転職で「収入増」の人は1.4ポイント増。しかし……(2011年版)

2012/03/12 06:45

先に【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2011年版)】(2011年3月7日に掲載した)で紹介したが、総務省は2012年2月20日、2011年の労働力調査(詳細集計)の速報結果を公表した(【労働力調査(詳細集計) 平成23年平均(速報)結果:発表ページ】)。これは2011年自身、さらにはは2011年を含む過去数年間における、日本の労働環境や雇用問題に関わる各種データが記載されている。今回はその資料から、転職に関する過去の記事を更新する形で、「転職と収入の増減の関係」についてチェックを入れてみることにする。数年前には「転職で収入アップ!」との言葉が転職情報誌に踊っていたが、昨今の景気低迷下ではどのように状況が変化したかが分かるはずだ。

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元となるデータは「労働力調査(詳細集計) 平成23年平均(速報)結果」の「平成23年平均(速報)結果の概要、統計表」から。なお昨年2011年に発生した東日本大地震・震災の影響で、岩手県・宮城県・福島県における調査実施が一時的に困難となったことから、 2011年1-3月期平均結果から同年7月-9月平均結果までは、当該3県を除く全国の結果を公表せざるを得なくなった。そのため、2011年平均(全体)についても当該3県を除いた結果が公表されている。今回図表作成などで用いる値では、前年比を算出する際は同じく当該3県を除いた値を用い(2010年分でも用意されている)、不整合が無いようにしている。

それによると2011年の1年間で離職を経験した人は569万人(前年比25万人減)。その内訳は次の通り。

■離職経験者……569万人
 ・現在は就職者(つまり転職した人)……273万人(48.0%)(前年比1万人増)
 ・現在は完全失業者……120万人(21.1%)(前年比19万人減)
 ・現在は非労働力人口……176万人(30.9%)(前年比7万人減)

「非労働人口」には諸般の事情(リタイヤや長期休業、肉親の看病・介護、子育てなど)で再就職を望んでいない人や、雇用情勢を見て就職活動を中断している人などが含まれている。

さて、転職をした人273万人の、転職後の収入は転職前と比べてどのように変化しているだろうか。

↑ 転職者の収入の増減別割合の推移(男性)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 転職者の収入の増減別割合の推移(男性)(2010-2011年は被災三県を除く)

↑ 転職者の収入の増減別割合の推移(女性)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 転職者の収入の増減別割合の推移(女性)(2010-2011年は被災三県を除く)

まず第一に、2008年から2009年にかけて大幅に状況が悪化しているのがひと目で分かる。それと共に男性よりも女性の方が「収入増」の割合が大きいのも確認できる。これはさまざまな理由があるが、双方とも最大の要因は「転職前が正社員で、転職後は非正社員として就職したから」。「リストラされ、似たような条件での正社員雇用を望んだが果たせず、止むなく非正社員として就労している」「元々非正社員率が高い女性は、転職後が非正社員でも『収入減少』となる割合は、正社員率が高い(そして非正社員への転職で収入減少となる)男性よりも低い」というのが典型的なパターンと思われる。また2009年には「リーマンショック」が起きており、これが転職時における給与相場の減退をもたらした一因と考えて間違いは無い。

一方で男女とも2010年から2011年にかけては多少ながらも収入は増加し、状況は改善している。もちろん、「転職できた人に限れば」だが。

↑ 正規・非正規間を移動した転職者の推移(万人、2008-2011年)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 正規・非正規間を移動した転職者の推移(万人、2008-2011年)(2010-2011年は被災三県を除く)

↑ 転職者移動状況(2011年、万人)(被災三県を除く)
↑ 転職者移動状況(2011年、万人)(被災三県を除く)

特殊事例を除けば、非正社員よりも正社員の方が賃金は高額になる。当然、正社員から非正社員に転職すれば、転職前より収入が下がる可能性は高い。直上のグラフを見ると”「正社員から非正社員」から「非正社員から正社員」を引いた数”が男性は8万人、女性は2万人となり、「男女とも転職の結果、非正社員が増加した」「女性よりも男性の方が非正社員が増加している」のが分かる。従って「正社員から非正社員になり、手取りが減った人が多い」「男性よりも女性の方が手取り増加者が多い」状況になる次第。

直近の2011年について、性別・年齢階層別で見ると、また違った事情が見えてくる。

↑ 転職者の収入の増減別割合の推移(2011年、性別・年齢階層別)(被災三県を除く)
↑ 転職者の収入の増減別割合の推移(2011年、性別・年齢階層別)(被災三県を除く)

女性は54歳まで転職による収入の増減傾向に大きな違いは無い。15-24歳で少々増えた人が多い程度。しかし男性になると、「高年齢になるほど転職で収入が減る人」が増加しているのが確認できる(一部イレギュラーもあるが)。手取りだけで判断するのは難しいものの、可能性としては「(正規→非正規も含め)前職と同じような好条件下での仕事が見つからず、やむなく収入減での転職を受け入れた」とのパターンが、歳を経るにつれて増えた結果と考えるのが妥当。

また、55歳以上で急激に「減った」人が増えているのは、早期定年・定年後に嘱託として再就職したり、第二の人生として気軽に仕事を楽しむライフスタイルを取るために転職した人によるもの。あるいは55歳以上の転職は(高役職や高度な技術、資格を身につけていたり、高額でヘッドハンティングされない限り)、賃金上昇を望む云々以前の問題で、再就職できるだけでも御の字なのかもしれない。



冒頭でも触れたように、かつては「転職で収入アップ」というキャッチコピーが躍る時期もあった。しかし今では転職による収入アップ・維持はおろか、再就職することすら困難な人も少なくない。

2011年は2010年と比べ、転職出来た人の賃金状況は「やや」改善されたようにも見えるが、非労働力人口の減り方が少ない事、そして全体に占める比率も増加している状況を見ると、「再就職できた人はそれなりの『収入増となる要素』を持っている可能性が高い」「再就職を果たせなかった人は就職活動を諦めて非労働力人口にカウントされる」パターンによる動きによるところが大きいと考えられる。

好条件の確約によるヘッドハンティングならともかく、自分自身の都合による軽い気持ちで転職を考えても、良い目を見るのは(少なくとも収入の面では)難しいのが現状。「転職でスキルアップ、だけどサラリーダウン」ではモチベーションもダウンしてしまう。仮に転職を頭に思い浮かべても、ここは「堪(こら)えてみる」というのも一つの手であると認識した方が良かろう。

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