派遣以外は増加中…非正規社員の現状をグラフ化してみる(2011年版)

2012/02/27 07:05

受難時代先に【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2011年版)】などでも取り上げたように、総務省統計局は2012年2月20日、2011年における労働力調査(詳細集計)の速報結果を発表した(【労働力調査(詳細集計) 平成23年平均(速報)結果:発表ページ】)。そこには2011年、あるいは2011年を含む過去数年間における、日本の労働環境や雇用問題における各種データが盛り込まれている。今回はその資料から、「非正規雇用関連」の資料をいくつかグラフ化・グラフの再構築化をし、状況をかいま見ることにする。

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元となるデータは「労働力調査(詳細集計) 平成23年平均(速報)結果」の「平成23年平均(速報)結果の概要、統計表」から。ちなみに「完全失業率」とは【辞めさせられたけど再就職をあきらめる人が増えている!? 統計局の「完全失業率の急上昇」をざっと読み通す】でも説明している通りに、「完全失業者÷労働力人口×100(%)」。統計局の場合には「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」のすべてに当てはまる人が「完全失業者」に認定される。

なお就業状態の区分を図式化すると次の通りとなる。

↑ 就業状態区分
↑ 就業状態区分

また御承知の通り昨年2011年に発生した東日本大地震・震災の影響で、岩手県・宮城県・福島県における調査実施が一時的に困難となったことを受け、 2011年1-3月期平均結果から同年7月-9月平均結果までは、当該3県を除く全国の結果を公表することとなった。そのため、2011年平均についても当該3県を除いた結果が公表されている。今回図表作成で用いる値では、基本的に2010年・2011年の値は当該3県を除いた値を用い、直近2011年における「前年比」で不整合が無いようにしている。

まず最初に取り上げるのは、雇用形態別にみた非正規の職員・従業員(非正規社員、非正社員)の推移。【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】でも触れているが、いわゆる「派遣叩き」の流れで多業種の企業は派遣社員を敬遠するようになった。元々景気低迷期ということもあるが、2011年において非正規社員のうち「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」は増加しているのに対し、「労働者派遣事業所の派遣社員」は去年から変わらずの値を示している。2010年時点で92万人だったのが2011年でも変わらず92万人。他の業態の増加と比べると、境遇・雇用需給が異なることが分かる。

↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)(2010-2011年は被災三県を除く)

↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)(2010-2011年は被災三県を除く)

派遣社員の減少は単純比較ができる2003年以降では、「派遣叩き」の影響が出始めた2009年、そして2010年と続き、ようやく2011年にはプラスマイナスゼロの領域まで回復した。この期間「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」が増えていることを考えると、単に労働力が過剰で非正規社員が減らされたのでは無く、先の記事<「「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向」での企業の意向が、言葉だけでなく実践されていることが分かる。

派遣社員は現状維持、パートやアルバイトなどは増え、正規社員は減っている。結果として、雇用者全体における正規・非正規社員の比率は多少ながらも非正規正社員側が増えることとなった。2011年時点では雇用者全体の64.8%が正社員(・正職員)、残りが非正規社員という計算になる。

↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)(2010-2011年は被災三県を除く)

このグラフ「だけ」を見ると単純に非正規社員の割合が増加しているように見える。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正社員数は横ばいか微減」「非正規社員は増大」という構図、言い換えれば「景気拡大期は非正規社員の増加で企業の業務拡大に対応していった」のが分かる。

現在は景気後退・低迷期に入り、労働力過剰の影響が派遣社員、そして正社員にまで及んでいることになる。一方で同じ非正規社員でも、パートやアルバイトなどは増加の一途をたどっている。非常に皮肉な話だが「派遣社員制度を叩いて正規雇用を求める動き」と、「不景気で正規社員が減る時期」「派遣叩きや不景気で派遣市場が縮小する時期」、さらに「パートやアルバイトの増加時期」はほぼ一致する。繰り返しになるが、<「「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向」がそのまま体現化したことの裏付けといえる。

失業者数の推移
会社の業務が手持無沙汰となり、労働力の需要が減り、特に社会的圧力とも合わせ派遣社員に影響が出ていることはこれまでのグラフでお分かりの通り。ちなみに正社員・従業員は2010年の3210万人から2011年には3185万人となり、都合25万人減少している(2010-2011年共に被災三県を除く)。増減という点では非正規社員より減少数は大きい。

ところが前職の雇用形態別に見た、離職した完全失業者数の推移を確認すると、むしろ前年より元正社員の失業者数は減少しているのが確認できる。

↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)(2010-2011年は被災三県を除く)
↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)(2010-2011年は被災三県を除く)

昨年2010年と比べれば多少なりとも改善している。しかし今データはあくまでも「過去1年間に前職を離職した者のうち」という前提があることに注意しなければならない。つまり「失業期間が1年超えの人」の人は今グラフには反映されていないことに留意する必要がある。

これも考慮すべく調べると、該当する人は2010年の114万人から2011年には109万人に減少している。また、「過去1年間に離職して現在も完全失業者のまま」の人は前年比で19万人減っている。「正規社員減少」「パート・アルバイト・契約社員増加」の状況と合わせ見るに、離職した人・していた人が、非正規雇用の形態で雇われる事例が増えているものと思われる。ただし「非労働力人口」のうち「就業非希望者」、つまり状況をかんがみて求職活動をしていない人は35万人増加しており、雇用状況を見て就職活動そのものをあきらめた人が増えている一面もある。

また、元派遣社員に対する風当たりの強さが分かるのが次のグラフ。各雇用形態別に「その時点で雇用されている人数」に対する、「前職でその雇用形態に居た人の完全失業者数の割合」を算出したものだが、元派遣社員の完全失業者数が(昨年から改善されたとはいえ)いまだに1割近くにあり、他の職種と比べると異常なほど高い値を示している。簡単に例えれば、10人派遣社員が雇われている場合、それとは別に1人近くが「元派遣社員の完全失業者」(失職してから1年未満)として存在するという計算になる。

↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移
↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移

無論、パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(派遣社員は上記グラフにあるように92万人、パート・アルバイトは1181万人、正社員は3185万人)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じていることは否定できない。しかしそれを差し引いてもなお、解雇された派遣社員の割合がいかに多かったかが改めて認識できよう。



繰り返しになるが、完全失業者数の絶対数は元正社員の立場にある人が一番多い。しかし同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率では、元派遣社員の値が一番大きくなる。同じ雇用形態で再び就職を望む人が多いことを考えれば、パイそのものが縮小を継続している元派遣社員が辛い感は否めない。

現在のような景気低迷期において、労働力の調整弁的な立場にある派遣社員の人たちが多く失職するのは仕方がない、とする意見もある。しかし仮にその意見が正しいとしても、すでに正社員にまで大ナタが振られている現状では、調整弁云々の役割はすでに果たされたと見てよい。一方で、扇情的な一部世論(を形成する人たち)は派遣業種そのものを撲滅しようとしている、「派遣」の存在そのものを雇用問題の象徴としてとらえているように見える。

幸いにも派遣周りの状態は以前と比べて鎮静化しつつある。しかしこれも正社員の立ち位置すら怪しくなった雇用情勢ゆえの結果。諸手を上げて喜べる状況ではないのが残念だ。

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