・休日などが希望と合わない”(介護や育児などの家庭内事情の問題か)、”自分の技術や技能が求人要件に満たない”(求人案件そのものの減少・競争激化に伴う、残存求人条件の高度化)」などの傾向が確認できる。いずれも昨今の雇用情勢を反映しているといえよう。



2011年の値においては、失業率そのものは改善しているものの、若年層の技術不足、高齢層の年齢不適用、中堅層の時間調整のハードルの高さなど、それぞれの世代が抱える「就職への問題」が顕著化している感はある。特に高齢層で「年齢不一致」の回答率が5割に近づいている動きを見ると、高齢者の失業問題が深刻化している様がうかがえる。

個々の世代における問題点が明確化されれば、その「問題点」の解決を目指していくことで、雇用問題を改善できる可能性は高い。条件のミスマッチは情報の集約と容易な検索ができる環境の整備、経験・技能不足はそれらを習得させることで(本来これは学生時代にある程度成していなければならない)、状況を「ある程度」改善させられるに違いない。もちろんマッチした先の労働需要が十分という必要はあるのだが。

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